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もしかしてお姉さん、異能持ちですか?
僕――世杉見識は目を放すとすぐサボる、意識の低いアルバイトである。自慢することではない。
バイト開始当初は、「能転売業なんてうさんくさ過ぎる、すぐに逃げよう」なんて思っていたけど、異能関係者は変わっている人が多くて、ちょっと楽しいと感じている。
異能というのは――超能力とか秘蹟とか、そんな呼ばれ方をする、とにかく不思議な力のことだ。それは人の願いと共に現れ、いつのまにか消えていく、一時の奇跡である。
そう稀少なものでもないが、誰もが自由に手にできるわけではない。
だから、持たない者は皆こう言う――自分も欲しい。
欲しいと思う人がいるのなら、そこにビジネスチャンスは生まれる。
異能を売りたい人と、異能が欲しい人を結ぶお仕事――異能転売業はこうして成立した。
僕の働く秘蹟商会もそんな異能転売業社の一つである。
店舗は埼玉の片隅にある古い建物。働いているのは店長とアルバイトの僕二人だけ。まだまだ規模は小さいが、明日の成功を夢見て僕らは日夜奮闘している。
「さてと・・・・・・
ポンコツかわいい店長のために、異能力保有者を捜しに行きますか」
第6回小学館ライトノベル大賞審査員賞受賞作。
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