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「最後の選考の機会にこれほどの候補作と出会えたことは僥倖だったと言える」阿部和重氏、「馬鹿馬鹿しくも可笑しい結末の、『感動の物語』を嘲笑う姿勢も頼もしい」奥泉光氏、「創造性と批評精神にみちた作品である。漱石先生も大吃一燎(びっくり仰天)だろう」辻原登氏。――選考委員激賞&絶賛の群像新人賞当選作。「面白い小説」そして「優れた批評」を一度に堪能できる、本年度イチオシのニュースな文学です!
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Posted by ブクログ
おもしろい(興味深い)小説である。どの文字(中国の漢字、日本の漢字、ひらがな、カタカナ)をどのように配置(本文か、ルビか)するかによって、同じ出来事を描いても、全く見え方が異なるし、読み手の頭の使い方も変わる。(漱石が明治時代にやったことと同じと言えば同じなのだろうが、今までに無い角度で漢字仮名交じ...続きを読むり文を読んでいるという感覚は、漱石の文章より本書の方が強い。)それを軽妙なストーリーとともに様々に変奏して実証している。物語としての感動はないが、その着想や構成の巧みさはお見事。読んで損はない。
もちろん、漱石の「吾輩は猫である」をもじった題名。 漱石のが、明治後期の世相・文化批評なら、こっちは、 平成の日本語、日本文化批評。カタカナ語のおかしさとかを 同じことを表す中国語(漢字表記、私は正確な発音を 知らないのがちょっと残念)を用いることで、チクチク。 ただ、量的に物足りない。もっと展開し...続きを読むてから 終わらせるのは、考えなかったかな?
「吾輩ハ猫二ナル」(横山悠太)を読んだ。何なんだこれは。前菜だけで終わってしまったディナーのようだ。確かに新しくて面白いんだが、圧倒的に量が足りない。もう少し読みたいのに。電子書籍の難点は、本の厚さが目視できないことと、脚注がある場合に本文と行ったり来たりの操作が面倒なことだな。
中国語と日本語+Jポップ読みみたいな雰囲気。中国語が堪能な方に読んでもらったら「むかつくわー」とのこと。すごく面白かった。特にスピッツのくだり。 気の抜けた会話文と地の文の硬くも柔らかくもないあの感じ。漱石好きは楽しめる(すごく笑った)。それともやっぱり「むかつくわー」になるのかな。
2014年群像新人文学賞受賞作であり、先日の芥川賞候補作となった作品(受賞はならず)。著者のデビュー作。 日本語を学んでいる中国人の友人が「日本語はとにかくカタカナがやっかい」自分の日本語レベルで読める小説はないかと聞かれ、ひと昔前の小説を渡した。すると今度は「カタカナが少ないのは良いが、時代遅れ...続きを読むの漢語ばかりで読みにくい。とくに夏なんとかという作家の作品は漢字の使い方がでたらめ」だという。そこで、日本語を学ぶ中国人のための小説を書こうと思い立つ。その作品が「吾輩ハ猫二ナル」であった。 文章はカタカナを全て漢字に置き換え、また 日本語と漢語が激しく入り乱れる。最初は読みづらくもありますが、疲れることなくだんだんと慣れてくるのは散りばめられた現代の日本や中国に対するユーモラスな風刺表現のおかげでしょうか。 作中にあるスピッツの名曲「ロビンソン」の歌詞の解釈には笑ってしまいました。 物語を楽しむというよりも、実験的(知識の乏しい僕には少なくともそう感じられました)な文章表現を楽しむ作品だと思います。
読破できないかと思いながら読み始めたら意外とスルスル読めた。よく似た題名の古典的近代小説と結びつけないほうがいい。このお話はこのお話。日中のダブルらしき青年の(たぶん)普通な日々を描く。最後のところで題名の意味がわかる……ような。ちょっとスカされた感が猫にいいようにさちゃったような感じと似てるかも。
中国語で書かれた日本語の本。趣向が面白い。文も徐々に吸い込まれるような不思議な感覚。日本人の父と中国人の母を持つ主人公のドタバタ劇が単調ようだけどジワジワ来る文章で面白い。
主人公は森見登美彦の作品張りの「めんどくさい」人物。 めんどくささ全開で上海から蘇州での一人暮らし、そして東京秋葉原での体験までを綴る不思議物語。 最後数ページは意味不明(^^
「日本語を学ぶ中国人」を、想定した文体は、中国語を学ぶ日本人にとってもニヤリとしてしまいます。 タイトルどおり、夏目漱石のパロディが散りばめてあるらしいのですが、私は殆ど読んでなくて、そこまでは楽しめず。
第57回群像新人文学賞受賞作品。 思わず吹き出しちゃったくらい笑えるユーモア小説。 日本語を学ぶ中国人向けの日本の小説を書こう、というコンセプトで書かれた小説であるとのことだが、逆に日本人にとっても中国語を学ぶというか親しみをもつのにいい小説なのではないかと思った。 中国人にとってカタカナはかくも...続きを読む大敵とは。主人公の中国人と日本人のハーフ(とは言わないんだっけ)もカタカナが憎く、彼の語りで進められるこの小説はずっと本来カタカナで表される単語に中国語の漢字(に日本人向けにカタカナのルビがふられている)が当てられているが、ラスト猫になった後の文章は自然にカタカナが使われている。これは何を意味するのか……。猫になったことによって彼の中で何か悟ったというかはっちゃけた感じは受けるけれど。 「どうして俺はこんなにへそ曲がりのつむじ曲がりのおたんこナスなんだ。本当は日本のことも大好きなくせに。(p133)」とあるように、猫になってふっきれて「本当は日本のことも大好き」だということを受け入れたので日本特有のカタカナ文化も受け入れた、というところだろうか。 大してかかわってもない猫を「先生」と呼ぶところ、好き。 笑えたところ。 ・中国人たちのロビンソンの歌詞への無理解。 なんだよルララってみたいな。確かに(笑) 「男女紛紛たる議論の末、結局これは神経病者かアルコール中毒者のうわごとを誰かが口述筆記したものであろうといった者の意見が、最も有力となった。(p46)」 ・日本に来て税関を抜ける際に「おかえりなさい」と言われたので、メイドカフェ(とは何か主人公はいまいち理解できずに、ただの喫茶店だと思い込んだまま入店)でおかえりなさいませーごしゅじんさまにゃーん! と言われたのを日本の文化だと思い込み「ただいま帰りました」と答えたところ。 「機場でも珈琲店でも何処でも「おかえりなさい」というフレーズは用うものらしい。察するに「いらっしゃいませ」の意味もあるのだろう。畢竟日本人はあいさつ狂である。ましてや「おかえりなさいませ」とはご丁寧なこった。それにしても、最後の「にゃーん」は何事だ?」
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