【感想・ネタバレ】ヤマケイ文庫 アイヌと神々の物語~炉端で聞いたウウェペケレ~のレビュー

あらすじ

アイヌ語研究の第一人者である著者が、
祖母や村のフチから聞き集めたアイヌと神々の38の物語を読みやすく情感豊かな文章で収録。
主人公が受ける苦難や試練、幸福なエンディングなど、ドラマチックな物語を選りすぐった名著、初の文庫化。


千葉大学文学部教授 「ゴールデンカムイ」アイヌ語監修 中川裕
「ウウェペケレには、カムイ(自然、環境)との関わり方や生活の知恵がちりばめられ、人としてのあり方、心構えといったようなものについての教訓も含まれている。
主人公の受ける苦難や試練、それを解決して幸福なエンディングにいたるドラマチックな展開に心躍らせ、長い冬の夜を心豊かに過ごせるような楽しみが詰まっている。」
(本文寄稿より)


心理学者 河合隼雄
「「ウウェペケレ」は「昔話」そして「お互いの心が洗われる」ことを意味する。アイヌ研究者、民俗学者などはもちろん、人間の生死について深く考えようとする人々に広く推薦したい。」
(推薦の言葉より)


アイヌ語研究の第一人者である故・萱野茂氏(第32回菊池寛賞受賞)が残した
知られざる名著『カムイユカラと昔話』(1988年刊・小学館)から、昔話(ウウェペケレ)を初めて抄録・文庫化。

著者は、幼い頃から毎日、祖母のてかってさんにウウェペケレを聞いて育った。
本書は、祖母や村のフチ(おばあさん)から聞き集めたアイヌと神々の38の物語が、読みやすく情感豊かな文章で綴られる。
著者による冒頭解説「アイヌと神々の世界」では、著者の子どもの頃の記憶から当時のアイヌの生活をうかがい知ることができ、
ウウェペケレやカムイユカラといったアイヌの口承文芸についてもわかりやすく解説されている。

さらに、38の話すべてにわかりやすい解説が添えられ、アイヌの文化や習俗を知る意味でも面白く貴重な一冊。
文庫化にあたり、『ゴールデンカムイ』のアイヌ語監修を務める研究者・中川裕氏による寄稿を収録。


〔もくじ〕
アイヌと神々の世界 萱野茂 〈神々と人間の昔話〉身代わりの美女/怪鳥とくすり水/クマと狂ったサル/カラスと赤ん坊/子どもと遊んだ神/
村おさは化け物/犬は聞こえた/鬼の岩屋/氷の井戸/ヘビの血/二羽のカラス/私は十三人兄弟の末っ子/羽毛の海/黒ギツネのイナウ/
三本足の大グマ/私の名はイクレスイェ/狩小屋でクモ神が夢を/スズメの恩返し/人食いじいさんと私/クマ神の横恋慕/消えたちんちん/
着物の片袖/カツラの木の女神/魔法の小袖/エゾマツの女神/からっぽやみの女/恋路のじゃま/淫乱の群れ/リスと平原の化け物/
七人目の婿/四つ爪のクマ/キキンニの女/女のたしなみ/妻が私に筋子をかけた 〈川下の者と川上の者の昔話〉パナンペとペナンぺ/
パナンペと小鳥 〈和人の昔話〉打ち出の小づち 〈言伝え〉国造りの神とフクロウ


■著者紹介
萱野 茂(かやの しげる)
1926年、北海道沙流郡平取町二風谷に生まれる。小学校卒業と同時に造林・測量・炭焼き・木彫りなどの出稼ぎをして家計を助ける。
アイヌ語研究の第一人者でアイヌ語を母語とし、祖母の語る昔話・カムイユカラを子守唄替りに聞いて成長。
昭和35年からアイヌ語の伝承保存のため町内在住の古老を中心にアイヌの昔話・カムイユカラ・子守唄等の録音収集を始め、金田一京助のユカラ研究の助手も務めた。
昭和50年、『ウウェペケレ集大成』で菊池寛賞受賞。また昭和28年からアイヌ民具の収集・保存・復元・研究に取り組み、昭和47年「二風谷アイヌ文化資料館」を開設。2006年に死去。

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Posted by ブクログ

ホントに楽しかった。
読み終わるのがもったないくらいでした。
子どもや親たちがいろりを囲んでおじいちゃんやおばあちゃんの話に耳を傾けている姿が浮かんできました。
絶やしたくない文化です!

