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Posted by ブクログ
ペットを飼っていると、必ず別れがやってきます。その悲しみのあまり「もう生き物は飼わない」と思うかたも多いですよね。そんなとき、どうやってこの悲しみを乗り越えるかが、大きな大きな課題になります。
人気ブログ『富士丸な日々』の穴澤 賢さんが、愛犬・富士丸が亡くなった日のことを克明に記した涙の記録は、その悲しみに暮れるかたの力になってくれるのではないでしょうか。その一部をご紹介します。
* * *
深夜だというのに次から次へと人が集まってきて、狭い部屋には10人近くの人が立ちつくしていた。その場で泣き崩れている人もいた。みんな富士丸のことが大好きな人、富士丸が会う度にしっぽをぶんぶん振り回す人たちだった。
「なんで?」「どうして?」「なんか変わった様子はなかったの?」「何があった?」誰もが部屋に入るなり富士丸を見ては驚愕(きょうがく)の表情を浮かべ、様々な質問をぶつけてきたが、俺は何も答えることができなかった。
そのうち話すこともなくなり、全員が押し黙り、信じられないといった面持ちだった。目に涙を溜め、何かを必死に堪えている人がいる。どこかから嗚咽(おえつ)が漏れる。
部屋の隅っこに腰を下ろし、その光景を眺めるうち、俺は不思議な感覚を覚えていた。
涙もこぼれない。悲しい、という感情もない。しいていえば、芝居を観て涙する観客を舞台袖から眺めている心境、これに一番近いかもしれない。まったく現実味がない。同時に、ある考えが頭を支配しはじめていた。
馬鹿馬鹿しい。俺はこんな現実は認めない。こんなことが起こるはずがない。起こっていいわけがない。もしこれが現実だというのなら、そんなものは全力で否定してやる。これは夢に違いない。誰がなんと言おうと、夢なのだ。そんな言葉が頭の中をぐるぐると駆けめぐっていた。
時刻は2時を回っていた。深夜にもかかわらず集まってくれた人たちにお礼を言って、ひとまず今夜はお引取り願うことにした。
とにかくひとりになりたかった。この光景を、ひとりの妄想にとどめておきたかった。しんと静まりかえった部屋に立って考えた。寝よう。眠ってしまおう。リビングに布団を敷くと、そこへ富士丸を運んだ。動かないからだがやたらと重い。でも大丈夫。
向こうを向いた格好で横になる富士丸を、後ろから抱きしめた。そう、大丈夫。これは夢だ。起きたらお前は元気なんだ。大丈夫大丈夫、心配するな。俺にまかせろ。だってこれは俺の夢の中なんだから。
そうだ、起きたら散歩に行こう。いつものように。まったく酷(ひど)い夢を見たもんだ。そう言ってわしゃわしゃと撫で回してやろう。きっとお前は、そんな俺を不思議そうに眺めることだろう。
富士丸の頭を撫でながら、どこか穏やかな気持ちにさえなっていた。
時間
悲しみに押しつぶされそう。
なんの覚悟もなく,急死だなんて。
壮絶なペットロス。
愛するひとのいない世界で,生きる意味を見失う。
朝が来るたびに絶望する。
きっとこの辛さは,犬と暮らした人にしかわからない。
それぞれの絆のぶんだけ,それぞれの悲しみがある。
唯一の薬は時間だけ。
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