朱川湊人のレビュー一覧

  • 白い部屋で月の歌を
    『鉄柱(クロガネノミハシラ)』が特に好き(表題作も好きだが)。この世の理では説明できないもの(小説上の道具)を巧みに物語世界に落とし込んでいる。1冊の文庫としてかなりの完成度だと感じた。
  • なごり歌
    朱川湊人の一番得意なボールをど真ん中に真っ向勝負で投げてきたような短編集。舞台は昭和中期から後期のマンモス団地。団地があこがれだった時代から古くさくなる半世紀弱。

    それぞれの物語が少しずつリンクして、短編集を読み終わったら全体の俯瞰構造がうっすら見え出すという構成を仕組み。

    ひとつひとつの短編に...続きを読む
  • 幸せのプチ
    懐かしさと切なさと温かさで胸がぎゅっとしながら最後まで一気に読ませていただきました。琥珀は架空の町ですが、本のなかでこの先もいろんな人生を抱きながら続いていくような気がします。
    2020.6.6
  • 幸せのプチ
    正直に書きます。
    初めの一章を読み終える頃は、この本選んで失敗だったかなと思ってしまいました。。
    でも、それは私の大間違い。
    読み終えた頃には、私の大切な一冊となり、本棚にずっと存在するであろう本になりました。
    私はこの時代には生きていなかったけど、こんなに懐かしいのは何故だろう?
    コロナ終息後は、...続きを読む
  • 妖し
    あまり「妖し」じゃなかったんですが
    一番良かったのは
    窪美澄先生の 「真珠星 スピカ」
    死んだ母親が娘を こっくりさんを使って
    守る話で 愛情に不意打ちされて
    かなり泣けました さすが
  • かたみ歌(新潮文庫)
    読んでよかった。
    短編集になってるけど、繋がっていて読みやすかった。
    私のように、普段小説読まない方にお勧めできます。
  • 都市伝説セピア
    高校1年の時に読み、ここに収録されている『アイスマン』が好きすぎてオマージュした小説を書いてた思い出がある。懐かしい。あれから12年経ち、再読。やっぱり『アイスマン』が好きだ。
  • 白い部屋で月の歌を
    第10回ホラー小説大賞の短編賞受賞作の表題作。

    白い壁、白い柱、白い床の何もない部屋。鈍い銀色の天井から巨大な鉗子で人を掴む…なんだこれは?と最初設定に不安を覚えたが読み進めるうちにすぐに解決。

    朱川さん、グロめホラーを書かれてもどこか品がある。やっぱりいいなと改めて感じた。

    表題作の他に「鉄...続きを読む
  • 無限のビィ上
    列車事故大惨事で知られる街で、信吾は知的障害を持つ弟を慈しみ守りながら元気に暮らしていた。だが、新しく赴任してきた水島先生の手に触れた日を境に、周囲で不可解な事件が続く。悲劇の連鎖はいつしか街全体を呑み込み…。

    国鉄戦後五大事故の一つ三河島事故をモチーフにしたSF作品。朱川湊人らしく昭和30年代の...続きを読む
  • 鏡の偽乙女 薄紅雪華紋様
    大好きな作家ですが、ここ数年読んだ作品にイマイチ気持ちが乗らず、しばらく遠ざけていました。しかし仕事で近代の新聞連載小説等の挿絵を見る機会が多く、積読の山の中にあった本作は大正時代の画家が主人公だからまさにピッタリで。久しぶりにこれが私の好きな朱川湊人だと思えました。

    この世に未練があるせいで成仏...続きを読む
  • わくらば追慕抄
    「わくらば日記」に続く、わくらばシリーズの続編。

    人や物の記憶を「見る」ことができる姉と、活発な性格の妹。そんな姉妹が知り合った刑事や関係者たちと、難解な事件を解決していくストーリー。

    短編のようにいくつかの物語が収録されているが、時系列で進んでいくので、ちょうど「日記」を読み返しながら回想して...続きを読む
  • わくらば日記
    幼い姉妹の周りで起きる不思議で、ちょっと怖い毎日。

    人や物が見た出来事の記憶を「見る」ことが出来る力を持った姉。優しく、しとやかで、体も心も傷つきやすい。

    そんな姉を思いやる元気な妹。

    姉が持って生まれたその不思議な力は、当然のごとく警察の事件解決に一役買うことになる。
    幼い姉妹の心の葛藤と、...続きを読む
  • わくらば日記
    昭和30年代の日本の下町を舞台に、ひとの記憶を垣間見る特殊能力をもつ鈴音(ねえさま)と、お転婆なワッコの仲良し姉妹の活躍を描くシリーズ。

    当時の風俗や背景が抒情たっぷりに描写されてノスタルジックな感傷に浸れる。

    ワッコの一人称で丁寧に回想される物語は終始やさしい言葉遣いで語られており、ミシンやテ...続きを読む
  • かたみ歌(新潮文庫)
    昭和40年代半ばの東京下町にある「アカシア商店街」で起こる摩訶不思議な物語。
    アーケードのついた長い道に、様々な店がぎっしり連なる昔ながらの商店街の一角にある、ある有名作家似の古本屋の主人を中心に人々と物語は交錯する。

    奇妙な「栞」の文通をしたり、あの世と繋がるお寺があったり、突然懐かしいあの子が...続きを読む
  • 花まんま
    昭和40年代の大阪の下町を舞台にした少年少女の短編集。
    読んでみると私の子供時代より少し上の世代で、当時のことを知らないはずなのに、何故かとても懐かしい。
    じわりじわり胸に染み込み、その頃にタイムスリップした感じ。
    懐かしさと切なさと、少し背筋が寒くなる怖さをあわせ持つちょっと不思議な物語。

    表題...続きを読む
  • 本日、サービスデー
    表題作である中編と、短編四編からなる作品集。
    とにかく表題作が感動的です。解説の北上次郎氏は、欧米の小説にたとえていましたが、自分は藤子・F・不二雄先生がいうところのSF(すこし・ふしぎ)作品だと思いましたよ。
    巻末の短編「蒼い岸辺にて」は藤子・F・不二雄作品と水木しげる作品をミックスさせたような感...続きを読む
  • 幸せのプチ ――町の名は琥珀
    やっぱり朱川作品はいい!人々の喜怒哀楽を閉じ込めた琥珀という名前の東京・下町を舞台にした連作短編集でした。各章にはかわいい白い犬「プチ」のイラストが。ところがプチは出てきたり出てこなかったり。でも住人達はみんなこの白いナゾの犬を知っています。私も東京下町生まれのせいか、読後は自分も琥珀の住人であった...続きを読む
  • 花まんま
    ノスタルジックなホラー6編から成る短編集。いずれも昭和30~40年代の大阪の下町が舞台です。

    1つめは「トカピの夜」。コの字型に並んだ長屋式賃貸住宅の一軒に暮らす小学生、ユキオ。袋小路の一番奥に住む朝鮮人兄弟とだけは、誰もがなんとなく距離を置いていたが、兄弟の母親に請われて、ユキオは病弱な弟チェン...続きを読む
  • 主夫のトモロー
    男が主夫として家庭を守り、主に子どもを育てることの楽しさと苦労が手に取るようによく伝わってくる。思わず吹き出してしまうようなところもあり、また、親子関係の複雑さも伝わってくる。楽しい1冊だ。
  • 幸せのプチ ――町の名は琥珀
    『琥珀』の場所はこの辺、とGoogle見ながら読みました。
    時間の厚みも重なって、本当にステキな街。