川喜多長政 映画を産業に育てた日本人

川喜多長政 映画を産業に育てた日本人

3,300円 (税込)

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この人がいなければ、日本人がヨーロッパの名画にふれることはなかったかもしれない。
この人がいなければ、日本人とチャップリンとの幸福な出会いはなかったかもしれない。
この人がいなければ、日本の映画産業は現在のようではなかったかもしれない。

洋画輸入配給会社(現在の東宝東和)の創業経営者を越えて、日本における映画の地位を高め、大きな意味での映画産業の確立に尽力した川喜多長政の初の本格的な評伝である。川喜多記念映画文化財団が全面協力、財団が秘蔵する特に戦前・戦中の貴重な資料・史料・証言も盛り込み、スケールの大きな希代の映画人の全貌を明らかにする。
その審美眼で良質な洋画(特にフランスなど欧州映画において)の伝道者として国際交流に生涯を捧げた「マダム・カワキタ」こと妻・かしこの名は世界に轟く。その活動を支えたのが経営者としての川喜多である。川喜多は優れた日本映画の輸出も目指し、戦前・戦中・戦後を通して国際合作映画の製作にも乗り出した。戦後は数々の公職に就き、映画界の地位向上、産業としての基盤づくりに尽力する。
本書の最大の読みどころは戦中の上海時代である。日本占領下の上海につくられた軍部の宣撫工作のための映画機関の経営。甘粕正彦の「満映」と対照的な「中華電影」時代の川喜多は、現地の映画人と共存することが和平につながると信じていた。過酷な状況の中でも揺るがぬその信念が戦後、一経営者をはるかに越えたスケールの大きな活動につながっていくことが見て取れるであろう。

【目次】
第1章 映画の発見
第2章 上海と中華電影
第3章 映画産業を育む

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