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おすすめサバイバル漫画17選!生き抜く力を漫画に学べ!

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サバイバル漫画 バナー

※2020/06/09に『惑星クローゼット』『血海のノア』『SOCIAL SURVIVAL RABBITS ソーシャル・サバイバル・ラビッツ』を追加しました。
災害列島と呼ばれる日本。もしも天災に遭ったらどうやって身を守ればいいか、誰もが一度は考えることでしょう。

サバイバル漫画には、ライフラインを絶たれた街がどのような状態になるか、そんな時に周りにある物をどう利用すればいいかなど、非常時に役立つヒントが詰まっています。また、エンタメ要素としての危機を脱するスリリングな展開や、極限状況で理性を失った人間の恐ろしさ、逆に人間性の気高さや尊さなど、漫画の醍醐味も味わえます。サバイバルのハウツーものとして読むのも良し、非日常気分に浸るのも良し、な秀作の数々をお楽しみください。

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『惑星クローゼット』

惑星クローゼット

完結『惑星クローゼット』 全4巻  つばな / 幻冬舎コミックス

夢の中で出会った女の子と繰り広げるサバイバル

夢の中の世界と現実の両方で進んでいく、SFサバイバルホラー。かわいい絵柄でありつつ、かなりのホラー展開があり、SFとしても完成度の高い作品です。

夢の中で出会った少女に助けを求められた中学生の愛海(あいみ)。そこは異様な怪物がうろつき回る奇妙な惑星で、愛海は眠る度に、その子がいる惑星に入り込むようになります。彼女は愛海と同じ現代の日本の女の子で、どうやら惑星から現実の世界に戻れなくなってしまった様子。日本にいた頃の記憶は希薄で、名前すらも忘れていました。愛海はその子を「フレア」と呼ぶことに決め、現実に戻れるように力を貸していきます。

折しも、現実の世界にも奇妙な生物が出現。クラスメイトの田村くんが、それに飲みこまれて姿を消してしまうという事件が起こっていました。次に見た夢では、なんと田村くんまで惑星に出現。彼は異形の姿になっていて、口の中から触手のようなものを吐き出し、愛海とフレアに襲いかかるのでした。

愛海が見る夢を接点にして惑星と現実世界がつながり、それらを行き来しながら、フレアの助かる道を探していくというのが、本作のストーリー。フレアは少しずつ、どうやって自分が「惑星」に入り込んでしまったのかを思い出していき、かつて日本にいたとき、何があったかが分かっていきます。フレアが惑星に来た原因となった先輩や、現実世界で愛海に協力する岡ちゃんなど、主な登場人物は中学生の女の子たち。次々と現れる異形の怪物に果敢に立ち向かう中で、女の子同士の友情が描かれていきます。愛海はフレアに、愛に似た感情をいだくようになり、百合的な展開も。

圧巻なのは最終巻の第4巻。それまでの伏線が一気に回収され、愛海とフレアの意外なつながりも明らかに。タイトルの意味が浮かび上がってきます。切なさに溢れた結末は、見どころです。

『惑星クローゼット』を試し読みする

『血海のノア』

血海のノア

『血海のノア』 1〜3巻 里見有 / 竹書房

吸血鬼+クローズドサークルの地獄を生き抜け!?

外の世界から隔絶された豪華客船。楽しいはずのクルーズが、吸血鬼たちによって血に染まり、主人公たちが生還への道を探っていくというストーリー。ホラー要素たっぷりのサバイバル漫画です。

父と弟とともに豪華客船「ビカルカラタ」に乗り込んだ高校生のあかり。一方、大学生のカケルは、弟や友人達とともに乗船。二人は甲板で出会うことになります。
あかりやカケルは日本国内を巡る数日間のツアーに参加した特別招待客。船内には、長期クルーズを楽しむ会員の乗客も大勢いて、彼らのほとんどは外国人でした。船内には会員限定のフロアや施設が多くあり、あかり達がそこに入り込むことは許されていません。

その会員たちが全員吸血鬼で、あかりたちは彼らのいけにえとして選ばれたことが、物語が始まってすぐに明らかになります。特別招待客の腕には血液型を記したリストバンドが巻かれ、吸血鬼たちは人間をもてなしつつ、密かに選別を始めるのでした。

特別招待客の首をギロチンで切り落としたり、箱の中に閉じ込めて何本もの剣で突き刺したりするマジックショーから惨劇は始まり、仮面を付けたダンスパーティーでは吸血鬼たちが一斉に人間に襲いかかります。犠牲者の血がなみなみと張られた血のプールなど、猟奇的なシーンが本作の見どころの一つ。恐怖の現場を淡々とした筆致で描いていき、かえって恐ろしさが増します。

