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日本人初・女性初のUNHCRの高等弁務官として10年間、世界中の紛争地をめぐり、難民支援に携わった、緒方貞子の生涯をたどる。
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Posted by ブクログ
大変難しい話だったし、崇高な行いで無知な私には理解不足な箇所も多々あったが、とにかく心に響く内容だった。読んでよかった。
緒方貞子さんは63歳でUNHCRの国連難民高等弁務官に就任した。私たちはその頃からの彼女の働きを聞いたりしているが、教育者としても優れたパワフルな人だったと知った。リーダーとはみんなの意見を聞きみんながついてこれるようにグループをまとめる能力が大事なのです。心に響く言葉である。
【現実と希望】 著者は、緒方貞子さんのパーソナル・アシスタントを務められた中村恵さん。 ジュネーブのUNHCR本部で勤務していたときに、 緒方さんがUNHCR事務局長として就任。その後緒方さんが10年間の勤務を経て退任後に、 中村さんはパーソナル・アシスタントに抜擢されたとのこと。 緒方さんは2...続きを読む019年に亡くなられましたが、 著者は書きたいという意向をご本人に伝えた矢先に亡くなられたそうです。 国際舞台で大活躍された緒方さんのバトンを受け継ぐ、という思いが込められた本でした。 ・・・ 緒方貞子さんについて。 犬養毅を母方の曾祖父に持つ彼女は、3歳から8歳までアメリカで過ごす。 父は外務大臣を務めるなど、外交官として戦前ご活躍されていたため。 1932年の5・15事件のときは、緒方貞子さんは5歳で在アメリカ。 とくに彼女の生き方に影響を与えたのは、 日本最初の女子大学の一つ、初代聖心女子大学学長マザー・ブリット。 かなり人格に優れた方であったようです。この大学での同僚には須賀敦子さん、渡辺和子さんなどもいると紹介されていました。 33歳で結婚した夫は、日銀で国際金融をご専門にアメリカなどでご活躍されていました。 __緒方を取り巻く人脈には、 日本の戦前から戦後をリードしてきた「ハイ•ソサエティ」とも呼ぶべきエリート集団のネットワークがありました。 緒方自身もいわゆるお嬢様育ち戦の教養、 センスが身についていたといえるでしょう。(本文より) 最強の善エリートですね。 そういう風に育った方もいるのだなーと思いました。 ・・・ ・国際協力、人道支援。 現場に出て、現地の人々からの言葉で、ただそこに来ているということこそが、生きる希望になる、ということが書かれていました。 自分たちは見捨てられていない、と感じられるから。 それは、人間に対する希望でもあるのだろうと思いました。 同僚との間でも、 個人的に知り合うことで否定的な対日イメージが払しょくされた、というエピソードがありました。 今日は、国境を越えて、デジタルでも、みなとつながることができる社会ですが、 それでも逆にネガティブな偏見を抱いたり、分断が絶えない社会でもあります。 やっぱりひとりひとりが国や文化といった人類のカテゴリーを越えて関わる際には 責任を伴うこと、 そしてそこには、人間への希望を生むポテンシャルを皆が持っているのではと思いました。 国境を越えてチームを組み、場所を問わず支援を必要とする人に手を差し伸べることを仕事とする、あるいは国際協力に携わる意義も、 そこにある部分が大きいのでは、とあらためて感じました。 人道支援とはー生きてもらう、に尽きる、と。 共に生きる人間としての連帯感を持ち続けてほしい、と伝えられていました。 緒方さんはまさに、連帯感の実践者でした。 ・・・ ・責任。 著者が、責任という日本語について書かれている部分がありました。 責めるという印象が強い言葉ですが、訳す前の英語だと応答する能力、みたいなこと。 私も責任感をきちんと持ちたい、ということについて時々考えることがありますが、 自分に与えられたもの、立場に応えることともいえる。 だから、自分の立場、役割をきちんとわきまえることが不可欠。 緒方さんという、真の国際人を前に、 国際社会に貢献するとは何なのか、を自問している著者の日記の文章が印象的でした。 __結局、一人の人間がさまざまな生き方を同時にすることはできないし、さまざまな場所に生きることもできない。この世は一人ひとりで成り立っていて、また、日本という国もこの世界の一翼を担っている。私は日本人として生まれたからこそ、日本に責任があるし、この社会をより良くすることで世界を良くすることに貢献したい。 自分に責任を持っと同時に、自分が属する社会に責任を持つことも大切だ。 私にも何等かの役割があり、私にしかできないことを実践していく責任がある。 (本文より) どんな国際人にもそれぞれのルーツがある。 だれも抽象的には存在しえない。 自分を主語とする地に足をつけた取り組みが、自分の人生に責任を持つことでもあるのかと思いました。 また、 緒方さんが、他者の苦痛、恐怖を感じ、怒りにより動かされることを述べていました。 人は愛や感謝からエネルギー源を得る、という話が前に読んだ本でありましたが、 何かに自分が応答しようとするときに生まれる感情がエネルギーになるのかもしれません。 そして緒方さんの中で生まれるエネルギーは、善の方向に世界を動かすことに尽くされる。 ・二面性。 緒方さんの、 2つの国連ー指令するNY、動く現場ーという二面性。。 国と国の協調を工夫するのか国連、ただのチャリティではない、様々な事象のバランスによって世界が成り立っていることを教えます。 政策決定過程論のご研究時から、力学の視点が際立っていて、 その高度な思考を繰り返し用いてきたから、バランス感覚が傑出しているのだろうと思います。 次から次へと起こる危機や紛争に直面しても、 世界への無力感や絶望に飲み込まれないのは、 ただ理想を信じているのではなく、 いかに両側面の持つ力に能動的に対応するかを考えている。 だから、希望を失わない、現実逃避もしない。 政治や軍とも協力し、支援対象外であった国内避難民、帰還民も支援する。 数々の決断の裏にある、ぶれない軸、世界観を少し知ることができました。
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難民に希望の光を 真の国際人緒方貞子の生き方
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中村恵
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