天皇製民主主義の根本問題

天皇製民主主義の根本問題

3,960円 (税込)

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天皇制度は日本の社会を理解するための鍵である。
本書は、憲法を守ると明言する天皇家を主軸にこの国を総合的に考察する社会科学書である。


皇居の宮殿で執りおこなわれている祭祀に詳しい学者が,現代家族としての皇族の問題に詳しいわけではない。
天皇裕仁の戦争責任の問題や日米 安全保障条約・日米地位協定に詳しい学者が,
宮中祭祀の歴史に詳しいことは,ほとんどない。
憲法第9条の問題に詳しい学者が,皇室・宮廷史として の古代史に詳しい場合はない,といってよい。

明治維新から『創られた天皇制』は,皇室神道的な宗教観念をもって依然,
「皇祖皇宗」の歴史へと「遡源する信仰」心を有する,「天皇家の人びと の精神機制」のなかに存在している。
それゆえ,天皇たちは,みずからもまた「神になりゆく立場」にいるという皇室神道式の宗教心を,
間違いなく抱き,堅く信仰している。

問題の焦点に位置したのは,敗戦体験のある昭和の天皇裕仁であった。
明治天皇が,明治維新によって「作られたもの」として,大正天皇や昭和天皇 を「作るもの」の立場にあった。
大正天皇の在位にあっては,昭和天皇の摂政時代(1921年11月25日より)が食いこんでいた事情を考慮すると,
「作られた」天皇裕仁による在位期間のほうは,足かけで69年,実質でも67年もの長期間になっていた。

敗戦後の占領期を経て日本独立までの時期,昭和天皇が「象徴の立場」を,実体的には一顧だにしない方途で,
自分と一族の安定確保のために,それ も〈象徴君主的〉というには,あまりにもみぐるしい「裏工作的な政治行動」をしてきた。
しかも,このときの昭和天皇は,みごとなまで「作られたも の」が「作るもの」を「作る」場面を,みずから主体的に行為して形成していた。
アメリカ側も,日本を占領・統治する都合上,天皇のそうした行為を 功利的に逆用してきた。

結局,敗戦国日本は,昭和天皇の個人的な利害を中心に,それもアメリカが応じて用意した裏舞台に乗りながら,
その後における国家の方向性を決定させられていった。
昭和天皇が戦後になっても,国民(旧臣民)のことを「赤子(せきし)」あつかいしていた意識は,歴然たる事実であった。
敗戦の 憂き目程度で,自意識が完全にへこたれるヤワな天皇裕仁ではなかった。
戦後における彼の行為は,名は象徴(「作られたもの」)ではあっても,
まさしく「絶対的な」君主そのもの(「作るもの」を「作る」立場)にあったわけである。

天皇明仁は,このところ世間を騒がせてきた「集団的自衛権行使」の問題に賛意を抱いていない。
彼は,象徴天皇の立場から皇室政治にとってのこの 利害得失を明敏にみぬき,比較考量してきている。
本書『天皇製民主主義の根本問題-悩む天皇・彷徨う天皇家・揺らがぬ天皇制-』が,
そうした天皇の深層心理にまで関心を向けて,日本社会における卵黄たる近代皇室を統合科学的に論究する。

