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4人を射殺した少年は獄中で、本を貪り読み、字を学びながら、生れて初めてノートを綴った。―自らを徹底的に問いつめつつ、世界と自己へ目を開いていく、かつてない魂の軌跡として。従来の版に未収録分をすべて収録。
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Posted by ブクログ
後悔は時と共に大きくなる 永山基準の意味を知りたかった 親の犠牲だったのではないか と思った 最期は受け入れていたのだろうか 改めて思う
読後は「ピストル魔の少年」と軽々しく呼ぶ事は憚られる。時代が違いヒップホップに出会っていたら…と夢想せざるを得ない。
文学的ではないとしても、貪り読んだ本の断片だとしても、他のありふれた描写とは一線を画すものがある。例え犯罪者であっても言葉を綴ることは自由で、そこに人権は存在する。誰に媚びることもない不器用で正直な言葉が好きだ。
死刑囚として、あまりに有名な永山則夫。 禁忌を犯した己の業に抗おうと、 知で武装した1人の死刑囚の獄中での思索の記録として忘れられない。
1960年代に連続射殺事件を起こし、有名な「永山基準」を作り出した死刑囚は獄中にて初めて文学に触れ、しだいに共産主義思想に傾倒していく。 自らの青年時代を思い起こして綴った随筆・一字一字搾り出すように書いた詩・・・。 深淵に触れるかのような一冊。
永山則夫(1949~97年)は、北海道網走市で、8人兄弟姉妹の第7子(四男)として生まれ、幼い頃に父親は家からいなくなり、母親や兄弟からも疎まれて育ち、小学校、中学校にはほとんど通わなかった。集団就職で上京した後、仕事を転々としながら、ときに窃盗事件を起こし、また、外国船に乗って密航を企てたりしたが...続きを読む、一時通った明大付属中野高校夜間部では上位の成績だったという。そして、1968年、19歳のときに、在日米軍・横須賀基地内の住宅で盗んだ小型拳銃を使って、4件(東京都・京都市・函館市・名古屋市)の連続殺人事件を起こし、最終的に死刑判決を受け、1997年に死刑が執行された。 本書は、ほとんど学校に通うことのなかった(高校の一時期を除き)永山が、拘置所の中で、本を貪るように読みながら、1969年7月~1970年10月の一年余りの間に、自分の思いを大学ノート10冊に書き綴った手記で、1971年に出版された。出版直後からベストセラーとなり、1970年代前半は、本書を持ち歩くことが「反権力」を通す若者にとって、ある種のファッションだったともいう。永山は、その後も獄中で小説家として創作活動を続け、小説の『木橋』(1983年新日本文学賞受賞)、『捨て子ごっこ』等を残した。 私は、随分前に、堀川惠子氏の『死刑の基準』を読んで、永山と連続殺人事件のことを詳しく知り、そのときも本書には興味が湧いたものの、(パラパラめくってみて)読み切る自信がなくて止めたのだが、今般、新古書店で手に入れ、評論家・秋山駿氏の解説を参考にしつつ、飛ばし読みしてみた。 ページをめくり終えて、まず驚いたのは、思索のボリューム・密度と、わずか一年余りでのその向上ぶり(という言い方が適切かは疑問だが。。。)であった。全体のイメージとしては、ノート4までは、自分の思いついたこと・感じたことを、詩の形式で断片的に描いたものが多く(義務教育もまともに受けておらず、文章を書く力がなかったのだろう)、ノート5あたりから、本を読んで得た言葉・表現や知識(ドストエフスキー、カント、フロイト、マルクス等の著書を次々と読んでいるのだ)を使って、人の生や社会・世界について自分の考えたことを、散文形式で表現するようになっている。 そして、犯罪者の手記として最も知りたいことは、当然ながら、なぜこのような凶悪犯罪を起こしたかであるが、この事件は典型的な「動機・理由なき殺人」と言われ(幼少期からの不遇が背景との分析は為されたが)、その原因は永山本人にすらわからず、秋山氏によれば、この手記は、「いったいそこに何が在ったかへの、なぜ自分がそこにいたのかへの、果てのない追求の手記」なのである。そういう視点で見た場合、最も気になるのは、ノート5の「この108号事件は私が在っての事件だ。私がなければ事件は無い。事件が在る故に私がある。私はなければならないのである。・・・死刑になるなら自殺した方が最良だと考えた・・・自殺は出来なかった。・・・世論の同情する私であるために出来なかった。」という文章なのだが、これは、その後も後を絶たない無差別殺人の犯人がしばしば口にする、「注目される事件を起こして、死刑になりたかった。相手は誰でもよかった」という考えと大きく違わないようにも聞こえる。 永山は、もともと知的作業に向いた知力を持ち、それ故に、驚くべき短期間で思索し、それを表現することができるようになったが、これは、間違いなく永山に特有のことであり、本手記に散りばめられた様々な思索は、他の動機・理由なき凶悪犯罪に通じるのだろうか。。。 本手記をどう読む(べきな)のか。。。現時点ではよくわからない。 機会があれば、永山の書いた小説を読んでみたいと思う。 (2024年5月了)