早くから異変に気づき、生き残りの道を探すカケルに対し、あかりはあっけなく囚われの身に。彼らの友人や家族にも次々に危機が迫り、第2巻ではカケルが大きな選択を迫られることになります。第3巻まで刊行中で、物語はまだ序盤。今後の展開から目が離せない作品です。

『血海のノア』を試し読みする

『SOCIAL SURVIVAL RABBITS ソーシャル・サバイバル・ラビッツ』

ソーシャル・サバイバル・ラビッツ

『SOCIAL SURVIVAL RABBITS ソーシャル・サバイバル・ラビッツ』 1〜4巻 リコP・シンジョウタクヤ / 講談社

使用キャラは生身の女の子!? ソシャゲを使った新感覚デスゲーム漫画!

スマホのソーシャルゲームが大好きな高校生・成瀬弘樹が、負ければ死が待つデスゲーム「ソーシャル・サバイバル・ラビッツ」に強制参加させられ、生き残りをかけて戦うという作品。

ゲームのスタートとともに拉致された成瀬は、運営側によって、巨大なカプセルが入ったガチャを引かせられます。中から出てきたのは、なんと3人の生身の女性。しかも、成瀬が思いを寄せる同級生の由佳が含まれていました。成瀬は3人を手駒にして、ゲームのチュートリアルを体験させられることに。それは、操作にミスするとキャラが死に、ゲームオーバーになると自らの死が待つという、残酷なルールによるものでした。

死者を出すことなくチュートリアルをクリアすると、次に待つのは他のプレイヤーとの対戦。そうやって、成瀬は終わりが見えないデスゲームに巻き込まれていきます。

プレイヤーが所有する女性キャラクターたちのセクシーな魅力も本作の大きな魅力です。最初の対戦に選ばれたゲームは、勝敗がつくごとに女性キャラの服が裂けていって、3人全ての服が剥ぎ取られたらゲームオーバーという、野球拳のようなルール。作画のシンジョウタクヤ先生が描く肉感的な女の子たちが、プレイヤーに代わって活躍します。

また、運営側の審判もかわいい女の子が担当。中でも、成瀬と由佳を拉致して「ソーシャル・サバイバル・ラビッツ」に引きこんだクラスメートの切瀬晶子は、小悪魔的な魅力を放つ、注目の登場人物です。

ストーリーが進むにつれ、過激さとセクシーさを増していく「ソーシャル・サバイバル・ラビッツ」。主人公が女性キャラに囲まれるというハーレム漫画の要素もあり、次に待つ対戦が楽しみです!

『SOCIAL SURVIVAL RABBITS ソーシャル・サバイバル・ラビッツ』を試し読みする

『ゆるさば。』

『ゆるさば。』

『ゆるさば。』 1〜4巻 関口太郎 / 講談社

父と娘3人のゆる〜く楽しいサバイバル

誰もいなくなってしまった東京をサバイバルする家族の物語。悲壮感はまったくなく、自然に飲みこまれた街でキャンプを楽しむような内容になっています。

生物教師の父と、ツムギ、モモ、リンの姉妹による裕木一家。夏のある朝、4人がいつも通りに通勤通学に向かうと、街からはなぜか人が消えていたのでした。異変に気づいて帰宅すると、TVもネットも不通。ただ、電気や水道は繋がっていて普通に暮らすことはできます。いったい世界はどうなってしまったのか? 4人は車に乗って、確かめに出かけます。

すると分かったのは、世界は本当に無人で、家から離れるごとに街の荒廃が進んでいることでした。14キロ離れた八王子駅は、ビルが木々の緑に飲みこまれた状態。たった1日でそこまで植物が繁殖することはあり得ません。

「どう考えても異世界でしょ」

と長女のツムギ。そこから、一家4人のサバイバル生活が始まります。

頭がよく、合理的な思考をする長女のツムギは高校生。スタイル抜群で、他人の視線がない街では、基本的に水着で行動します。次女モモは中学生。家族で唯一、早く元の世界に帰りたいと主張する、生真面目なタイプです。三女のリンは天真爛漫な小学生で、サバイバルは完全に行楽気分。そして、3人の女の子をまとめるのが、博識で料理上手の父。スーパーに行って缶詰をゲットしたり、近所の畑から野菜を獲ってきたりと、日々の生活はあまりにも順調に過ぎていきます。

