牧原出のレビュー一覧

  • 田中耕太郎―闘う司法の確立者、世界法の探究者

    Posted by ブクログ

    大学学部長、議員、最高裁長官、国際司法裁判所判事という個々の説明は専門的ではないが人物像としては面白く読める。したがって、サラリーマンに支持されてベストセラーになり、好評であるという理由も納得できる。東大生にとっては前半の大学生活が参考になるかもしれない。
     安孫子が当時は別荘で武者小路実篤やバーナードリーチの窯、志賀直哉の別荘とともに田中の自宅があったという話は初めて知ったので、そのうちに我孫子が観光スポットとなるかもしれない。

    0
    2023年01月19日
  • 田中耕太郎―闘う司法の確立者、世界法の探究者

    Posted by ブクログ

    約1000円で、これほどの知的厚みがある作品を読めるという、新書というメディアのありがたさに感謝する。牧原氏の名前は、オーラル・ヒストリー(野中広務)等で接したことがあったかもしれない。商学の教授、大学運営、議員、文相、最高裁長官、国際裁判所判事など驚くほどの広い領域に足跡を残す田中耕太郎という人物その人の凄まじいまでの能力もそうだが、その評伝をまとめることにも、どれだけの調査が必要かと考えると呆然とするほかない。
    田中耕太郎は、商法分野の研究者を振り出しとし、東大法学部の経営、戦後の教育基本法への貢献、最高裁の安定確立、国際的な貢献まで精力的に成果を上げたようだ。特に、昭和初期、威勢を誇る右

    0
    2022年11月27日
  • 田中耕太郎―闘う司法の確立者、世界法の探究者

    Posted by ブクログ

    正直こんな人がいたのかと驚くと共に自分の無知を恥じた。中身は含蓄があってよかった。
    田中は一高帝大で教養主義のもと法学に専心。商法の民放に対する独立性を確立する商法学者だった田中は、法の技術的側面(⇔倫理)から、普遍的自然法は技術的な法律を端緒として統一された世界法として各国内法に浸潤していくという見方を取った。

    その後は東大法学部の重鎮として滝川事件から平賀粛学まで「大学の自治」維持に関わり、戦後は天皇周辺の同心会から天皇制の擁護、また文相や参院議員としてGHQと協力して教育改革(教職員適格審査/教育勅語廃止/教育権独立)を実行した。この中で憲法に自然法的観念を見出した。

    最高裁長官とし

    0
    2022年11月20日
  • 崩れる政治を立て直す 21世紀の日本行政改革論

    Posted by ブクログ

    制度の作動に焦点を当て、行政と政治の関係でこれまでの制度改革の成否を論じる。これは大学改革にも通じる点が多々あり、組織改革と制度の作動を現場を巻き込んで丁寧に行うことの重要性を改めて認識できた。

    0
    2019年05月31日
  • 崩れる政治を立て直す 21世紀の日本行政改革論

    Posted by ブクログ

    この書籍のすばらしさは「作動学」という観点から「改革学」の先を見据えていることです。改革する中身は注目を浴びがちですが、それがどう作動するかを予測して仕組みに織り込むという観点は改革をなじませる時間的猶予がなくなってきた現在では重要性を増しているという説得的な議論でした。政治史研究から来るすごみを感じさせてくれるすばらしい書籍です。

    役人(官僚制)に「過度な」統制を掛けることが全ての失敗の原因だとよくわかります(「必要な」統制は当然掛けるべき)。全ての政治家は読むことをオススメします。あと行政改革が機能したり機能しなくなるのか不思議な方にも。

    0
    2018年09月24日
  • 崩れる政治を立て直す 21世紀の日本行政改革論

    Posted by ブクログ

    2023年の「骨太方針」の中に、「三位一体の労働市場改革」が織り込まれた。それは、①リスキリングの促進②職務給の導入③円滑な労働移動の促進からなるものである。人的資本の開発は、いずれにしても悪いことはないのであるが、その他の「職務給の導入」「円滑な労働移動の促進」というのは、あまり意味の分からないものであったし、そもそも、それを行なえば、労働市場にとって、ひいては日本という国にとってどういう良いことが起こるかの説明が不十分(というか、ほとんどない)であること、これらは「賃上げ」のために行われるとの説明がなされているが、「職務給の導入」「円滑な労働移動の促進」がどのように賃上げに結びつくのかのメ

    0
    2025年02月16日
  • きしむ政治と科学 コロナ禍、尾身茂氏との対話

    Posted by ブクログ

     専門家の位置づけ・責任が曖昧だというが、そもそも政治家の「政治責任」が曖昧なのだから、納得のいくような政治と科学の設計は難しいのではないかと感じた。

    0
    2024年02月25日
  • きしむ政治と科学 コロナ禍、尾身茂氏との対話

    Posted by ブクログ

    わずか3年前の話なのに、もうすっかり記憶があいまいになっているが、当時マスコミで報道されていた内容と、尾身氏がここで語っている内容がずいぶん違う気がする。こうして後から振り返ってみれば日本政府も分科会もうまくハンドリングできたように見える。
    ただいくつか重要な点への反省が欠けている。日本は島国なのだから初動で重要なのは入境管理なのだが、目先のインバウンド需要に目がくらんで春節で大量の中国人を受け入れ、あっという間に日本中にウイルスを広めてしまった。4月の入国制限は判断が遅すぎる。また元来日本の防疫は明治期からの結核対策がベースとなっている。結核のように濃厚接触でしか感染が広がらないのならクラス

