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王に抱かれることで、書物を守る男がいる。
それは忠誠でも恋でもない。
支配から始まる関係は、やがて心を侵す。
――その契約は、愛より重い。
国王の私室へと続く隠し階段を、司書長アルトゥは知っている。
それは栄誉ではなく、図書館を存続させるために結ばれた、ひそやかな「密約」の証だった。
王都の尖塔にそびえる大図書館。
そこには大陸の歴史と叡智、そして滅びた王国の記録までもが眠っている。
司書長アルトゥは、そのすべてを未来へ残すため、己の尊厳すら差し出すことを選んだ。
血に濡れた政変の夜、新たに王位に就いたのは、冷酷無比と噂される男――ヴァルト。
剣と暴力によって秩序を塗り替えた「紅の王」は、書物を害悪と断じ、図書館の破却を宣告する。
絶望の中でアルトゥが差し出したのは、知でも命でもなく、その身だった。
「図書館のために、その身を差し出せるか」
かくして結ばれた、王と司書の歪な契約。
それは屈辱と支配に満ちた夜を重ねながらも、やがて互いの価値観を静かに侵食していく。
暴力で国を統べる王と、知によって世界を守ろうとする司書。
触れ合うたびに暴かれるのは、身体だけではない。
憎しみと欲望の奥に潜む、孤独と信念が、やがて二人を逃れがたい運命へと導いていく。
――書物を守るために身を売った男は、
果たして、王の心を、そして未来を書き換えることができるのか。
血と香油の匂いが交錯する王城で紡がれる、
知と権力、支配と献身が絡み合う文芸BLファンタジー。
※本作は七瀬京の個人誌作品の電子書籍版となります。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
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