ショッピングモールに行ってキャンプ道具一式を手に入れたり、米軍基地でライフルを手に入れたり、他人のバイクや車に乗ってみたりと、とにかく人がいなくなった世界を遊び尽くす4人。ジャングルになった新宿など背景描写がどれも美しく、廃墟がワンダーランドに見えてくるのが、本作の大きなポイント。父が作るサバイバル飯も魅力の一つ。作り方が詳しく説明されていて、試してみたくなります。

植物の採集や動物の狩猟といったサバイバルらしい展開もありますが、2巻まではほぼ全てが、楽しいばかりの展開。家族がピンチに陥ったり、世界の謎のヒントが見えてきたりすることは、今後あるのか? 先が気になります。

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『Dr.STONE』

『Dr.STONE』

『Dr.STONE』 1〜15巻 稲垣理一郎・Boichi / 集英社

科学の力を信じる高校生が、未来世界をサバイバルする

「週刊少年ジャンプ」連載中のサバイバル漫画。不思議な光線が世界を包み、全ての人類が石になってしまう、衝撃的なシーンから始まる作品です。

物語はそこから一気に3700年後へ。メインキャラクターのひとり、大樹(たいじゅ)が石の殻を破って目を覚ますと、

「やっと起きてきやがったか」

と彼を迎えたのが、主人公の千空(センクウ)でした。半年前に目覚めていたという千空は、原始的な家や土器を作り、人類文明の途絶えた世界でたくましく生き延びていたのです。

千空は、ジャンプ作品の主人公にふさわしい魅力的なキャラクターです。子供の頃から宇宙に行くことを目指し、科学の知識を身につけてきた16歳の少年。頭が切れ、意志が強く、コツコツと努力を積み上げることができる、まっすぐな男です。一方で、悪巧みにも長けていて、いたずらっぽく笑う姿もカッコイイ。本作の原作者は『アイシールド21』の稲垣理一郎先生ですが、『アイシールド』のヒルマと少しイメージが被ります。大樹は逆に、頭はそんなによくありませんが、素直で明るくて、体力に満ちあふれているタイプ。二人はお互いの長所を活かしながら、サバイバル生活を送っていきます。

しかも、ただ生き延びるだけではありません。

「人類が石の時代から近代文明まで200万年 そこを一気に駆け上がる」

「俺ら高校生のガキ二人でゼロから文明を作り出す」

という壮大な目標を、千空は掲げます。そのために最初にやらなければいけないのは、仲間を増やすこと。石化を解くための薬品を1年かけて作り出し、大樹の恋の相手・杠(ユズリハ)をまずは甦らせようとします。

しかし結果的に彼らが最初に甦らせたのは、「霊長類最強の高校生」と言われる獅子王司(シシオウ ツカサ)でした。猛獣から救ってもらうために復活させた司は、危険な男でした。強すぎる上に、甦らせる人間を選別して新たな世界を創るという選民思想が、彼には宿っていました。

司が本性を表し、千空たちに牙を剥いたところからストーリーは急転。千空は大樹と、次に目覚めた杠の二人と別れ、司の前から逃亡します。そして、人類の石化後に生まれた人々の村にたどり着き、彼らとともに科学の王国を築き上げていくという展開に。

科学の知識を使い、ガラスや病気を治す抗生物質、さらには電気から蒸気機関まで作り出して、村を文明化していく千空。一方の司は、自らを信望する力ある若者だけの帝国を築き上げ、やがて両者は戦い合うことに。

壮大なストーリーにして、科学知識満載。大注目のサバイバル漫画です。

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『漂流ネットカフェ』

『漂流ネットカフェ』

完結『漂流ネットカフェ』 全7巻 押見修造 / 双葉社

ネカフェがまるごと未来世界へ。人間の醜いエゴが絡み合う

楳図かずお先生の代表作『漂流教室』は学校がまるごと、荒廃した未来世界に飛んでしまう話でしたが、こちらは深夜のネットカフェが同じような運命にさらされる話です。ネカフェで夜を過ごしていた見ず知らずの男女は、もちろん全員が成人。『惡の華』『血の轍』といったサイコサスペンスを代表作に持つ押見先生の作品らしく、人間の醜いエゴがこれでもかと描かれていきます。

主人公は、サラリーマンの土岐耕一。妊娠中の妻がいる身ですが、中学時代の初恋の人・遠野果穂をずっと忘れられずに過ごしてきました。ケンカして口をきいてくれない妻を置いて出勤した日、家に帰りたくない思いからネカフェに寄った彼は、そこで大人になった果穂と再会します。

