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現代哲学を「政治的正しさ」の呪縛から解放する快著
──帯文・東浩紀
ポリティカル・コレクトネス、差別、格差、ジェンダー、動物の権利……いま私たちが直面している様々な問題について考えるとき、カギを握るのは「道徳」。進化心理学をはじめとする最新の学問の知見と、古典的な思想家たちの議論をミックスした、未来志向とアナクロニズムが併存したあたらしい道徳論。「学問の意義」「功利主義」「ジェンダー論」「幸福論」の4つのカテゴリーで構成する、進化論を軸にしたこれからの倫理学。
哲学といえば、「答えの出ない問いに悩み続けることだ」と言われることもある。だが、わたしはそうは思わない。悩み続けることなんて学問ではないし、答えを出せない思考なんて意味がない。哲学的思考とは、わたしたちを悩ませる物事についてなんらかのかたちで正解を出すことのできる考え方なのだ。(…)
この本のなかでは、常識はずれな主張も、常識通りの主張も、おおむね同じような考え方から導きだされている。それは、なんらかの事実についてのできるだけ正しい知識に基づきながら、ものごとの意味や価値について論理的に思考することだ。これこそが、わたしにとっての「哲学的思考」である。(…)倫理学のおもしろさ、そして心理学をはじめとする様々な学問のおもしろさをひとりでも多くの読者に伝えることが、この本の最大の目的である。(「まえがき」より)
【目次】
■第1部 現代における学問的知見のあり方
第1章 リベラルだからこそ「進化論」から目を逸らしてはいけない
第2章 人文学は何の役に立つのか?
第3章 なぜ動物を傷つけることは「差別」であるのか?
■第2部 功利主義
第4章 「権利」という言葉は使わないほうがいいかもしれない
第5章 「トロッコ問題」について考えなければいけない理由
第6章 マザー・テレサの「名言」と効果的な利他主義
■第3部 ジェンダー論
第7章 フェミニズムは「男性問題」を語れるか?
第8章 「ケア」や「共感」を道徳の基盤とすることはできるのか?
第9章 ロマンティック・ラブを擁護する
■第4部 幸福論
第10章 ストア哲学の幸福論は現代にも通じるのか?
第11章 快楽だけでは幸福にたどりつけない理由
第12章 仕事は禍いの根源なのか、それとも幸福の源泉なのか?
終章 黄金律と「輪の拡大」、道徳的フリン効果と物語的想像力
Posted by ブクログ 2022年07月30日
著者はアカデミアに属さない在野の研究者とのこと。そのこともあってか、業界で正解とされる答えから逆算したような解説ではなく、著者自身が自分に対して確かめながら書いているような書きぶりが印象的。特に幸福論のところでユーダイモニアとヘドニズムを対比させながら議論している所で、ユーダイモニアに軍配をあげなが...続きを読む
Posted by ブクログ 2022年01月25日
道徳や倫理ときくと、どこか捉えどころのない、感情的で普遍性のないようなものにかんじるかもしれない。
だが本書を通じて、道徳や倫理は、共感や想像力などの感情的な要素だけでなく、科学的で抽象的な推論や思考、論理があることによって生まれ、認識され、実践されるものだということを、改めて認識させられた。
...続きを読む
Posted by ブクログ 2022年05月24日
面白かったです。
特に「仕事と幸福」のトピックに関して、自分の考えにかなり偏りがあったことを自覚しました。
これまで自分が親近感を持って受け入れていた左派的な考え方の中にも本当に自分の人生に取り入れるべきか、疑わしいポイントが少なからずあることがよくわかり、バランスを取ろうという意識を強めるきっかけ...続きを読む
Posted by ブクログ 2022年01月18日
ブログがもとになった本なので当たり前といえば当たり前だけどブログ、あるいは居酒屋で聞く人文学の知見が豊富な友人の話、くらいの感覚。左翼のやりがちな弁論、ポリコレ批判、といったあたりはちょっと面白いと思ったけど、わざわざ哲学者の言を引用してまで言うようなことか?と思われるような月並みな議論であったり、...続きを読む
Posted by ブクログ 2023年07月30日
進化の歴史「~である」から、規範「~すべき」は導けない。
人文学は、民主主義の健全な機能のために批判的思考や想像力を養うという目的のもと必要である。
倫理的な判断は、自分が欲しいと思っている証拠ではなく、自分が手にしている証拠に基づいて行わなければならない(ラムズフェルドの返答)
左派は権力を批判す...続きを読む
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