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Posted by ブクログ
表紙には見るからに美味しそうなドーナツ。真ん中で穴が「I’m here」と言っている。そこにいるのは分かったが、「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」とは何の事やらさっぱりわからない。
この命題に果敢に挑戦した12人の識者は何れも大阪大学の教員で各分野の研究者だ。
工学研究科の准教授は「切る」「削る」とは何か、から始め、旋盤、フライス盤、レーザーまで持ちだしての加工を考える。加工精度を上げるために樹脂を侵食させて固定化する?もうドーナツは食べられなくなっている。
数学の准教授は「数学において論理的思考は自由である」と豪語し、「ドーナツの穴は、そこに指を入れていることで穴の存在を認識できる」と定義した上で、「そのドーナツを4次元に移動させて食べてしまえば3次元では穴を認識したままいつの間にかドーナツが食べられているということになる」と説く。「低次元トポロジー」というそうだが、屁理屈にしか聞こえない。
文学研究科の准教授はプラトンやハイデガーまで持ちだして「美学の見方に立てばドーナツそのものとは、食べられないものであり、穴も無くならない」などと驚かしてから、「現実のドーナツについて考えると、ドーナツは家である」と結論付けた。もう何も言うまい。
歴史学の教授は「どのような見方をするかによって、その物の認識の仕方、理解の仕方が変わってくる」と言い、ドーナツ問題に対しても「歴史家がとるミクロ的アプローチとマクロ的アプローチで考える」とする。これは期待できそうだと読み進めると、ミクロ的アプローチの例として「日本健康保険法と医師会の関係」について分析し、マクロ的アプローチの例として「冷戦期の国際政治」について論じる。なるほど、医師会と国際政治については大変よく分かったが、ドーナツはどうしたのだろう?
法律家の教授は、先ずドーナツに関する法令と法解釈、更に判例を調べて「ドーナツ枕」訴訟の原告、被告の主張から東京地裁と知財高裁の判決までを解説する。実に正統的なアプローチだ。しかし、ドーナツの穴問題になると、様々な屁理屈と詭弁を弄して丸め込もうとした挙句に、ヴェニスの商人を引き合いに出し、屁理屈、詭弁が賞賛される場合もあると開き直る。
結局本書を読み終わった時には「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」が分かるどころか脳内大混乱状態に陥るわけだが、この様なくだらない問題を各分野の研究者が大真面目に論じている所が面白く、様々な分野の研究者の考え方を垣間見る事ができる所が大変興味深い。
Posted by ブクログ
「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」という難問に、阪大の教授陣は各分野を生かしてどのように立ち向かうのか。
「超ドーナツが超々ドーナツの本性を現し(数学)」とか、「私たち一人一人は小さな存在である。ドーナツのかなたに夕陽が沈み、ドーナツの地平から朝陽が昇ってくる(精神医学)」とか、ドーナツでとてつもなく壮大な話になっている感じが面白かった(しかもそれでその学問の深淵が分かった気なするのも面白い)。
質問に答えていないようなものもあるし、ドーナツという単語は出ているけどドーナツ関係ないじゃんという話もあるけど、各分野の要約みたいな、そして身近に感じられるのが楽しい。
コラムや、各章の題名の付け方も良かった。
Posted by ブクログ
「ドーナツの穴」を巡って、大阪大学の教員が自身の専門領域からそれぞれ執筆している。そのまま「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」という問題に答えているとは言えないものもあるし、ちょっと展開が強引だなと思うものも多かった。だが、普段あまり目を向けない分野を知るきっかけになったのは面白く、執筆者の目論見通りといった感じ。
↓の章が面白かった。
・第0章 ドーナツの穴談義のインターネット生態学的考察
このドーナツ問題は、もともとネット上のネタだったが、それがいつ頃どのように流行ったのかの調査。そこから生態系としてのインターネット、クチコミの伝播過程の解釈によるマーケティングの効果測定といったものに展開していく。身近に利用するインターネットをいういう風に捉えられるのかと興味を持った。
・第1章 ドーナツを削る - 工学としての切削の限界
切る、削るというと普段何気なく使う言葉だが、それを工学的に見ると思ったより奥が深い。加工方法の選択・加工する対象の材質の検討など、ひたすら愚直にドーナツを穴だけ残して削る方法を考えている。
・第2章 ドーナツとは家である - 美学の視点から「ドーナツの穴」を覗く試み
美学という学問は初めて触れた。プラトンの『寝椅子の比喩』を取り上げ、ドーナツには
1.本性界にある、神が作った唯一のドーナツ
2.ドーナツ作りの職人の作った、普通のドーナツ
3.画家が絵に描いたドーナツ
の3つがあり、真のドーナツはそもそも食べることができないとしている。トンチの効いた展開だが、面白かった。
・第8章 法律家は黒を白と言いくるめる?
西川産業とテンピュール・ジャパンの「ドーナツクッション」という商標を巡る訴訟を引き合いに出して展開。法学というのも今まで縁がなかったので、新鮮に感じた。
Posted by ブクログ
先輩にいただいた本。
阪大学生が企画、作成、販売まで行った本。
タイトル通り「ドーナツの穴だけ残して食べる」ことに関して、経済学、法学、哲学、工学など様々な分野の教員が、その学問的アプローチで検証している。
学生による補足、語句説明があり、理解を助けてはいるが、全ての理解は難しい。だが、当著に『学問とは関心をもったものごとに対して、各個人が研究、検証、探求していくもの』の思いを強く感じた。全てを理解する必要はなく、関心をもったことを1つ発見してほしい。また、それについて深く学び進めてほしい。ということだろう。
『学問』のあるべき姿について、書いている。各章の内容は深すぎることはないので、大学生に『学問とは』と気付かせるきっかけになれば良いと思った著書。
誰彼に薦めるのではなく、学生に対しては薦められる著書だと感じた。自分としては3だが、その面を考慮し、4とした。
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