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息子に届いた絵葉書には、怪獣のように大きな蝉の抜け殻が写っていた。パソコンを使い、巧妙に作られた合成写真――その夜、私は悪夢にうなされた。なぜ、蝉の抜け殻などに恐怖を覚えるのか? 私は、心の奥底に封じ込まれていた、ある記憶を辿り始める……(表題作)。昆虫に題材を取り、紡ぎ出された男女の多様なドラマ9編。名匠の手腕をご堪能あれ!
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Posted by ブクログ
佐野洋の連作ミステリ短篇集『蝉の誤解』を読みました。 佐野洋の作品は、『ミステリー傑作選・特別編〈5〉自選ショート・ミステリー』に収録されていた『若いオバアチャマ』以来なので、約1年振りですね。 -----story------------- 息子に届いた絵葉書には、怪獣のように大きな蝉の抜け殻が...続きを読む写っていた。 パソコンを使い、巧妙に作られた合成写真―その夜、私は悪夢にうなされた。 なぜ、蝉の抜け殻などに恐怖を覚えるのか? 私は、心の奥底に封じ込まれていた、ある記憶を辿り始める…(表題作)。 昆虫に題材を取り、紡ぎ出された男女の多様なドラマ九編。 ----------------------- 光文社が発行している小説誌『小説宝石』に2000年(平成12年)から2002年(平成14年)に掲載された、昆虫の生態に材を取った連作小説9篇が収録された作品です。 ■蟻のおしゃべり ■カマキリの本音 ■ミドリシジミの知恵 ■蝉の誤解 ■飼われた蜻蛉 ■蓑虫の計算 ■玉虫の意志 ■蝿の美学 ■蚊の証言 ■解説・勝目梓 読みやすくて、切れ味が鮮やかな作品が多かったですね… そんな中でも、男女の関係・愛欲に昆虫の存在を織り込んだ『蟻のおしゃべり』、『ミドリシジミの知恵』、『飼われた蜻蛉』、『蓑虫の計算』が印象に残りました、、、 カマキリという共通したキーワードを絡めつつ夫と妻と子が別々な夢想をする『カマキリの本音』や、心理の深層に眠る記憶が、過去の不幸な出来事を明らかにする『蝉の誤解』も面白かったですね。 愛憎や欲望に根ざす計算、策略… 人間の営みの断面を鮮やかに切り取った連作ミステリでした。
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