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人類の悲劇を巡る旅「ダークツーリズム」が世界的に人気だ。どんな地域にも戦争、災害、病気、差別、公害といった影の側面があるが、日本では、それらの舞台を気軽に観光することへの抵抗が強い。しかし、本当の悲劇は、歴史そのものが忘れ去られることなのだ。小樽、オホーツク、西表島、熊本、栃木・群馬などの代表的な日本のダークツーリズムポイントを旅のテクニックとともに紹介。未知なる旅を始めるための一冊。
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Posted by ブクログ
ダークツーリズムとは近代史の影の部分、とくに戦争と災害の現場となった土地を訪問する観光を指す。ダークツーリズムの核心は「悲しみの記憶を継承することで二度と悲劇を起こさせない」。戦国時代の戦場跡などは時代が古すぎるのでダークツーリズムには該当しない。 観光とは国の光を見ること。隠されがちな影に目を向...続きを読むけるのは悪趣味、不謹慎と思われがち。しかし破壊や死の歴史に思いを馳せることで記憶を継承する、語り継ぐ、生きる意味を再確認するなどポジティブな意味合いもある。強固な学びの意思なく、「物見遊山で行ってみたら、かなりためになった」程度でも十分ダークツーリズムたりうる。 本書では小樽、オホーツク、西表島、長野、栃木、群馬、インドネシア、韓国、ベトナム、震災後の東北地方が扱われる。 以下、要点。 ・遺構を撤去してしまうと記憶の継承は困難になる。また、他の観光施設との結合の上で動線を確保しなければ持続可能性はない。 ・網走監獄は「ダークツーリズムの理想型」。 ・ダークツーリズムの旅だからといってずっと悲しみの地だけを辿るのは心理的負担が大きい。代表的な観光資源と組み合わせて楽しみながら旅するのがいい。 ・地域の悲しみの歴史は、明るく楽しい観光のイメージと合わないため観光開発の過程で枠外に置かれがち。 ・災害で多くの人が亡くなった土地が行政や地元有力企業とコトを構えてしまうと、公はその記憶を消そうとする。遺構として保存されなくなり、観光案内等で紹介されることもなくなる。「地域における弱い立場の人たちの記憶はかき消され、強者による記憶が刻まれていく」。本来は弱い立場の人たちの記憶にこそ寄り添わねばならないのに。 ・ヨーロッパやそれが波及したアジアのダークツーリズムが、復興ツアーのみならず地域のダークサイドの記憶も含む多義的な概念で語られるのに対し、日本の被災地における復興過程は「明るく元気」であることが期待されるので、ダークツーリズムが復興ツーリズムと相容れない場面が多い。観光系学会にはダークツーリズムの存在自体を許そうとしない論者が多い。 今年東北へ震災遺構を見に二度旅行に行った。見学して凄まじい破壊の跡に慄くとともに、かつてあった災害を決して忘れまいと思った。 これまでにも沖縄へ旅行すればガマやひめゆりの塔へ行き、広島へ旅行すれば原爆ドームや平和祈念資料館へ行った。自覚していなかったが俺もダークツーリストだった。深い考えや信条があって行ってるわけじゃない。一般的な観光地より近代史の負の痕跡に惹かれるから行っている。
よく人が集まったり(観光だったり)または実際、今現在も普通にそこに住んでいる場所 明るい観光地(と言っていいのか)の裏側の負の部分。 あぁこういうのが正にダークツーリズムなんだなと思った 自分が実際行ったことのある場所だったり観光地だったり、一見すれば分からないマイナスイメージだったり そこにある悲...続きを読むしい歴史だったりを巡っている内容。 もっと読みたい!他にもぜひ!と思ってしまった。 先日東日本大震災で被害の大きかった石巻に初めて行き、現地に住んでいる友人の案内で様々な場所を巡ってきた。 仮に、では今後この本に登場するようなダークツーリズムな観光地として現地の経済を潤すこともできるのかもしれない。 だけど、実際亡くなった方や行方不明の方のことやご親族の方々を考えると 果たしてそれでいいのかとか凄く葛藤する。 非常にナイーブな題材でもあるなと考えさせられた。
「ダークツーリズム」とは何かという解説から筆者の実際に体験した旅の様子まで掲載されているので、ダークツーリズムについて未知の私にもよく分かった一冊でした。本書を通じてもっと興味が出てきたのでダークツーリズムについて調べてみたいです。
日本におけるダークツーリズムのポイントを、エッセンスを押さえながら紹介してくれる。 そもそもダークツーリズム対象が観光地として整備されているケースが稀である(例外は網走刑務所)。 なぜかというと体制がつくりたい町のイメージとあわないからだ、 など心理的社会的理由によるものだとの考察がなされ、内省を...続きを読む促される。 我々はもっと、負の記憶と向き合い教訓を汲み取っていくべきなのかもしれない。
