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著者は川柳・俳句・短歌の垣根を軽やかに越え、ボーダレスに創作活動を展開する短詩型表現愛好家。『羅針盤――ためらいの先へ』は、「川柳とは何か」という問いへの答えではなく、問い続けるための小さな方向感覚を手渡す一冊である。
著者は川柳を、人間と向き合うための「構え」や「態度」と捉え、全72句にその視線を一貫して注いでいる。生きていく中で個人の輪郭が失われていくような違和感や不条理を、身近な物や身体感覚へとそっと置き換える比喩が鮮やかである。
1句1ページの構成がもたらす豊かな余白は、読み手を結論へ急がせず、ふと立ち止まって自分の現在地を確かめる時間を育んでくれる。そんな静かな問いに満ちた句集である。
●収録作品より
二行目の日記に潜む嘘ひとつ
朝礼で行方不明の一人称
そっと舟押し出すように友の通夜
ポケットに手垢のついた羅針盤
ただ風の気配を待っている余白
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