「このまま……ずっと夜が明けなければ…」

そう耕一が祈った時、異変が起こります。パソコンや携帯が繋がらなくなり、外は入り口が浸水するほどの豪雨に。仕方なくネカフェに泊まった耕一が翌朝見たのは、建物の周囲にどこまでも湿原が広がっている、異世界の景色でした。

ネカフェに居合わせた人々が協力してサバイバルに臨めばいいのですが、赤の他人同士で、気持ちはバラバラ。合コン帰りの若い男女は考えなく店の食料を食べ散らかしたり、店員に絡んだりとやりたい放題。ブースに閉じこもって、誰とも話をしようとしない男もいます。中でも最もやっかいなのが巨漢の乱暴者、寺沢でした。彼が全員を支配し始めると、ネカフェは狂気の空間に。暴力とセックスが渦巻く中、耕一は果穂を守るために寺沢と対立していくのでした。

2008年から3年にわたって連載された作品なので、登場人物が使うのがガラケーだったりはしますが、ストーリー自体は全く古びていない印象。物語後半には、異世界の正体や、なぜネカフェの人々だけがそこに流されたのかの謎解きがあり、着地点もしっかりしています。2009年には伊藤淳史さんの主演で、ドラマ化もされました。

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『ドラゴンヘッド』

『ドラゴンヘッド』

完結『ドラゴンヘッド 』 全10巻 望月峯太郎 / 講談社

大異変の後、恐怖に支配された人々を描く、往年の名作

1994年から1999年まで、つまり世界が世紀末に向かう中で連載されたサバイバル漫画の傑作です。1997年には、第21回講談社漫画賞一般部門を受賞。連載終了後の2003年には、妻夫木聡さんの主演で映画化されました。

主人公は東京在住の高校生・青木照(テル)。修学旅行からの帰りの新幹線が浜松を過ぎた頃、彼は大事故に巻き込まれます。地震により、トンネル内で車両が脱線。生徒も教師も、ほとんどが死んでしまったのです。

テルが出会った生存者はたった二人。瀬戸憧子(アコ)と高橋ノブオという、同級生の男女でした。トンネルは両方の出口が落石で塞がってしまい、完全な暗闇。そんな中でテルはどうにか脱出の手段を探していきます。

大地震はどのようにして起こったのか?家族がいる東京はどんな状態なのか?日本政府は機能しているのか?ほとんど情報を得られず、謎が宙づりになったまま、テルのサバイバルが描かれていくことに。重苦しい展開が続きます。

本作が重きを置いているのは、極限状態に陥った人間が感じる「究極の恐怖」。まずはノブオが、全身に異様なペインティングを施して刃物の武器を持ち、原始帰りするような精神状態に。テルも一時は恐怖に飲まれてしまいますが、それを救ったのが強靱で健康的な意志を絶やすことがないアコでした。トンネルをなんとか抜け出した彼らは、東京を目指して、無人の廃墟となった街を進んでいきます。

テル達がその行程で出会うのは、さまざまな形で恐怖に冒され、タガが外れてしまった人々。人間とは何か、といった哲学的なテーマが根底にあり、深く考えさせられる作品です。テルの味わった絶望と最後に残されたほんの少しの希望を、ぜひ追体験してみてください。

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『ソウナンですか?』

ソウナンですか?

『ソウナンですか?』 1〜6巻 岡本健太郎・さがら梨々 / 講談社

サバイバル知識があれば無人島でも快適

本作に書かれていることを全て実践できるようになれば、無人島に漂着しても大丈夫! そう思わせてくれるくらいの強い説得力を持つ、サバイバルの雑学だらけの作品です。原作者の岡本健太郎先生は、漫画家兼猟師。自らの猟師生活を綴った『山賊ダイアリー』で知られています。

修学旅行の飛行機が墜落し、海に流された4人の女子高生。どうにか無人島にたどり着いた彼女達は、力を合わせてサバイバルしていきます。主人公・鬼島ほまれは、元軍人の父とともに世界各地でサバイバルしてきた経験を持つツワモノ。都会育ちの女の子達の中にあって、超ハイスペックなキャラクターなのでした。

ほまれがリーダーとなって、さまざまなサバイバル術を駆使。他の3人も少しずつ無人島暮らしに順応していくというのが、本作のストーリー。救助がいつくるか分からない中での野宿は精神的にもキツいはずですが、笑顔が絶えない女の子達。コメディタッチで描かれていて、気楽に読める作品です。

