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「VTS―Visual Thinking Strategies」とは、フィリップ・ヤノウィン氏(元ニューヨーク近代美術館教育部部長)が開発した、アートを通じて鑑賞者(学習者)の「観察力」「批判的思考力」「コミュニケーション力」を育成する教育カリキュラム。対話を介してグループで作品をみる鑑賞方法を提唱するVTSは、算数、社会、理科など他教科へも応用できるメソッドであるところが特長です。日本の学校教育においても、対話型美術鑑賞教育が重要視され、その具体的な方法を説く教科書がもとめられています。わが国で対話型鑑賞を実践している京都造形芸術大学アート・コミュニケーション研究センターが翻訳した『Visual Thinking strategies』(ハーバード大学出版局刊行)は、まさに日本で唯一の鑑賞教育のためのテキストです。
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Posted by ブクログ
美術に関心があり、なおかつ教育にかかわる仕事をしています。
教科は高校国語なので本書とまったく同じ条件ではないのですが詩と美術作品(写真)使って、本書の問いかけや、傾聴態度の記述を参考に生徒達に出来事を推論させてみました。
成果は大いにありました。
日頃の授業では文章が苦手だった子も根拠を明確にした文章記述を促すことができたのです。とくに美術作品についてどこからそう考えたのか、をかなり詳細に論述している子が多く見られました。1度きりでしたが、根拠を明確にと口を酸っぱくしていわずとも、観察し、関連付ける力を自然と呼び起こせるように思いました。
詩に関しては写真よりもハードルが高いように思いましたが、こちらが答えを示さなくても、かなり核心に近づいている子もいました。
三つの基本的な問いかけをうまく応用することで成果を得られるのではと思います。
Posted by ブクログ
これも対話型鑑賞に関するもので、より教育手法やノウハウを解説しているもの。教育を行う上で大切にされていることがいくつも書かれている。「静かに観ること」「あなたが言っていることを別の言葉で言い換えられるほどよく理解しているというメッセージ」「根拠ある観察と推論」「女の子の絵なのに女の子と答える」「子どもたちに関心ある社会的トピックを扱うようにする」などなど。「21世紀の文盲とは、読み書きができないことではなく、学ぶこと、学んだことを捨てること、そして学び直すことができない人をいう」というアルビン・トフラーの言葉を引用しているが、教える方も学び直しが必要と思う。
Posted by ブクログ
方法論としては非常に期待できるのだけど,この書籍はほぼケース報告で成り立つものだから,エビデンスの質としてはこれだけでは貧弱だと思います(「どこからそう思う?」と根拠を尋ねる方法であるはずなのに…」
)。もちろん,実感は大事なのだけど,その意味では,教育方法の研究によくあるような「うまくいきました」という実施者の主観報告にとどまってしまいます。対照実験に相当するものは共同研究者である心理学者任せにしている感じがしますが,系統的な研究が行われているのか定かではありません。1群のプレポスト研究に留まっている可能性が高いかもしれません。
ライティングに効果ありとする例も,よく書けた子や,プレからポストへの伸びがはっきりと分かる子から選択的に掲載しているだけのようにも思います。計量的な分析が必要でしょう。心理療法同様,その方法に効果があるのなら,より客観的に示すことが重要なはず。何らかのスキル向上を示すグラフすら掲載されておらず,科学的エビデンスを蓄積していかなければならないと思います。ホントは何の効果もない方法だったら,他にやるべきことに時間を割いた方がいい子どもが被害者になりますから。
「長年培われてきた現行の指導法の影響力の強さと,アートおよび対話の教育的効果への理解不足のために,学習目標の達成にVTSが役立つということを,にわかには信じがたいのだ。(pp.169-170)」と書かれているが,VTSの効果に対する教師の理解不足ではなく,理解のためのエビデンスを出すことが肝要でしょう。それを棚に上げて,教師向けのVTSトレーニングプログラムを提供するというのは,エビデンスベースを嫌う (一部の) 臨床心理士と同じではないでしょうか。堂々と科学的検討をすればいいのに。下に取り上げた一節は,論理性というか,科学的な誠実さに欠けると思います。
「アートの効用に対する懐疑心を払拭するには,教師自身がアートとの関係を深めることが重要だ。(p.171)」とか「VTSを理解するためには,集団による探求の面白さを理解する必要がある。(p.171」とか確かに大事なところだし,VTSが美術鑑賞のあり方を示す点で重要ではあるけど,根本は「子どもに美術鑑賞以外の学力への波及効果があるか」に対するエビデンスを提示できるか,効果があると信じる「信仰・宗教・神話」とは異なることをいかに示すかだと思います。さもないと,ファシリテータのコーチングやトレーニングもただ信者を増やしているに過ぎないということになりかねないです。「まず10回のディスカッションに参加したら5級」「その後,15回のディスカッションに参加したら4級」…のようなVTS商法にならない方が断然いい!
「過去数十年間の統計は,教育の成果が地域や人種や収入などの人口統計学的な属性によって異なるという結果を示し続けている。(p.190)」と統計情報を議論に用いるということは,エビデンスによる説得力は理解しているのでしょう。ご都合主義と批判されないようにするには,VTSの効果を示すエビデンスによって説得力を増すことが必要だと思います。今のままでは,ケーススタディの羅列にありがちな「多量の文章で,言葉巧みに」の状態に過ぎません。
なお,参照しろと掲げられているURLは現在はほとんど見られません。こういうことはままあるので,仕方のないことだと思います。
ちなみに,アートの語源は「生きる術」なのだそう。リベラル・アーツは「自由に生きる術」ということになるのかな。
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美術鑑賞が筆記力を向上させるという考え方は一般的でないし,アートが学力を向上させるといわれている一方で,実際に授業に導入している学校は少ない。これは,学力向上への影響を示す根拠が十分ではないことも一因だろう。同様に,読解,筆記,特定の概念理解といった具体的なスキルの育成にも効果があることを示した実践例も多くない。かといって,アートを通じた学習効果が否定されているわけではない。裏づけとなる研究データが少なく,美術鑑賞と学力向上,そして鑑賞を繰り返すことで学習効果が期待できるという両者の因果関係を立証する情報があまりないというだけである。(p.168)
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