これは、個人的ヒット作。Audibleで軽く読めるビジネス書だが、私には刺さった本。本書では、フィードバックではなく、「フィードフォワード」を提唱・推薦する本。
フィードバックというのは、もともとシステムの制御工学上で生まれた概念であり、過去に起きたことから現在に対してメッセージングを行う。それに対して、フィードフォワードは、理想的な未来を思い描き、そこからメッセージングを行う手法。
フィードバックの問題点は、自身の失敗や過ち、できなさを指摘されることから、フィードバックを受ける側の自信や、やる気をそいでしまうことにある。どれだけ、あなたを否定するわけではない、という枕詞を重ねたとしても、認知科学上、気持ちを沈ませてしまう。
それに対して、フィードフォワードでは、理想的な未来、なりたい自分、なりたい状態を一緒に考える。こんな風になっていたらいいな、こんな風にできたらいいな、というビジョンを一緒に示し、それに近づくためにはどうすればいいのか、ということを問い、メッセージングしていく手法である。レシーバー(フィードフォワードされる側)は、フィードバックと比べて、前向きな気持ちが醸成され、自分はできる、という気持ちで日々を歩んでいくことができる。
まさに、私は現職において、リーダーとしてチームの皆にフィードバック、耳のいたいことを言う立場であった。なかなか成長しないメンバーに対していら立ちを覚えることもあった。そのもどかしさ、難しさに対して、本書は一定の解を示してくれたように思う。仮にフィードバックするとしても、フィードフォワードがセットにしたい、というのが私の思いである。フィードバックはできなかった事実を指摘され、その事実を認識し、それについては修正しよう、という思考プロセスになりがちである。ただ、人間というのは、本質的につらかった過去の直視を避けようとするものだ。それは、生存戦略そのものである。そのため、相手への成長を願ったメッセージングが、相手にとってつらいもの、自分のできなさを直視するものである場合、おそらく、無意識的に人は、その事実を忘れようとする傾向にあると思う。だから、フィードバックでは、なかなか成長しない。
大切なのは、メッセージングをするときに、相手にとって、ポジティブな道筋であるということを伝えることだと思う。ミームにもなっているような「伸びしろですね」といった認知をレシーバーに持ってもらうほうが、結果的には、フィードバックよりも、成長してもらいやすいのではないかと思う。
本書で紹介されている概念は指導法としてはユニークな印象で、やはり人間教育、コーチングといった分野でも専門性のある人のコンセプトはおもしろいなと思った。この考え方で組織運営をできている通常の事業会社であれば、尊敬に値する。
今後、私が他メンバーに対してメッセージングを行うときは、魅力的な未来やビジョンを示すようにしたい。
たとえば、◎◎さんには、~できるようになってほしいと思っています、 とか、チームとして、~なことは大切にしたソフトウェア開発を行っていきたいと思っている、など。