一番の読みどころは、当然、ほまれのサバイバル知識です。たとえば、海の上で水分補給が必要になった時。ほまれは捕まえたトビウオを服にくるんで絞り、内臓の水分や血液を飲み干します。島に着いてからも、バッタ、セミ、ヤドカリとあらゆるものを食料に。トノサマバッタの旬は6月から7月上旬だとか、セミは羽根をもいで逃げられないようにして生きたまま保存するといいとか、一つ一つの知識がガチで実践的。他の3人も最初はほまれにドン引きでしたが、生き抜くためにどんどんたくましくなっていきます。魚を焼いて砂浜でパーティしたり、温泉を作ってホッと一息ついたり、サバイバルしているのにリゾートかと思わされるシーンも。

物語が進むと、いよいよ動物を狩りに。まずはウサギ、やがてイノシシと相対することになっていきます。また、同じ島に漂着した男子生徒も登場。そちらはサバイバル知識が全くなく、ほまれ達よりも困難な状況に陥っていくことに。食用になるキノコは全体の4〜5%とか、彼らの失敗を通して教えられることもあります。アウトドアが好きな人は、読んでおいて絶対に損はない作品です。

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『7SEEDS』

7SEEDS

完結『7SEEDS』 全35巻 田村由美 / 小学館

種の保存のため、未来を託された若者たちのサバイバルドラマ

『BASARA』で壮大な戦記ファンタジーを紡いだ田村由美先生が描く、近未来サバイバルストーリー。少女漫画に分類されますが、男性にもぜひ読んでほしい骨太な作品です。

隕石の衝突により人類が滅亡することを予測した政府は、極秘裏に救済計画「7SEEDS(セブンシーズ)」を実行。7人の若者+1人のガイドから成るチームを、5つの「春・夏A・夏B・秋・冬」に編成し、「人類の種(seed)」として冷凍保存しました。時が経ち人類が死滅した後の世界で、彼らは解凍され目覚めます。そこで目にしたのは、巨大な昆虫や食肉植物などがはびこる、異様な生態系の世界でした。

章ごとに主人公が代わり、各チームに焦点を当てながら物語が進行します。選ばれた若者たちの中でも、計画を知らずに強制参加させられた者、課せられた使命をもって参加した者などさまざま。また、選ばれなかった……つまり、「生き残れなかった側」の人間たちのエピソードも描かれていることで、物語が幾重にも積み重なり、読み応えを増しています。それぞれの性格や来歴、遭遇する苦難が描かれ、時には辛く残酷で悲壮な展開も。ですが、すべての物語を貫くのは、極限状態で生き抜く人間のたくましさと絆です。異なるバックグラウンドを持つ若者たちが、協力したり対立したりしながら、過酷な環境下で生き抜く術を身につけていきます。離れ離れになっている恋人同士が、再会できそうでできないというもどかしい切なさは田村先生ならではの焦らしもあって、先が気になってしょうがなくなります。

心にしみる名台詞が多いのもポイント。第4巻の「冬の章」では、高校野球の名投手で、その高い身体能力ゆえに未来行きのメンバーに選ばれた新巻に対し、同じチームの鮫島がかける言葉

「いつでも おまえが戦う場所が そこが 甲子園だ」

は、もはや野球ができる世界ではないだけに胸に迫ります。この後、2人を襲う悲運には涙が止まりません。

サバイバルをテーマとした群像劇なので、「同じ境遇に置かれたら、自分は誰に近いだろうか、どんな行動を取れるだろうか」と、共感できるキャラが見つかるかもしれません。

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『自殺島』

自殺島

完結『自殺島』 全17巻 森恒二 / 白泉社

孤島に幽閉された自殺願望者たち―なぜ生きるのか

主人公・セイは何の意欲も持てず、自殺未遂を繰り返す少年。ある日、他の自殺未遂の常習者と共に、どことも知れぬ島に置き去りにされます。そこはネット上で「自殺島」と噂される、政府が関与しない無法状態の島でした。

離島に閉じ込められるという設定はサバイバル漫画の王道ですが、本作の特徴は、幽閉された人が「自殺未遂の常習者」であること。当然、サバイバルの意欲を全く持たず、死を選ぶ者も出てきます。しかし、他者の自殺とその苦しみを見てためらった人たちは、

