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13世紀初頭、コイ・コンボロ王の改宗以来、ムスリムの町としての歴史を刻み、今や多民族が共生するジェンネの暮らしを読み解く。
わたしは、二〇〇七年から二〇一〇年はじめにかけて計二年、ジェンネに暮らして人類学の現地調査をおこなった。研究のおもなテーマは、多民族が生きる都市ジェンネで、人びとがどのようにそれぞれの民族性を再生産したり、生業の住みわけをおこなったり、民族内・多民族間の紐帯を形成してきたのか/いるのか、である。本書では、そうした調査のなかでわたしが見聞きしたことと、町の歴史や日々の生活について町の人が聞かせてくれた語りを紹介していく。ジェンネのことばで、おしゃべりや語りのことを「ワンダス」という。きょうの天気についての友人との会話も、ジェンネの数百年の歴史を語ることも、同じことば「ワンダス」であらわされる。ジェンネの人びとのさまざまなワンダスを通じて、「アフリカ賛歌」でも「アフリカの惨状を訴える」のでもない、過去をもち現在を生きる同時代のアフリカの一都市のありようを示すことができればと考えている。(本文より抜粋)
【目次】
はじめに
一 ジェンネとは
1 ジェンネの概要
2 ジェンネへ
二 過去のジェンネへ
1 ジェンネ・ジェノ
2 ジェンネの興り
3 ジェンネのイスラームことはじめ
4 ソンガイ帝国とモロッコの「名残」
5 ジェンネの大モスク三代記
6 「チュバブ」の支配
三 ジェンネの街角
1 飛び交う多言語
2 路地に広がる人びとのネットワーク
3 目に見えぬもの
4 過渡期のジェンネ
おわりに
【著者】
伊東未来
大阪大学大学院博士前期課程修了。
現在、大阪大学大学院博士後期課程在籍。日本学術振興会特別研究員(DC2)。
主な論文に「社会に呼応する同時代のアフリカン・アート─マリ共和国のアーティスト集団カソバネを事例に─」(『アフリカ研究』第75号、2009年12月、17-28頁)、「イスラーム「聖者」概念再考への一考察─マリ共和国ジェンネのalfaを事例に」(『年報人間科学』第30号、2008年3月、83-100頁)などがある。(2014年現在)
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