1968年に4人を殺害した事件で知られる著者が、獄中で哲学や心理学などの本をむさぼるように読みながらつづった手記です。 見田宗介は『まなざしの地獄―尽きなく生きることの社会学』(河出書房新社)で著者をとりあげ、高度成長期の疎外状況における著者の実存に迫る考察を展開しています。また、批評家の井口時男...続きを読むや、近年では哲学者の細見和之も、著者について鋭い論考を発表しています。 本書につづられているぎこちないことばを読みながら、いったい著者は、マルクスやカントのことばをどのように読んでいたのだろうかという疑問に、つねにつきまとわれていました。おそらくわれわれがマルクスやカントを理解するように読んでいたのではなく、著者自身の、それまでかたちをとることのなくくすぶりつづけていた暗い情念が抽象的な概念で組み立てられた文章のうちに流れ込み、はじめてそれをみずからの目で見つめるような仕方で読んでいたのではなかったかと想像します。そうした著者のまなざしは、マルクスの思想を「外部」から見るということがどういうことなのかを、実例としてわれわれに示しているように思います。 わたくし自身は、資本主義が生み出す貧困によって、必然的に著者が犯罪者へと押しやられたとは考えませんが、もし著者が、彼自身のうちにくすぶる混沌を、ことばによって輪郭づけることができていたとしたら、はたして彼は罪を犯しただろうかという問いは、やはり残るだろうと思います。本書でも著者は、学生や看守に対して幼稚とも思えるコンプレックスをあらわにしていますが、それすらも、彼が学ぶ前には明瞭に自覚することさえできず、ただうちにくすぶりつづける混沌として彼を苛んでいた情念だったのではないでしょうか。
永山則夫は1968年のうちに 米軍基地から盗んだ拳銃を用いて4人を殺した これといった理由もなく そうすることで、自分という存在を見いだそうとしたのだ とする評論家もいた 彼が、家族愛をまったく知らなかったものかどうかはわからない 甘えの感情から、悪い記憶に固着して 被害者意識を募らせていただけと...続きを読むいう可能性もある ただしまともな生育環境に置かれてなかったことは確かだ 中卒で学もなかった この書物は、永山が逮捕された直後の拘留中 新聞雑誌等からの漢字の書き取りに並行して、ノートの余白に記された 詩や雑感をまとめたもの 殺人者の回想録としてはまったく空虚なものだ どこかで見たものの寄せ集めと言っていいだろうが 生きることの空虚とは別にある、死へのおそれを持て余した本音が ときどきキラリと光を放つ
河出文庫版はかなり内容が追加されているらしい。 よく言われているように、著者は確かに詩才があり、知識欲やその吸収力も凄い。でも、本書で書かれているのはいわば延々と、自分が殺人を犯したことは社会のせいであるという開き直りである。殺された4人の遺族に印税を寄贈したらしいけど、これじゃ、受け取りを拒否した...続きを読む遺族がいたのも無理はない。殺された側にとっては、なぜ自分が・父が・息子が、ということが最大の問題だが、永山はそこに対しては語りかける言葉を持っていないようである。 この本を読んでいるときに、取手駅前でリストラされた男がバスの中で刃物を振り回す事件が起きた。これも社会のせいなのだろうか。いや、社会のせいだけど、決して正当化は出来ないだろう。 この本を手にする気分では無くなり、ちょうど半分読んだところで読むのを止めた。
未成年時に米軍から盗んだ拳銃で四人殺した凶悪犯が書いた手記。 詩に関しては読むべき価値は十分あると思う。 文学的もそれなりに評価されたのも頷ける出来となっている。 ただ後半に占める政治的・哲学的考察はどうも好きになれなかった。 古臭さとともに幼いような気がした。 多分彼がこういう思想に走っ...続きを読むたのも取り巻きの影響が大きかったのではなかろうか。 中途半端に知識を得た人間がよく陥る典型というのだろうか。 また自己愛も随分強いな、と。 まあ獄中結婚したくらいだし、なんだかんだと言いながらもこの人は俗物だったのだろう。 それでも読み書きも満足にできない人間が刑務所で独学し、ここまでのものを書き、その印税で遺族に賠償したという点では素晴らしいと思う。 個人的には詩だけをピックアップして欲しかったかな。 中立的な誰かが書いたノンフィクションを読めば十分なような気もする。
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