「死ねなければ…死ねないなら――生きるしか…ないんだ」

とサバイバル生活へと追い込まれるのでした。

漁や狩猟の方法や果物の採集、収穫物の保存法など、島で生きぬくための実用的なサバイバル術が豊富に出てきます。効率的に食べ物を手に入れるためにお互い協力し合い、平和的に村を運営するためにリーダーを決め、守るべき共通のルールを決める。社会になじめず自殺を図ったセイたちは、島で社会を構成せねば生きていけないことに気付くのです。さらに、対人関係のいさかいや、グループの分裂・抗争など、共生社会をつくることがいかに難しいかを感じることができます。

また、彼らが島で生き延びるために向き合う「命」についても考えさせられます。動物や人間の命と向き合うたびに、「なぜ生きるのか」という問いが浮き彫りになります。自分が置かれている社会状況や日常生活にありがたみを感じたり、普段は意識していない危機感やサバイバル本能に気付いたり、命を受け継ぎながら生かされていることなど、考えさせられることの多い作品です。

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『レッツ☆ラグーン』

レッツ☆ラグーン

完結『レッツ☆ラグーン』 全6巻 岡崎武士 / 講談社

サバイバル×タイムスリップ!一緒に遭難した女の子たちとの三角関係も描かれる

修学旅行中、客船から放り出されて無人島に漂着した高校生の山田壮太。同じ島に、同学年の衣舞瀬チカも流されていて、2人は協力してサバイブを始めます。女の子と2人きりの無人島暮らしであり、島には豊富に真水や食料の元になる魚や植物があるということで、サバイバル物としてはライトな展開からスタートする本作。ですが、ストーリーが進むと、この作品の本質が他にあることが分かってきます。

それは、実は壮太とチカは、遭難だけでなくタイムスリップによって、この島にたどり着いていたということ。『レッツ☆ラグーン』は、サバイバル×タイムスリップというSF設定が魅力の作品なのです。タイムスリップを引き起こしているのは、突然現れる不思議な霧。それに触れると、別の空間、別の時間に一気に飛ばされてしまうのでした。

霧の作用によって、一度は家族の元に戻ることができた壮太。しかし、島に残されたチカを助けるために、彼はもう一度、霧の中に飛び込んでいきます。そして、その時のタイムスリップで、チカの姉のミキや、壮太に片想いしている神山ノリという2人の女子も、不思議な無人島にたどり着くことに。物語に、壮太×チカ×ノリの三角関係という要素も加えられていきます。

ですが、あくまでこの作品の主題はサバイバル。壮太は、ハーレム的な状況に流されず、全員が助かるために努力を続ける、芯のある主人公として描かれます。そして、無人島の暮らしやすさにも、何か人工的な秘密があることがだんだんと明らかに。壮太たちの時空を越えた不思議なサバイバル、今後の展開に期待です。

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『サバイバル~少年Sの記録~』

サバイバル~少年Sの記録~

『サバイバル~少年Sの記録~』 1~5巻 宮川輝・さいとう・たかを / リイド社

サバイバル漫画の金字塔を現代版にリメイク!

1968年から連載中の『ゴルゴ13』や、池波正太郎先生の『鬼平犯科帳』の漫画版など、精力的に活躍中のさいとう・たかを先生。そんなさいとう先生の代表作『サバイバル』を、「画業60年特別企画作品」として宮川輝先生がリメイクしているのが本作です。

オリジナルは、さいとう・たかを先生が1970年代に描いた少年漫画『サバイバル』。大地震に遭い、孤島で1人きりとなった少年が、ありあわせの道具で狩猟採集をしながら病や野獣と戦い、家族を探す物語です。アウトドアにも使えるサバイバルのノウハウが満載で、サバイバル漫画の金字塔と言われています。

ストーリーにはドライな非情さが満ちており、心を許した人や動物との別れや、地震後の社会に暴力や独裁が横行するさまは、戦争を知る世代の漫画家だからこそ描ける凄みがあります。

リメイク版である本作の特徴は、主人公のサトルがいかにも現代っ子なところ。魚が焼けただけで舞いあがる軽さや、今っぽい口調にはクスッとすることも。火の起こし方も、カメラを使っていたオリジナルとは異なり、ネットの知識を元に乾電池を使うという、21世紀の現代ならではの方法に変わっています。また、水を飲みすぎない方がいい理由として「体温より低い温度の水を過剰に摂取することは体温調節に余計なエネルギーを消費させ」てしまうから、など、リメイク版ではより明確に書かれている部分もあります。

