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大学生の夏目は、実際に起きたら嫌なことを逐一スマホにメモする極度の心配性。リマインダーには700件の心配事が登録されており、彼女の統計によれば、そのリストの7割は現実になる。
祖母の死によって住む場所を失った夏目に手を差し伸べたのは、親戚から数々の怪しい噂を流されてもはや正体不明の存在となっている東京のおば、宇曽川ひかりだった。
東京・錦C町にある宇曽川の自宅は、かつて眼科医院だった。そこには、宇曽川曰く「開けたら別の世界に繋がる」という緑色の「開かずの扉」があり、夜な夜な正体不明の足音がしたりWiFiが激重になったりする。無責任な親戚から、「死体が隠してあったりして」と言われたひと言が次第に頭から離れなくなる夏目。
宇曽川は夏目の問いかけを常に煙に巻くような嘘で受け流すが、バイト先で出会った幼馴染の南海や、生意気な小学生・千理との交流を通じ、夏目は街に伝わる晴れ男の伝説と、ひかりの過去が繋がっているのではと疑い始める。
果たして、開かずの扉の向こうに隠されているのは「死体」か、それとも――。心配事が尽きない夏目と、嘘つきのおばが織りなす、少し不思議でかなりユーモラスな日常を唯一無二の筆致で描く、第69回メフィスト賞受賞のデビュー作。
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Posted by ブクログ
一緒に暮らしていた祖母が亡くなり、親戚に家を追い出されてしまった夏目。それまで付き合いのなかった「東京のおばさん」宇曽川が一緒に住むことを持ちかけてくれたものの、異常に心配性の夏目にとっては問題が増えるばかり。物語も文体もユーモラスで楽しい物語です。
「心配事の九割は起こらない」が通説であるものの、独自の調査によって心配事の七割が起こるということを確信している夏目。その心配事の内容があまりに多岐に渡っていて、想像力の豊かさに驚かされます。謎めいた宇曽川と開かずの扉のあるその家に関し、「霊に呪い殺される」「おばさんが実は快楽殺人鬼」とかいう心配の種が浮かんでくるだなんて! でも確かに絶対にありえないなんて言えないのかも……? そしてその心配性が案外と役に立ってしまったりするところもほっこりポイントです。
開かずの扉、晴れ男の正体、などと謎の部分が徐々に解明されるのも楽しいポイント。嘘も多いとはいえ、いいんだよね楽しければ、という印象。嫌な嘘はまったくありません。
彼女を取り巻く町の人々も癖が強く、しかし魅力的です。特に不動産屋の「おどろきハウス」の物件があまりに面白すぎました。どれも住めるとは思えないのですが、冷やかしなら行きたいですこのお店。
Posted by ブクログ
え、すごく面白かった。メフィスト賞ということで、とんでもなく尖った作品なのでは…と思って読み始めたのですが、笑いつつもほんわか心が温かくなる小説でした。これ、青山美智子さんとか成瀬シリーズとか好きな人が絶対好きなやつだと思うので、タイトルを分かりやすく「心配事は錦C町のサンドイッチ屋まで」みたいにした方が良かったと思うな。ポプラ社から出てそうな話なんだもの。良い意味でメフィスト賞らしくない!
主人公の夏目は、起こったら嫌な心配事をリマインダーに大量に登録している心配性の大学生だ。
同居していた祖母が亡くなり住む家がなくなって困っていたところ、おばの宇曽川からいっしょに住まないかと提案され同居することになる。近所のサンドイッチ屋でバイトすることになった夏目は、ひょんなことから他人の心配事を聞いてアドバイスするという心配事相談サービスを始めることになる。
宇曽川の家のある錦C町には癖のある人ばかり住んでいて、夏目は翻弄され巻き込まれ、てんやわんやします。また、居候するおばの家で不審な物音がしたりWiFiが通じなくなったり不可思議な現象に遭遇します。更に、キッチンにある扉は絶対に開けるなと言われるのですが、心配性の夏目はもしかして死体があるのでは…などと考えすぎて眠れなくなります。
元同級生でバイト仲間の大阪娘・南海、ド派手なジャケットを着たメガネ屋の店長、変な物件ばかり紹介してくる不動産屋、賢くてクソ生意気な小学生…登場人物がみんな良い!本当に楽しいご近所コメディ小説でした。錦C町に住みたくなります。
私も心配性なので、夏目の気持ちはちょっと分かる気がします。心配事の9割は起こらないなんて絶対嘘。私は心配事を可視化したら本当に起こりそうで怖くてそういうのを書き出したりできないタイプですが…。
Posted by ブクログ
可愛らしい装丁と、メフィスト賞受賞作というギャップ?に惹かれて読んでみた。個人的にメフィスト賞の響きには仰々しいものを感じてしまう。
母親が出奔して祖母と暮らすことになったものの、祖母は亡くなり、住まいをはじめ遺産の類は親族に奪われ、さてどうしようという女子大生・夏目が主人公。
そこに突然「なら、うちに来たら?」と声をかけてきたのが、“東京のおばさん”こと謎に満ちた遠縁の宇曽川さんで、夏目はそのままなりゆきで錦C町に住むことになる。
そこで、かつての同級生・南海とも久しぶりの再会を果たしたことがきっかけとなり、夏目は近場のサンドイッチ屋でバイトをはじめ、徐々に錦C町に馴染んでいく。
「心配事が心に浮かんだらすかさずスマホのメモに書き残し、その件数は今や700件に及ぶ。それら心配事の実際発生率はじつに7割を超える」という研究?が南海を常連客にバレたことで、その心配性な性格を逆手に活かそうと「心配 ¥0」サービスを始めるが、夏目自身も居候先で起こる不可解な現象に心配事を募らせており……。
あらすじを書き連ねながら思い返してみても、とてもポップであくまでも日常に留まる内容だった。
最後にはすわとんでもない驚きや不幸な結末が待ち受けているのではと、こちらも勝手に心配事を募らせて怖々読んでいたのだけれど、ずっと平和なままだった。ずっとなんかよく分かんないけど面白かった。え、なんで?
コミカルな展開や人間模様が続いていくなか、終盤ようやくやや唐突ともいえるようなシーンで、宇曽川があっけらかんと「まあ、もしそんな事態になったら、私がかわりに噓ついてあげるよ」と言ったときには、その言葉のあまりの確かさにびゅうと風が吹け抜けていくような気持ちになった。
代わりに嘘をついてくれる人がいるという、その存在は、こんなにも心強いことなのかとハッとさせられた。そして「これから家族になろうと思っています」に繋がるのである。
いつのまにかずいぶん夏目に感情移入しながら読んでいたのだとそこで気がついた。
選評が気になったので探してみたのだけど、ウェブでは見つからなくて。
そしたらメフィスト賞って外部選考委員(審査員)がいなくて、編集部の合議によって決まる文学賞だったんですね。
選評が掲載されるらしい小説誌「メフィスト」は現在Mephisto Readers Clubの会報という扱いなのだとか。知らなかった。びっくり。
登場人物みんなチャーミングだったので続編あるといいなー。
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