朱川湊人のレビュー一覧

  • 幸せのプチ ――町の名は琥珀
    都電が走るこの下町には、白い野良犬の“妖精”がいる-。生活感が溢れ、地味なくせに騒々しい迷路のような路地。そこに生き、通り過ぎた人たちの心あたたまる6つの物語を収録する。

    昭和40~50年代、地下鉄も都電も走る下町の架空の街(どの辺がモデルかはヒントが散りばめられているので何となくわかる)を舞台に...続きを読む
  • 幸せのプチ ――町の名は琥珀
    「琥珀」という町を舞台にした、しんみりほっこりする少し不思議な物語の連作。そこで生きる人たちそれぞれの物語が繋がって、あの人やこの人のその後がのちの物語で判明したりする部分も魅力的です。ノスタルジックで切なくて、レトロな雰囲気も読みどころ。
    お気に入りは「タマゴ小町とコロッケ・ジェーン」。こういう友...続きを読む
  • 満月ケチャップライス
    導入部から回想という形を採り、時代背景を現在から極端にシフトさせることなく、過去の大きな事件や流行りを背景設定に取り込んでいる。
    なので、その”過去”の方を体験している人の方が実感を伴って読めるだろうが、全く知らない人でも楽しめる作品になっているのではないかな、と思う。
    突然に表れた突飛な人物から、...続きを読む
  • オルゴォル
    (「BOOK」データベースより)
    「実は前から、ハヤ坊に頼みたいことがあってなぁ」東京に住む小学生のハヤトは、トンダじいさんの“一生に一度のお願い”を預かり、旅に出る。福知山線の事故現場、父さんの再婚と新しい生命、そして広島の原爆ドーム。見るものすべてに価値観を揺さぶられながら、トンダじいさんの想い...続きを読む
  • わくらば日記
    この世で一番悪いことは、人の命を取ることです。その次に悪いのは、信頼を裏切ることです。

    自分が信じられていることに、誇りを持ちなさい。信じられたからには、もう自分の体ではないのだと思いなさい。

    信じた方が悪いんだなんて、口が裂けても言ってはいけません。あなたを信じた人は、あなたを愛した人でもある...続きを読む
  • 鏡の偽乙女 薄紅雪華紋様
    評価は3.5といったところか。キャラクターは魅力的だが、描写が少々拙い。とはいえ著者の新境地、大正ロマンホラー(そこまで怖くはないが)として、今後に期待したい。
  • 黒のコスモス少女団 薄紅雪華紋様
    謎が残ったままなのだが、主人公の絵描きがただのルサンチマンでなくて、地に足のついた身の処し方を選ぶ結末を歓迎したい。
    雪華はおそらくみれいじゃだと思わせる部分がある。大正期の雰囲気がよく表現されているし、描写力もある。
  • 主夫のトモロー
    私もきっとこんな風に見てしまうのかも知れない。

    パパが毎日娘を公園に連れてくるのを見たら
    眉をひそめてしまうのかもしれない。

    事情も知らないのに、奥さんを働かせてと
    無責任な噂にのっかってしまうのかもしれない。

    後に奥さんになる美智子さんと
    人生のいいとこ取りをして、イッヒッヒと笑いあうために...続きを読む
  • 主夫のトモロー
    失業してしまったことをきっかけに
    専業主夫の道を選ぶことになった25歳のトモロー。
    男の人が家事・育児に専念するなんて・・・という好奇の眼差しの中
    子どもと共にしなやかに成長していく男子の物語です。
    25歳の男に成長という言葉は似合わないのかもしれないけれど、
    子育てって、自分の成長過程を追体験する...続きを読む
  • 主夫のトモロー
    朱川さんは短編しか読んだことが無かったので、長編だとこうなるのか。。

    あっと驚くオチは無いけれど、あれやこれやとどんどん問題が起こって、でもさらりさらりと纏められていて読みやすい。

    指南書、とまではいかなくても 子育てに行き詰っていたら、読むとほっこりしたり安心したりすると思う。
  • わくらば日記
    人や物がもつ記憶を読み取る能力がある“姉さま”とその妹“ワッコちゃん”。昭和30年代の東京を舞台に、人と人とのつながりや温かさ、少しの哀しみが沁みる連作短編小説。

