朱川湊人のレビュー一覧

  • あした咲く蕾
    「ツカサもチィちゃんも、よう覚えときや。この世にはな、死ぬほどのことは何もあらへん。辛いのも苦しいのも、時間がたったら忘れられるもんやで。だから何があっても、自分で命を捨てるようなことをしたらアカンのや。」

    「弘美ちゃん・・・正しいと思ったことをする時は、変にためらっちゃダメだよ。人の命に関わるよ...続きを読む
  • 鏡の偽乙女 薄紅雪華紋様
    続編の刊行に合わせての再読。

    不思議な力を持つ雪華。
    画家志望の友人風波。
    不思議で、ちょっと怖いけれど、切ないお話。
    みれーじゃの存在の悲しさ、痛ましさ。
    死の間際、特にそれが突然であれば、果たせなかったことに執着してしまうことだってある。
    悲しいことだけど。
    それを利用する蒐集家とは、どういう...続きを読む
  • わくらば日記
    最近僕の中で重要になりつつある朱川湊人さん。昭和レトロを愛する者としては捨てては置けない作家です。今回もやはり昭和、30年代なので僕は生まれていませんが、この空気感はとても落ち着きます。

    人の記憶が映像として見える美貌で病弱な優しい姉。活発で姉を慕う愛嬌のある妹。10代の多感な時期を共に過ごし、姉...続きを読む
  • なごり歌
    巨大団地を舞台にした懐かしさ一杯の、連作短編集なのだけれど、読み出して最初の話「遠くの友達」に出てくる「雷獣」に驚いた。
    ついさっきまで読んでいた山本周五郎の短編集「人情裏長屋」で仲の良い籠かきの喧嘩の原因になったのものひとつが「雷獣」だったのです。
    二つの作品に関係がある訳ではないのですが面白い巡...続きを読む
  • 黒のコスモス少女団 薄紅雪華紋様
    連作短編6編
    「みれいじゃ」という哀しい存在になりたいという破天荒な画家惣多を見つけてしまう風波.なんとも言えない気持ちになった.1話1話話が進むうちに,時が過ぎ事情も変わり,いつまでも青春をしていられなくなる.
    雪華の過去が少しわかりかけてきたので,次巻が出ると信じてます.
  • 赤々煉恋
    朱川湊人がノスタルジー色を抑えて、ホラーと幻想を押しだしたら、こういう短編を書くのだなぁ、とある意味感心した1冊。古き良き郷愁を存分に味わいたい人にとっては、この本は外れなんだろうな。実際評価も割れているようである。

    俺は、これはこれでアリだと思う。こういうのが読みたくない気分の日もあるんだけど、...続きを読む
  • なごり歌
    巨大団地が未来と希望の象徴だった昭和の時代。今を生きる人と過去の人、そして不思議な生き物『雷獣』。必然と偶然の交流がさわやかな感動をよぶ連作短編集。
    お気に入りは「ゆうらり飛行機」。速さや高さを求めることなく、ゆっくりゆっくり、全部ゆっくりとその道を進もうと、主人公を諭す老人の言葉から奇跡が起こる。...続きを読む
  • 本日、サービスデー
    朱川湊人さんの本、先日、2015.6発行の「今日からは、愛の人」を読みました。猫の家を営むデリヘル嬢のところに男5人がやっかいになってる話で、セクシーな女性の魔女とちょっととぼけた男性天使が登場したりで、奇想天外な物語でした。読後、この本が2009.1刊行、2011.11文庫化の「本日、サービスデー...続きを読む
  • 水銀虫
    ホラー短編集。
    枯葉の日:全体的に暗いトーン(季節の描写含む)、確かに内容も暗いものだったけどわたし的には最後に救いがあったように思えたかな。きっと彼は彼女を殺してあげた。殺すことが大事なのではなく、その願いに気づき叶えてあげたこと。彼女はこれでやっと解放される、その自由にわたしは共感できたんだと思...続きを読む
  • 都市伝説セピア
    「昨日公園」の映像化から。

    短編集で他作品が結構ダークなので ん?と思ったが「昨日公園」もラストは原作だとこうなのか。。
    ナルホド。。。
    「フクロウ男」が文章ならではの技法と、作中でも触れているが江戸川乱歩っぽくて好きだった。