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2022年12月31日

Posted by ブクログ

アイヌの人の語りを通して、アイヌ文化を知る。人と自然と神と。神様も自然も、崇拝するんじゃなくて、平等に対等に扱って共存していく。神様に対して人が怒ったりもする考え方が面白いな、と思う。ただ違う世界に住んでいるというだけ。だけど、互いに助け合っている。だから自然を大事にするし、裏切られるようなことがあれば怒りもする。
人にとって都合良すぎない?とも思っちゃう話が多かったり、神様ってそんなのでいいの?!とか思っちゃうんだけど、そういう人間臭い感じも良かった。

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2022年09月05日

Posted by ブクログ

素晴らしく面白かった。

炉端でばあちゃんや近所のおじさん、おばさんが口述で語り継いだ物語を和人の言葉で丁寧に書き起こしてくれている。

物語ごとに丁寧な解説がつく。各物語には子どもたちへ伝えたい教養が詰まっている。


アイヌは神々に対して対等な立場を取っていたなど、興味深いアイヌ文化に触れることが出来る。

確実に失われていってる文化であることが惜しい。

物語自体面白く、読み易いので非常におすすめ。
とっても楽しい時間だった。

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2020年04月15日

Posted by ブクログ

アイヌの人々に伝承されてきた昔話。
全てのものを神として崇め、生活の知恵やより豊かに生きるための教訓が伝えられています。

修学旅行で北海道に行った時、アイヌの方のお話しや唄を聞いたけれど、どんな内容だったのか、、、
あぁ、40年前。

民族衣装や生活の道具の解説もあり、とても興味深く読みました。

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2024年12月04日

Posted by ブクログ

アイヌの昔話は神のせいにできるせいで暴力が強くて面白いんだけれども、神のせいにできるから罪を憎んで人を憎まずができるんだろうね。アイヌの暮らしぶりがよく分かる冒険譚が多くて楽しく読めた。自分語り風の昔話なので動物は主役にはあまりならないものの、クマはやたらいる。スズメもいるよ。とてもかわいい。フクロウもいる。
そんな中にあって、淫乱の群れの話が突出して意味不明で怖かった。良かった

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2024年08月26日

Posted by ブクログ

アイヌの昔話・ウエペケレは興味深い。神と人が近しく、食料としての熊やシカは、狩猟の結果死ぬことによって神になる。他の動植物にも神性が宿っている。そして、人の不利益になることがあると、人が神を叱るという考え方が面白い。物語の構成は多分に教育的でパターン化されている印象。それは厳しい北の大地で自然と共生する知恵なのだろう。破裂音、促音が多いアイヌ語を日本語表記に翻訳しているので、小さいラやレ、良く出てくる地名のユペッなどを、どのようにアイヌの方が発音するのかが知りたくなった。

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2023年10月05日

Posted by ブクログ

なんだろう、面白かったなー
たった数十年前なのに、世の中には沢山の神様がいて、人と共存してたんだなぁ〜

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2023年06月16日

Posted by ブクログ

日本昔ばなしならぬアイヌ昔ばなしです
悪いおじいさんはカムイ(神様)に殺され、良いおじいさんは幸せに暮らす
アイヌには八百万の神以上のカムイ(神様)が存在しそうです

この本を読んでからゴールデンカムイを観るとまた違った観方ができるかも

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2025年01月17日

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