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歯科診療所の昼の休み時間、その男は現れた。突然歯痛に襲われた急患だった。男の名前を聞いて歯科医は愕然とする。大切なひとり娘を自殺に追い込んだ新劇の演出家だったのだ。千載一遇の復讐のチャンスに、医師は男を殺害、完全犯罪を目論むが……。(「わるい風」) 控え目だが着実に事件解決に迫る名探偵・鬼貫警部の推理力と人間的魅力。傑作短編集!
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Posted by ブクログ
鬼貫警部シリーズの作品集。 犯人たちが入念に練った完全犯罪を、一見穏和そうな鬼貫警部がアッサリと見抜き解決する。 倒述物という雰囲気だが、犯人たちの実は脆い見通しにあっけなく破綻する様は、ミステリーというよりはブラックユーモアのような雰囲気もある。 しかし彼らの身勝手さや傲慢さもあって、心地よく読め...続きを読むる。 最後の二編は戦前のハルビンが舞台。ロシア人やロシア語地名がたくさん出てくるので、不思議な雰囲気。
「青いエチュード」、「わるい風」、「いたい風」、「殺意の餌」、「MF計画」は犯人視点の倒叙もので、いずれも犯人の見過ごしていた矛盾点を鬼貫警部が最後に指摘する。 「夜の訪問者」は、濡れ衣を着せられ、事故死した夫の無罪を証明してほしいとの依頼を受けた私立探偵が、事件に潜むいくつかの謎を解き明かし、鬼貫...続きを読む警部に真犯人を告発する話。 「まだらの犬」は、この短編集では一番の長編だが、容疑者が二転三転。本格ミステリーというよりも、刑事の捜査における苦労話、警察小説の趣きが濃い。アリバイトリックはちょっと凝り過ぎで、さほど妙味はない。 「楡の木荘の殺人」と「悪魔が笑う」はハルビンで起こったアリバイトリックに関する事件で、トリック自体は平凡。 突出した出来栄えの作品はなく、しばらくすれば忘れてしまいそうな話ばかりであった。
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