    0
    2024年02月05日
  • 「安倍一強」の謎

    Posted by ブクログ

    一度野党に転落した苦い経験を経て、自民党の政権中枢は政権交代の可能性を十分意識して、将来の交代を可能な限り阻もうとしている。
    官邸主導を支える人的基盤は菅官房長官その人であるが、制度的基盤は内閣官房・内閣府である。

    0
    2016年08月22日
  • 権力移行 何が政治を安定させるのか

    Posted by ブクログ

    55年以後の自民党長期政権において、自民党が積み重ねてきた政権継続の知恵を明らかにし、他国の政権交代の制度を提示した上で、政権交代を円滑に進めるための方策を提言する本。

    政権交代を円滑に進めるために、他国で導入されている制度が挙げられており、そこは一読に値する。なぜ民主党政権が失敗したのか、今後政権交代を円滑に進めるためにはどうすればよいかについて、有益なヒントが与えられている。

    0
    2014年01月07日
  • 権力移行 何が政治を安定させるのか

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    本書は、国民が政権を選択する「政権交代」の時代において、円滑かつ安定的な日本政治の条件等を戦後の55年体制の歴史から検証するもの。起承転結のストーリーが明確でないため要点を掴みにくく、セオリー化のためか若干大括りに過ぎるのと、中立的視点からは構造改革(特に竹中)に傾いているきらいが感じられました。

    【自民党長期政権時代】

    <佐藤栄作>
    ・複数官房長官制(官房長官・副長官に加え、宮澤経企庁長官:経済政策・外交)
    ・内閣官僚の組織化(厚生省から官房副長官&首席内閣参事官:環境庁設置の環境行政)

    <小泉純一郎>
    ・官邸主導(官房型官僚>原局型官僚、竹中経済財政大臣)
    ・官僚制内ネットワークの駆

    0
    2013年10月17日
  • 田中耕太郎―闘う司法の確立者、世界法の探究者

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    最高裁長官を歴代で最も長く務めるなど、戦後日本の司法制度の発展に尽力した田中氏だが、若い頃には「政治や経済の世界は全然興味がなく」、ヨーロッパ留学の道中で六法全書を海中に投げ捨てたというのには驚いた。学者や宗教活動家など様々な人々と接しながら、大きな志を持つようになり、それを遂げていく過程に興味を惹かれる。

    0
    2025年06月10日
  • 「安倍一強」の謎

    Posted by ブクログ

    2012年12月から2020年9月まで7年8カ月程度続いた第二次安倍政権期間中、自民党は選挙に勝ち続け、安倍元首相は、自民党内で総裁選を勝ち続けた。また、政権のガバナンス、特に官僚との関係で官邸の人事権を強化する等、他党に対して、自民党内で、また官僚に対して、安倍内閣は、「一強」の状態にあったと言えよう。本書は、その理由を、経緯を含めた探ったものである。
    私は、やはり、選挙に強かったことが一番の原因だと考える。選挙に勝ち続けることにより、自民党内で強い求心力を持ち続けることが出来たこと、また、国会内で多数を握ることにより、自らの政策実行を進めることが出来たこと(ただし、「アベノミクス」を見て分

    0
    2025年03月03日
  • 田中耕太郎―闘う司法の確立者、世界法の探究者

    Posted by ブクログ

     本書は田中耕太郎の評伝であるが、田中耕太郎という名前を聞くと、商法学者としてよりも「反動」と批判された最高裁長官時代をどうしても連想してしまっていたが、今回本書を読んで、田中の東大教授、占領下での文部大臣、参議院議員の歴任、そして最高裁判所長官や国際司法裁判所裁判官といった経歴を歩んだこと、すなわち憲法上の三権、立法、行政、司法のすべてに属した戦後まれな経歴の人物であることをまずもって知った。

     本書において著者は、田中が「制度の独立」ということに重きを置き、それを守るためには闘うことを厭わなかったと言い、田中の生涯とその具体的活動を追っていく。
     このような新書という読みやすい形でなけれ

    0
    2024年12月22日
  • 「安倍一強」の謎

    Posted by ブクログ

    本書は、日本政治は少しずつ成熟に向かっているという現状認識の下、第2次安倍政権発足以降の「安倍一強」とも呼ばれる状況がなぜ生じているのかについて、一度与党であった自民党が野党になり、再び与党になったというプロセスを経て、安倍自民党政権が政権交代のサイクルを先導している点を理由として指摘する。また、民進党には、政権交代のサイクルの先を行く自民党から学ぶべきは学んで、強い野党となり、政権交代のサイクルをより円滑にし、日本政治の基盤を強めるようエールを送っている。
    本書は、各章ごとに、「問い」を設定し、それに答えていくという構成になっている。ただ、正直、最初に設定された問いの答えがすっきりわかるよう

    0
    2017年06月10日
  • 権力移行 何が政治を安定させるのか

    Posted by ブクログ

    放送大学などでも活躍されている牧原氏の政権交代についてのまとめと読んでみたが、少々期待外れだった。

    基本的には政治史の流れの中で、なぜ政権交代が必要になったのか、表向きと実際の統治がどのような形だったのか、自民党一党独裁の時代、政治改革としての省庁再編の時代、小泉時代や官僚との関係、公務員制度改革が進まない理由、などの視点から考察している。

    文章表現が読みにくいことと、章ごとに内容が独立しており、関連性を見いだしにくいために読みにくい面があった。これは、自分の基礎的な知識の少なさ、自分の期待度が高すぎたかのかもしれないと感じた

    0
    2014年05月04日