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港島一の名門、荘家。
その四代目当主である男は、富も権力も地位も、当然のように手にしてきた。
そして、美しい妻も。
彼女は二十年以上をともに過ごし、三人の子どもを産んだ、彼の妻だった。
艶やかで、賢く、奔放で、少し手に負えない。
だが男は、それさえも自分の掌の上にあるものだと思っていた。
夫婦とは、そういうものだ。
妻は最後には自分のもとへ戻る。
彼は本気でそう信じていた。
けれどある日、彼女は静かに告げる。
「離婚して。もう、あなたの面倒を見るのはうんざりなの」
最初は、ただの気まぐれだと思った。
長すぎる結婚生活の中で起きた、ささいな反抗。
そう考えていた彼は、彼女が本当に家を出ていくまで、何ひとつ分かっていなかった。
自由になった彼女は、もう誰かの妻として生きない。
若く、従順で、優しい男たち。
精悍なボディガード、気の利く助手、彼女に心を寄せる愛慕者たち。
彼女のまわりには、次々と新しい視線が集まりはじめる。
二十年以上そばにいたはずの女が、
自分の知らない顔で、誰よりも美しく咲いていく。
すべてを支配してきた男は、初めて焦りを覚えた。
「ご自重ください。私たちはもう離婚しています」
「それで? 元夫の膝に脚を乗せるのは、そんなに好きなのか?」
美しき元妻と、手放してから愛を知った男。
遅すぎる独占欲から始まる、港島財閥ラブロマンス。
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