【感想・ネタバレ】がん治療の現在 ~光免疫療法の衝撃~免疫チェックポイント阻害薬 CAR-T細胞療法 腫瘍溶解性ウイルス療法 ゲノム医療のレビュー

あらすじ

これまでのがん治療とは異なる仕組みでがん細胞を攻撃する「光免疫療法」が、世界ではじめて日本で承認された。
光免疫療法では、まず狙ったがん細胞の表面に、魔法の銃弾ともよばれる抗体を結びつける。この抗体には、光感受性物質が取りつけられていて、光をあてると急激な化学反応を起こす。急激な変化によって細胞膜にはたくさんの穴が空き、そこから水が流れ込んで、がん細胞は破裂して死ぬ。
破壊されたがん細胞は、自らの目印となる物質をばら撒く。ばら撒かれた目印は体内の免疫を活性化させ、まだ残っているがん細胞を標的として叩く。
がん細胞だけを「光」で破壊し「免疫」で逃さない−−−がん治療の新たな選択肢となりうる画期的な治療法だ。

米国立衛生研究所(NIH)の小林久隆主任研究員によって開発されたこの療法は、有無をいわせずがんの細胞膜を破壊することから、楽天の三木谷浩史氏が「インターネットが世の中を変えると確信したときと同じ感覚」「これはいける」と確信して資金を提供し、異例のスピードで早期承認につながった。

本書では、驚くべき効果が期待できる光免疫療法を紹介するとともに、がん治療の最前線といえるさまざまな療法−−−なかでもとくに注目度が高い、がん医療の歴史を変えたといわれる「免疫チェックポイント阻害薬」、人工的にパワーアップされた攻撃力をもつ「CAR-T細胞療法」、ソフトクリームが溶けていくようにがん細胞を壊す「腫瘍溶解性ウイルス療法」、患者一人ひとりにあわせた「ゲノム医療」などについて解説する。

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Posted by ブクログ

『免疫療法』というと、少し胡散臭いイメージがあった。
人体の免疫は複雑にいくつもの作用によって成り立っており、どこのどの部分に効くか明確ではなく、どの部分をどすることで癌に抵抗するか示していないのに、『免疫力アップ』という一見良さそうなことをうたっている、そんなイメージだ。
けれど、本書は、免疫の構造のどの部分に作用することを狙った治療か。そしてその効果について治験の結果まで記してあった。
(私が本を読む前にあった科学的根拠のない『免疫療法』をうたう治療に騙されないように、という注意喚起や、情報の見極め方についても記載されている)
また、実際に治療を検討する際は、メリットとデメリットを天秤にかけなければならないのに、デメリットの情報が少ないことが多い。特に『新しい治療方法』はその傾向が多く、今までの治療よりこんなに素晴らしい!という話ばかり……。
けれどこの本は、副作用の情報、治療が上手くいかなかった事例も記載しておりとても参考になる。
免疫療法が、抗がん剤にかわる画期的な治療ではなく、手術・放射線・抗がん剤に続く、4つ目の手であって、上位のものではない、という考え方も理解できた。
光免疫療法の衝撃とサブタイトルにあるが、光免疫療法の話だけでなく、ウイルスによる治療、ゲノム解析など、わかりやすく解説している。
科学的根拠をもった免疫療法について知りたいという人におすすめの良書。

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2021年06月23日

Posted by ブクログ

がんの第五の治療と言われている、光免疫療法について書かれた本。

楽天メディカルという楽天グループの会社がこの治療に力を入れているらしい。
楽天の三木谷社長は、父を膵臓癌で亡くしたため、ガンによる死をこの世からなくしたいという思いで、アメリカの製薬会社を買収した。
母と同じ膵臓癌というのがとても親近感がわいた。

この治療法は、まだまだ一般的にはなっていないが、副作用も少なく、がん細胞にだけピンポイントに働く治療方法だから、今後の発展に期待したい。

そして、この本でも繰り返し、標準治療を基本として、代替療法は補助的に利用すべしと主張していた。
確かにいろんな利権や医師会の思惑などあるのかもしれないが、医学的なエビデンスがきちんとあるから標準治療として国に承認されている。
がんを放置せよ、食べ物だけで治すなど、極端な意見には惑わされるなということだった。

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2022年06月24日

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