※ 主に「『本書』全体の主旨 」より。

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  • 天皇製民主主義の根本問題
    3,960円 (税込)
    天皇制度は日本の社会を理解するための鍵である。 本書は、憲法を守ると明言する天皇家を主軸にこの国を総合的に考察する社会科学書である。 皇居の宮殿で執りおこなわれている祭祀に詳しい学者が,現代家族としての皇族の問題に詳しいわけではない。 天皇裕仁の戦争責任の問題や日米 安全保障条約・日米地位協定に詳しい学者が, 宮中祭祀の歴史に詳しいことは,ほとんどない。 憲法第9条の問題に詳しい学者が,皇室・宮廷史として の古代史に詳しい場合はない,といってよい。 明治維新から『創られた天皇制』は,皇室神道的な宗教観念をもって依然, 「皇祖皇宗」の歴史へと「遡源する信仰」心を有する,「天皇家の人びと の精神機制」のなかに存在している。 それゆえ,天皇たちは,みずからもまた「神になりゆく立場」にいるという皇室神道式の宗教心を, 間違いなく抱き,堅く信仰している。 問題の焦点に位置したのは,敗戦体験のある昭和の天皇裕仁であった。 明治天皇が,明治維新によって「作られたもの」として,大正天皇や昭和天皇 を「作るもの」の立場にあった。 大正天皇の在位にあっては,昭和天皇の摂政時代(1921年11月25日より)が食いこんでいた事情を考慮すると, 「作られた」天皇裕仁による在位期間のほうは,足かけで69年,実質でも67年もの長期間になっていた。 敗戦後の占領期を経て日本独立までの時期,昭和天皇が「象徴の立場」を,実体的には一顧だにしない方途で, 自分と一族の安定確保のために,それ も〈象徴君主的〉というには,あまりにもみぐるしい「裏工作的な政治行動」をしてきた。 しかも,このときの昭和天皇は,みごとなまで「作られたも の」が「作るもの」を「作る」場面を,みずから主体的に行為して形成していた。 アメリカ側も,日本を占領・統治する都合上,天皇のそうした行為を 功利的に逆用してきた。 結局,敗戦国日本は,昭和天皇の個人的な利害を中心に,それもアメリカが応じて用意した裏舞台に乗りながら, その後における国家の方向性を決定させられていった。 昭和天皇が戦後になっても,国民(旧臣民)のことを「赤子(せきし)」あつかいしていた意識は,歴然たる事実であった。 敗戦の 憂き目程度で,自意識が完全にへこたれるヤワな天皇裕仁ではなかった。 戦後における彼の行為は,名は象徴(「作られたもの」)ではあっても, まさしく「絶対的な」君主そのもの(「作るもの」を「作る」立場)にあったわけである。 天皇明仁は,このところ世間を騒がせてきた「集団的自衛権行使」の問題に賛意を抱いていない。 彼は,象徴天皇の立場から皇室政治にとってのこの 利害得失を明敏にみぬき,比較考量してきている。 本書『天皇製民主主義の根本問題-悩む天皇・彷徨う天皇家・揺らがぬ天皇制-』が, そうした天皇の深層心理にまで関心を向けて,日本社会における卵黄たる近代皇室を統合科学的に論究する。 ※ 主に「『本書』全体の主旨 」より。
  • 天皇製民主主義の根本問題 第2巻
    3,960円 (税込)
    21世紀における現代天皇制は,どこに向かってその指針をとればいいのか? 本書『天皇製民主主義の根本問題 第II巻-敗戦・日本国憲法・天皇メッセージ・安保体制・「3・11」-』は,最近でも生前退位問題などで,なにかと話題にされてきた天皇制度のこれからを考察している。 本書は,アメリカに政治本質的には管制されているかのような「日本国の現状」を,天皇・天皇制の問題を基礎に据えて深耕する。安倍晋三首相は,敗戦したこの国の現状を「戦後レジーム」から脱却させたいと熱望しているけれども,対米従属の実態にある日本の政治・経済が真に独立するには,なお実現困難な状態に留め置かれている。日本国憲法の改定議論では,昭和天皇裕仁による「天皇メッセージ1947年9月」が,実質的にはいまだに大きな制約要因である。 日米安保体制はそもそも,敗戦後の日本を占領・支配してきたアメリカの意向に迎合した「昭和天皇の意思」にもかなっていた軍事同盟関係である。それゆえ,これを変革しようにも一朝一夕にはいくわけがない。現に敗戦後71年が経過しても,在日米軍基地はアメリカ本土よりも使い勝手のよい軍用基地として,大いに活用されている。その代表が沖縄県の基地群である。他方で原発問題は「3・11」を契機に方向転換の好機を与えられてはいたものの,結局元の木阿弥に戻りつつある。「基地の問題」と「原発の問題」との組みあわせは,日本にとって観れば,いわばシャムの双生児である敗戦後史的な重荷を意味する。 かつて中央大学商学部の有力教員だった経営学者岩尾裕純はこういっていた。「日本的経営は社会科学的研究の宝庫かもしれない」と。つまり,日本的経営の奥座敷にも天皇・天皇制という王朝制度が控えている。日本経済新聞の社会欄にはいつも叙位(ただし物故者に対する)がベタ記事で漏れなく報道される。この死者に対する皇室観に基づく社会秩序価値観の授与が,なにを含意するかは贅言するまでもない。 要は,天皇・天皇制の現状は今後においても継続されていくのか。憲法第9条の前に必置されているのが憲法第1条以下の天皇条項である。「戦後レジーム」からの脱却とは,いったいなにを「意味していた」のか。天皇家はその永い伝統に則して古都に里帰りするのが,もっとも幸せな生活を再得するための最上策になりうるのではないか(憲法学者長尾龍一の指摘)。鉄道会社が旅行に誘う宣伝文句にも,「そうだ京都に行こう! 」という標語があったが,いかにも示唆に富んでいる。 そもそも,昭和天皇は敗戦後における政治過程に対して,「象徴天皇」となった立場から介入していた。しかし,天皇はいっさい責任を負えないにもかかわらず,高度な政治問題に対して,それも政権次元でもいかなる議論も深めていない問題で,みずからの見解を占領の最高責任者に披瀝した。その行為は無責任の誹りを免れえない(豊下楢彦の批判)。天皇裕仁の政治史的な解明には裏史・野史・外史的な研究が有用である。

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