学術的な本なのかなと思いきや、それをふまえたうえでの、どちらかと言うとガイドブック寄り。 新書とはいえ写真はめちゃくちゃ少ないし、それぞれのテーマについても最低限のことしか書かれてなくて、実際に見るなり調べるなり旅するなりして、知ってほしい感じてほしいと読み手に訴えてる感じがした。 被災地はその土地...続きを読むの性質によって復興の方向性が変わるって視点は、今まで自分には全くなかったので、確かに!と思った。確かに、神戸と東北の沿岸部とでは住んでる人も土地も違いすぎるよなあ。 結構面白かったので、この方の本は他も読んでみる。
観光学者 井出明氏によるダークツーリズムの解説書。第1章と第10章ではダークツーリズムについて学問の基礎的な説明や展望について展開し、第2章から第9章までは著者が実際に歩いた各地のダークツーリズムの実際をまとめてあります。紀行文みたいなので読みやすいです。まずは実践してみて、どういうものかを体感して...続きを読むみようということかな。日本には、ここで紹介されているような場所を観光で訪れようとすること「不謹慎」という言葉ですべて否定したがる風潮がありますが、やはり光と闇をきちんと知ることが重要だと思いました。
歴史の暗黒面を刻んだ観光地を訪れることを、「ダークツーリズム」と呼ぶのだそうです。普段、観光について取材する機会が多いにも関わらず、恥ずかしながら本書を手に取るまで知りませんでした。 もっとも、ダークツーリズムという言葉が世に出て来たのはごく最近のこと。何でも、世界的に人気になっている旅の一形態なの...続きを読むだそうです。本書は、日本のダークツーリズム研究の第一人者が、世界各地の「負の遺産」を訪ね、観光の新潮流の行方を展望したものです。 著者が訪れた場所を章ごとに順に紹介すると、小樽、オホーツク、西表島、熊本、長野、栃木・群馬、インドネシア、韓国・ベトナム―です。トップを飾った小樽でダークツーリズムとは意外でしたが、小林多喜二を生んだ地ということに光を当てれば、たしかに頷けます。小樽では、陸軍の特攻艇マルレが隠されていた事実も明らかになりつつあるといいます。 エコツーリズムの聖地として知られる西表島は、実は「疫病と搾取」という悲しい歴史を持つ島でもす。詐欺同然で集められた炭鉱労働者が島から逃走しないよう、地域通貨で賃金が支払われていたという事実には衝撃を受けました。 熊本では、水俣病やハンセン病、炭鉱労働の記憶、栃木・群馬の旅では、日本初の公害事件と呼ばれる足尾鉱毒事件の跡をたどります。 インドネシアではバンダアチェを訪ね、WHOのまとめで22万4千人もの人が亡くなったというインド洋津波の現場を見ることで災害復興について考えました。 いずれも物見遊山では得られない価値のある旅でしょう。ただし、ダークツーリズムの旗色は、必ずしも良いというわけではないようです。足尾鉱毒事件の現場となった渡良瀬川を含む一帯は現在、ラムサール条約にも登録された湿地となっていますが、ダークサイドから掘り下げる紹介は、市の当局から拒まれたといいます。観光の持つ明るさを強調したい観光学系の学会からも煙たがられているそうです。 しかし、歴史に負の部分はつきものです。悲しみの記憶をしっかりと受け継ぐことが、明るい未来を築くことにもつながるのではないでしょうか。本書でも触れられていますが、多喜二は愛する田口タキに送った恋文で、「闇があるから光がある」と書きました。秋の行楽シーズンには、ダークツーリズムで歴史の暗部に目を凝らしたいものです。
悲しみの記憶をめぐる旅。 悲しみの記憶を風化させないため、観光資源として遺構を残すべき。 無言館と松代大本営は是非行ってみたい。 今ひとつ読者対象がぼんやりとした本かなと感じた。それから、論文調だからなのかわからないけど、いちいちややこしい言い回しが気になった。もっと簡単な日本語でいいのでは?(例え...続きを読むばこれを著者風に書くと「一般読者の読解力・可読性を鑑みるに、もっと平易な日本語で記述されるべきであったか再考の余地がある」みたいな調子なのよね…)
負の記憶を想起させる場所を巡る旅。記憶を想起させるためには手がかりが必要なので,それらの保全や情報の整理がいる。保全や情報の整理はそれをする者の考えが反映されやすいが,その思惑を外れてしまうこともある。正?の記憶だけの場所というのもないのだろう。多くは正と負を併せ持つ。光を求めて旅にいくが,影を見る...続きを読むことでその光がより輝くことがある。負を前面に出す場所でも裏をみることで光があるのだろう。観光アプローチの一つとして面白いのだろう。「ダーク」という言葉が持つ怖いもの見たさ感は人を引きつけそうだし。
知っている場所もあれば知らなかった場所もあり、それは勉強になった。 もっとも、一つ一つの場所に筆者は訪れているにもかかわらず、あまり詳しく書かれていないのがこの本の弱点だと思った。 一冊でいろいろな場所をまとめている点に興味を持って読んだが、それぞれの場所について知りたいのなら、他の書籍も参考にする...続きを読む必要がある。
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ダークツーリズム 悲しみの記憶を巡る旅
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井出明
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