そんなサトルですが、サバイバル生活の中で失敗しながらも次第に強くたくましくなっていきます。幾多の困難を乗り越えて主人公が成長していく様子が爽やかで感動的なのは、オリジナルもリメイクも変わらない魅力です。リメイク版が今後どのような展開になるのか、期待が膨らみます。

ちなみに、さいとう・たかを先生には青年版『サバイバル』とも言える『ブレイクダウン』という作品もあります。こちらは小惑星の衝突によって崩壊した街を生き抜く青年を描いたもので、少年漫画である『サバイバル』とはひと味違う迫力があり、こちらもおすすめです。

『サバイバル~少年Sの記録~』を試し読みする

『彼女を守る51の方法』

彼女を守る51の方法

完結『彼女を守る51の方法』 全5巻 古屋兎丸 / 新潮社

東京で被災した帰宅困難者の7日間を描く、震災シミュレーション系サバイバル漫画

就職活動のため、東京・お台場に来た三島ジンは、中学時代の同級生・岡野なな子に再会します。その晩、マグニチュード8、震度7の地震が発生。ジンはなな子を守りながら早稲田の自宅へ向かおうとしますが、液状化や余震に邪魔されてなかなか進めません。また、助けを求める人々を救いきれなかった自責の念が、しだいに心の傷となっていき……。

『帝一の國』『ライチ☆光クラブ』などで知られる古屋兎丸先生が、実際に東京を歩き回って描いたサバイバル漫画です。防災ジャーナリストの渡辺実氏が監修しているだけあって、大地震後に東京に起こると予想されている災害が詳細かつ具体的に描写されています。また、時間の経過に従って被害が変遷していく様子も描かれており、防災ハンドブックとしてもぜひ読んでほしい作品です。

火災旋風により焼けた遺体が空から降ってくる、病院へ行ってもトリアージで優先度の高い患者しか診てもらえない、暴徒化した群衆が犯罪に走るなど、想定されている悲惨な事態に胸が痛くなります。同時に、歌が人々の心を癒やしたり、他人同士が助け合ったりと、「人間、捨てたもんじゃない」という部分も描かれています。

「実際に同じような事態に直面したら、どういう行動がとれるだろう」、読みながら自分の身に置き換えて考えてしまう作品です。

『彼女を守る51の方法』を試し読みする

『彼方のアストラ』

彼方のアストラ

完結『彼方のアストラ』 全5巻 篠原健太 / 集英社

5千光年を旅するSFサバイバル!青春要素も満載

突然、5千光年先の宇宙に飛ばされてしまった9人の男女が、力を合わせて地球帰還を目指す壮大なサバイバルSFが、『彼方のアストラ』です。物語の舞台は西暦2063年の地球。ケアード高校の新入生・カナタ、アリエスら9人は、生徒だけの宇宙キャンプのために惑星マクパへ。しかし到着した途端、謎の球体に飲み込まれ、見知らぬ宇宙空間に放り出されます。そこはなんと地球から5千12光年離れた宇宙。偶然、近くを漂流していた宇宙船に避難した彼らは、水と食料になる生物がいる惑星で補給を繰り返しながら、地球へ帰るという壮大な旅に出ることを決意します。

作者は、ヒット作『SKET DANCE』の篠原健太先生。骨太のSFでありながら、ユーモアを巧みに織り込んだ青春ドラマになっているところに、その持ち味が発揮されています。新入生同士、見知らぬ存在だった彼らが協力し、サバイブすることで絆を育んでいく展開には、笑いと感動が。運動神経が抜群、生物学に詳しい、など個々の才能を活かしつつ、お互いの欠点を補っていく彼らの友情。そして、男女が宇宙船という閉鎖空間にいることで、自然に恋愛展開も生まれます。

一番のミステリーは、誰が何の目的で彼らを宇宙に放り出したのか? ということ。宇宙船の通信機が何者かに壊されたことにより、序盤から黒幕の存在が示唆されますが、3巻に入ると地球にいる大人たちの思惑も描かれ、謎がぐっと深まることに。SF、ミステリー、青春を織り交ぜた、良質のエンターテイメント作品です。

【祝!マンガ大賞2019!】漫画『彼方のアストラ』(篠原健太)の魅力を徹底解説!

