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ポスト戦後の精神史
数は減ったとはいえ、学者になりたい人は一定数いるはずだ。本書はそうした人たちに向けて、学者のなり方、職業としての学問を説く試みである。
磯前さんは静岡大学の歴史学科を卒業して、生まれ故郷の茨城で高校教師になったものの、学者になることをあきらめきれず、勉強し直して、東大院の宗教学専攻に入ったという変わり種だ。
高校教師として働きながら(そして、結婚して子どもを抱えながら)の大学院受験は一筋縄ではいかず、語学学習のやり方からはじまり、東大や京大の大学院をさまざま受けた(落ちた)ことまで赤裸々に語られている。
磯前さんの進学先とその時代が、この本を単なるハウツーや体験記を超えたものにする。
磯前さんは東大院で島薗進さんに師事した。このことが人生を大きく変えていく。そして当時、東大宗教学は、スピリチュアルやニューアカに乗じて、スターを輩出しつつあった。
こうしたブームは、オウム真理教事件によって無残に瓦解した。磯前さんは事件以降、宗教学批判を展開し、酒井直樹さんらと意気投合してポストコロニアル研究に向かう。本書はこうした一大転換の貴重な記録にもなっている。
【目次】
はじめに 学者って何者?
第一章 書物が友だちだった――私の生い立ち
少年探偵団と活字の匂い/ドリトル先生物語/キリストの死
古代の息吹
第二章 学問への目覚め――シラケ世代の悩み
いつでも音楽があった/放任主義とシラケ世代
マルクス主義歴史学と感情/ロンドンと異星人
第三章 修行時代――自立という課題
高校教師失格/大学院受験/大学院合格/東大助手になる
第四章 大学教員という仕事――意気揚々の時代
オウム真理教事件/資料の公開/国際学会/ロンドンの闇
第五章 国際日本研究――ひとつの回心
ハーバード滞在/国際日本研究文化センター
東日本大震災/ザ・タイガース
終章 世界が自分の家だから
あとがき――存在の語りのあわいに
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