    時を経て、40年ほど前の子ども時代を、ワッコちゃんが柔らかな語り口で回想するかたちでストーリーは展開していきます。盗難事件や殺人事件、...続きを読む
  • 黒のコスモス少女団 薄紅雪華紋様
    前作の冒頭から、昔の友、雪華を懐かしんでの語りという体裁をとっているから、もう戻らない時の話であるとは分かって読んでいるのだけれど、何とも切ない気持になる幕切れだ。
    前作は、怪しい体験も、なんだか若者の冒険ぽく、楽しげな要素も多かったのだが。

    『鬼蜘蛛の讃美歌』
    夢二経由で…西塔光児との出会い

    ...続きを読む
  • 銀河に口笛
    40代半ばとなった中年男性が少年時代のある時期に一緒に過ごした"謎の少年"との思い出を回顧するところから物語は始まる。朱川湊人お得意の当時の流行りや時代背景がマニアックに描写されており、空き地、探偵団、冒険、秘密基地等のキーワードは暗くなるまで遊び倒した"あの頃"を痛烈に思い出させる。子供同士の絆...続きを読む
  • 白い部屋で月の歌を
    2話目の話はとてもおもしろかったが、1話目がそこまで面白いと思えなかったので一応☆4つ。
    2話目は世にも奇妙な物語に出てきそうな話で、どうなるか予想もつかない展開だった。
    学会先に持っていき、移動時間で読んでいたが、いい暇つぶしにはなった。
  • あした咲く蕾
    全編ハズレ無しの短編集。読後感はとても良く優しい気持ちにさせてくれる。同じ時代背景では無く大阪万博の頃やバブル期等バラバラではあるが特に違和感は無い。『わくらば日記』の様なちょっと不思議な能力を持った人や不幸な生い立ちを持った子、グレて道を外しかけた子、魂持ったフライパンを煽る中華屋の...続きを読む
  • なごり歌
    昭和40年代後半から50年代にかけて、マンモス団地を舞台にした7編からなる連作短編集です。
    全て優しさと哀しさ、ちょっぴりの不思議感に満ちた、まさにこれぞ朱川湊人ワールド。個人的には「ゆうらり飛行機」が好きですね。
  • 水銀虫
    この後味の悪さは最高だ。本作は夕日の三丁目的な世界観は更々無い。人の執着心や憎しみ等、醜さや汚さで埋め尽くされたオールブラック朱川湊人なのだ。タブーを犯す時にモゾモゾと体中に蠢き回る水銀虫。この作品のテーマでもある、してはいけない事、つまり罪を犯した人間にとりつく恐怖と後悔が上手く描かれ、狂...続きを読む
  • なごり歌
    色々な運命を背負い、色々な生き方をしてきた人達が寄り集まっていた"アノ頃"の団地を舞台に切なくホロ苦い話が取りまとめられた連作短編。本作で恐らく著者が言いたいのは、『人生生き急ぐのでは無く、時には息を抜き空を見上げ、過程そのものの美しさや素晴らしさを感じるのも大事だよ』ではないだろうか。♪人生は〜紙...続きを読む
  • 黒のコスモス少女団 薄紅雪華紋様
    朱川さんらしい不思議なお話。
    雪華と風波、どちらも魅力的。
    雪華の謎が、少しは明かされるのかと思ったけど、彼はあいかわらず謎のまま(笑)
    夢路のような実在の人物が登場することで、なんだかこの不思議な現実と確かに地続きのような感じがする。
    登場人物を、どんどん検索してみたりしちゃった(笑)
    西塔は、と...続きを読む
  • わくらば日記
    昭和30年代東京下町が舞台。活発少女の主人公、礼儀に厳しい母、不思議な能力を持つ姉、姉妹の様な茜ちゃん、交番のおまわり秦野さん、爬虫類顔の神楽刑事、全てのキャラが魅力的で心が温まる。今現在の主人公が過去の"アノ頃"を語り口調で振り返る連作短編だが、既に姉は若くして亡くなっているという設定により終始懐...続きを読む