あらすじ
【内容紹介】
「コロナは事実上、全世界の人々を人質にとった。人は逃げるに逃げられない。この不安な状況は、ある種の精神病に陥った人々が感じる不安と同質のものである。」(本書より)
生命の危機、経済破綻……。病院に列をなす人々が直面する「カオスの縁」を現役の精神科医が明かす。
都心から少し離れた街中の心療医院に、毎日驚くほど多くの“悩める人々”が訪ねてくる。現代文明によって生み出され、ネット依存やコロナ禍で増幅される、その「不安」の正体とは?
「コロナうつ」と闘う精神科医が、現場から報告する魂の救済ドキュメント。月刊『FACTA』の好評連載、待望の書籍化!
【著者紹介】
[著]遠山 高史(とおやま・たかし)
1946年生まれ。精神科医。桜並木心療医院院長。
千葉大学医学部卒業後、医療法人博道会館山病院精神科長、茂原保健所長、千葉県精神科医療センター診療部長・センター長などを歴任。
2012年には24時間対応の精神科救急の仕組みづくりに尽力してきたことが認められ「医療功労賞」を受賞。
2014年桜並木心療医院を開設し院長に就任。精神医療の現場に立ち会う医師としての経験を生かし、雑誌『選択』『FACTA』等にエッセイを連載。
著書に『ビジネスマンの精神病棟』(JICC出版局、のちちくま文庫)、『医者がすすめる不養生』(新潮社)、『素朴に生きる人が残る』(主婦の友社)など。
【目次抜粋】
【目次抜粋】
はじめに
第1章 心療医院に列をなす“悩める人々”
精神科医になるしかなかった
課長の心の底に巣くう「鬼」 ほか
第2章 「共感力」が育たない社会
「ノー」と言えぬ若者の自我
「土の匂い」がしなくなった日本人 ほか
第3章 他者の不在が自我肥大を招く
先輩が怖くて仕事に行けぬ20代保育士
文明が生む予測不能な攻撃者 ほか
第4章 免疫力を低下させる不安の源
睡眠負債のSEに2万通のメール
コミュニティーの喪失が自殺をもたらす ほか
第5章 カオスからの使徒、コロナウイルス
現実的交流のない「セル」の住人
「死にたい願望」に囚われる少女 ほか
おわりに
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ITとPCとネットは自然から人を遠ざける。その結果、脆弱になっていく人々。
長年精神疾患の患者に接してきた著者の眼差しは暖かく包み込むように見ている。年齢を重ねるのも良いかもしれない、と思わせる含蓄のある指摘が続く。
本書は新型コロナが蔓延してからの記事も含めて出版された。それゆえに新型コロナに関する洞察力の深い言葉も多数あった。
免疫力を高めるのは何も身体だけではない。
精神の安寧を自分で作り出すことで心身の免疫力が強化される。
私たちはイタズラに自分のを責めて不安になって自分自身を攻撃する必要はない。
Posted by ブクログ
精神科医のエッセイ集。最初胡散臭かったけど読み進めるうちに面白くなってきた。コロナと精神疾患の関係にも触れており独自の見解が読みところ。
現代人に精神を病む人が多いのはネットが普及しすぎて自然との乖離が進んだ事がいちばんの要因に感じる。
適度に居心地の良いコミュニティと自然を感じる環境の大切さを痛感した。
Posted by ブクログ
自分はうつとは縁がない人間と思っているものの、本当にそうなのだろうかと思うことがある。"そのような環境"に出くわせばそうとも言い切れないものかもしれない。
どのような理由で心療内科にやってくるのか。何が原因なのか、ほとんどが日常の仕事であったり、人間関係、家族の問題だったり、あらゆるところにうつになる危険要素が潜んでいるもんだと改めて思った。
これを読むと、今の自分はまだまだ幸せなほうなのかもしれないと思う。そして、これを読むことでうつに悩んでいる人達の考え方や行動が少しわかった気がする。また、そういった環境で働いてる彼らは、日本の人間社会において本当に重要な分野で戦っている人達でもあったりする。
例えば、飛行機の安全を守る飛行整備士も、一つの機密部品がなくなっただけで、仕事環境に多大な影響を与えるというのだ。各機関へのお詫びや、膨大な書類作成、なんと監視カメラまでつけられ、十分な睡眠もとれない。そんな環境で自制心を保てというほうが無理なのかもしれない。
(要約)
長年診療内科で働いてきた著者は、今までの院に来た人たちを通して、今の世相の想いをエッセイ集としてまとめている。
個々の患者らの悩みが一つ一つのテーマとなっており、その人たちの事情や、置かれている立場、環境がわかりやすく書かれている。そしてそこに著者の過去の経験や考えが絡まり、ことの本質を教えてくれるのだ。
コロナの影響で世の中の考え方はガラリと変わった。新しい考え方、新しい哲学が必要であり、この本はその糸口になればよいとのことだ。
強迫性障害、慢性的緊張からくる過覚醒状態や、それによる慢性的な睡眠不足、消耗性うつ病など、普段聞きなれない言葉がたくさん出てくる。だが、すんなり頭に入ってくるのは、日常もしかしたらそれに自分もいつの間にか浸っているのかもしれない。だからこそ気を付けないといけない。そんなことを気づかせてくれる本である。