『彼方のアストラ』を試し読みする

『山賊ダイアリー』

山賊ダイアリー リアル猟師奮闘記

完結『山賊ダイアリー リアル猟師奮闘記』 全7巻 岡本健太郎 / 講談社

サバイバルに活かせるノウハウが満載!リアル過ぎる狩猟漫画

サバイバルにおいて、重要なのは食料の調達。日本の野山でそれを最も得意としているのが、猟師さんでしょう。岡本健太郎先生の『山賊ダイアリー リアル猟師奮闘記』は、タイトル通り、漫画家兼猟師としての日々を描いた漫画。なかなか知ることができない猟師の世界を垣間見ることができ、同時にサバイバルにも役立つ具体的な知識も身につく作品です。

東京から地元の岡山に戻り、猟師になることを決意した岡本先生。まずは猟銃免許を取得し、ライフルを買うことから、猟師生活はスタートします。岡本先生が選んだのはエアライフル(空気銃)。他の猟師が散弾銃を使う中、空気銃での猟を続けます。

狩猟が許されているあらゆる鳥や獣が標的ですが、動物を撃つのは、それを食べるため。狩猟シーンと同じくらい、どのようにして動物をさばき、料理するかが、詳細に描かれています。時には、猟の途中で偶然捕まえたマムシや、害鳥駆除を頼まれて撃ったカラスを食べることも。この雑食性が岡本先生の美点。奪った命をおろそかにしないのです。

また、野山の植物や川魚をいかに食べるかのウンチクも。日本の野山で遭難した時のために覚えておきたい情報が、本作にはたくさん詰まっています。全7巻で完結しましたが、その続編『山賊ダイアリーSS』が、現在連載中。こちらでは海での漁にも挑戦。岡本先生のハンティング・フィールドはますます広がっています。

『山賊ダイアリー リアル猟師奮闘記』を試し読みする

『地球の放課後』

地球の放課後

完結『地球の放課後』 全6巻 吉富昭仁 / 秋田書店

のほほん系の異色サバイバル漫画!

無人の街と化した東京で、4人のティーンズが助け合って暮らしている姿が描かれた、日常系サバイバル漫画です。菜園で野菜を作ったりもしていますが、必要な物資は街中から調達できるため、4人とも文字通り放課後のように、海へ行ったりコスプレを楽しんだりして過ごしています。物の豊富な東京でサバイブするのは意外と大丈夫なのでは? と思ってしまう作品です。

見どころは、主人公の正史少年を囲んで、早苗・八重子・杏南の少女3人が、甘えたり絡んだりセクハラしたり!? しているところ。ほんわかとした雰囲気で、絵柄を見ているだけで和みます。謎の存在“ファントム”が現れて東京の人々を消してしまった、という設定にほのかな恐さがありますが、終盤でファントムの正体や正史たち4人の関係が明らかになり、SFとしても秀逸です。

作者の吉富昭仁先生は本作の他、『スクール人魚』『しまいずむ』など多数の作品がある漫画家さん。『EAT-MAN』はアニメ化もされています。

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『漂流教室』

漂流教室〔文庫版〕

完結『漂流教室〔文庫版〕』 全6巻 楳図かずお / 小学館

サバイバル漫画の金字塔

1972年から1974年にかけて雑誌連載された楳図かずお先生の『漂流教室』は、後世の作品に大きな影響を与えた、サバイバル漫画の古典中の古典です。小学校が、まるごと未来世界へタイムスリップ。無人の砂漠が広がり、空はスモッグで真っ黒という荒廃した世界を、主人公の高松翔をはじめとした児童たちは、生き抜くことになるのでした。

子供たちの視点で分かりやすく描かれながら、深いドラマが展開する本作。極限状況に耐えられなくなって最初に死んでいくのが、常識に縛られた大人である教師たちだったり、子供たちの間で大人顔負けの権力闘争が生まれたり、限られた食料の醜い奪い合いが起こったりと、人間描写はリアル。さらに、巨大な怪虫や、不気味に進化した未来人類が登場し、ホラー要素も満点。次から次へと息つく間もなく事件が起こっていく、ジェットコースター的な展開も見事です。

ストーリーの裏にあるのは、限られた資源を使い果たし、環境破壊を続ける現代人への警鐘。公害問題が高まった70年代ならではのテーマですが、自然災害や凶悪犯罪の多発といった21世紀の現状を先読みしている面もあり、その先見性には驚かされます。と言っても暗いばかりの物語ではなく、ラストには未来を変える希望が。人間を信じようとする、楳図かずお先生の前向きなメッセージが伝わってきます。

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最後に

アウトドアの知識のために、予期せぬ災害に備えて、と、面白さだけではなく知識も得られるサバイバル漫画。人間の価値を問われる描写には、読後に考えされられることも多いです。

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