    「いっぺんさん」のようなほのぼの系の作風だと思っていたので驚いたが、...続きを読む
  • 黒のコスモス少女団 薄紅雪華紋様
    薄紅雪華紋様シリーズ2作目。
    朝でも昼でも夜でも、まるで逢魔時のような妖しさ。
    前作に比べて衝撃は少ないけれど、ピタっと吸い付くような何とも言えない落ち着き、なれ合った感じが良い。
  • 黒のコスモス少女団 薄紅雪華紋様
    大正時代の東京。画家を志す槇島風波は裕福な家を出て、風変わりな友人・穂村江雪華と同じ下宿に暮らしていた。
    天才的な画力を持つ雪華は、さまよう魂を絵で成仏させる不思議な力の持ち主でもある。巷では、何者かが一人歩きの婦女子を縄で縛り上げ、金品を奪う「鬼蜘蛛事件」が起きていた。
    妹の友達の護衛を引き受けた...続きを読む
  • 都市伝説セピア
    「世にも奇妙な物語」の傑作復活編で「昨日公園」をみたので再読。やはり「昨日公園」以外も傑作ぞろいの短編集。怖いのに哀しくて美しい「フクロウ男」。エキスポシティオープンのニュースを聞きながら「月の石」を読んで感慨深かった。
  • 満月ケチャップライス
    公園の遊具から落ちてケガをした妹…
    母は呟いた…「運の悪い子」

    ある日突然、家に現れた、怪しいけれどなんだかユーモラス、そして家事に堪能な謎の男“チキさん”
    彼の一生こそが、まさに「運の悪い子」なんじゃないか?

    中学生だった「僕」の一人称で語られているから、ほんわかした雰囲気で、チキさんの作る美...続きを読む
  • 太陽の村
     飛行機事故が原因で理解不可能な不思議な村に入ることになった主人公の話。大半はコメディタッチで進み、シモネタも含んだギャグも満載のエンターテイメント小説である。
     作者は私の同級生であり、作中に散りばめられる小ネタ的なギャグもいちいち分かってしまうところが面白い。最後になって明かされる秘密は夢オチで...続きを読む
  • 満月ケチャップライス
    表紙と題名に惹かれて購入。

    温かくも切なさが残る読後感でした。
    チキさんはあの家族の中にいて幸せだったのだろうけれど、幸せになって欲しかったと思わずにはいられない。

    せめて最後、亡くなる前に再会してほしかった。2人に会いに来て欲しかった。

    現実はそううまくはいかない、それはわかってはいるけれど...続きを読む
  • 白い部屋で月の歌を
    朱川湊人を初期作品からおいかけて読んでみようと思い手に取った本。

    表題作は角川ホラー大賞短編賞を受賞している作品。
    うん、上手い。荒削りではあるものの(特に主人公の正体やそれが暴かれる描写あたりはかなりザツいと個人的感想)文章は美しくてやるせなくて、澄んでいるかと思えば淀み、血の匂いがするかと思え...続きを読む
  • わくらば追慕抄
    同じ能力を持つ謎の女性が現れて、姉とは全く違う使い方をすることで人に不幸を与えていき、二人の過去も匂わせます。疑問は残されたままいつものように姉の力で問題を解決していきますが、最後もまたその女に邪魔をされ、あまりすっきりしない終わりで、次回もこのようにたびたび邪魔されていくのか、そして姉があまり長く...続きを読む
  • 都市伝説セピア
    Q:口裂け女に出会って「私きれい?」って聞かれたらどう答える?
    A1:「きれいです」→これでもかぁとマスクを外したら、裂けた口が見えてその口で頸動脈食いちぎられて殺される
    A2:「不細工です」→鎌で口を割かれた後、殺される

    で、どうせ死ぬなら「そんなに殺したいか、かかってこんかい」とタイマン張る。...続きを読む
  • 鏡の偽乙女 薄紅雪華紋様
    浪漫香る大正時代の雰囲気なんかはとても好きですが、雪華の核心に迫らず続く感じなのでちょっと不完全燃焼。