【感想・ネタバレ】ノモンハン 責任なき戦いのレビュー

あらすじ

真珠湾攻撃、太平洋戦争開戦の2年前の1939年、満州国とソビエト連邦の国境地帯で発生した「ノモンハン事件」。見渡す限りの草原地帯で、関東軍とソビエト軍が大規模な軍事衝突に発展、双方あわせて4万5000人以上の犠牲を出した。関東軍を率いたのは、弱冠37歳の青年参謀・辻政信と、その上司・服部卓四郎。大本営や昭和天皇が無謀な挑発を厳しく戒めるのをよそに、「寄らば斬る」と大見得を切った辻によって、日本軍は想定外の「戦争」へと突入していった――。事件から80年、いまも装甲車や塹壕が放置され、人骨が散在するノモンハンの現場を徹底調査、さらにアメリカに残る旧軍人らのインタビューテープを発掘して、事件の深層を立体的に浮かび上がらせた同名番組を書籍化。

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Posted by ブクログ

ノモンハン事件というものをきちんと調べたことがなかったので勉強になった。日本が第二次世界大戦に至るまでの過ちの根源あるいはきっかけがここにあったのではと司馬遼太郎が書こうとして書くのをやめた事件。
自決を強いられた井置隊長の話とか組織として考えられない。そして昭和天皇の命と思って兵たちは戦い死んでいったのに、実は一参謀の功名のためだったのではって柳楽さんの疑義もよく伝わってくる。そしてそれは陸軍だけではなかったのかもなとも思うし、もしかしたら今も?とも思う。それは日本型の巨大組織の病理なのか、それとも人間のつくる巨大組織には一般に当てはまるものなのだろうか。

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2019年11月01日

Posted by ブクログ

太平洋戦争とノモンハン事件の結びつきがよく分かった。つまるところ、敵情の過信と戦力の逐次投入が、権力者によって実施されたことが不幸の始まり。絶対悪がたくさんいると思う一方、そうさせた空気は、当該者だけでは作れないだろう。マスコミなどの論調は、果たして正しかったのか、疑問に思う。
命令に従い、命を落とした人々は、本当に気の毒に思う。しかもそれが、天皇でなく一部の参謀の自己保身から出た命令なら尚更。そして、近畿財務局の自殺の件に触れていることで、形は変われど現代でも似たようなことが起きてると実感させられた。

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2021年06月18日

Posted by ブクログ

偏に第一次世界大戦、第二次世界大戦といっても両手で数えきれないほどの戦いがある。その中の一つの戦争、ノモンハン戦争の理由や舞台裏が書かれている本。
恥ずかしながら聞いたことはあるが、詳しい内容まではこの本を読むまでよく知らなかった。なので、今回知る機会を与えてくれた本書には深く感謝したい。
辻政信という人物がカギとなって起こした戦争。もしこの戦争の教訓を得ていたら、ガダルカナル島の戦争も真珠湾攻撃もなかったのではないだろうか?家族や村の人たちが知る辻政信と軍関係者が知る辻政信、どちらを信じていいかは戦争書物が焼かれたり、保身を守るために嘘をつく国や軍関係者のためにどちらもわからない。でも、数人の軍関係者の名誉のため評価のためだけに何万人という日本軍やロシア軍、敵軍が戦死、死亡したのは事実である。今は亡き私の祖父(満州、ビルマの戦い)に、もう少し突っ込んで戦争の話を聞いておけばよかったと後悔するばかりだ。彼は、戦争の話はしたくなさそうだったが、戦争の悲劇を次に繋ぐためにももっと話が聞きたかった。
とにかく、もっともっとノモンハン戦争やガダルカナル島の戦い、戦争に関しての書物をもっと読みたいと思わせてくれた本。

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2020年08月25日

Posted by ブクログ

ノモンハン関連の本は結構読んでるつもりなので、内容はほぼ理解していたが、テレビの力かNHKの力か、新たな一次証言を拾えているのは素晴らしい。
辻正信の言動やまわりの証言を読んでいるといつも思うのは、頭の良いこと・自分を律する力があること・滅私奉公の精神が横溢していること、イコール、リーダーの資質とは全く違う、ということ。人間性は素晴らしい方だったのかもしれないが、絶対にリーダーにすべき人物ではない。

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2020年03月15日

Posted by ブクログ

ノモンハン事件の実相をえぐる、とまでは行かないが、日本軍の様々なレベルの人がどう関与して紛争がどう推移していったのかが分かる。元々がNHKの番組のための取材ということで、当事者の音声記録に重きを置いているところが目新しい。こうしてみると、軍幹部には太平洋戦争で戦死することなく戦後も結構生きた人が多いなと思う。

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2019年12月23日

Posted by ブクログ

読み進めていくと、呆れちゃうし絶望的な気持ちしか起こらない。誰も責任を取ろうとせず、必死に戦った現場の人間だけが詰め腹を切らされていく。上は我関せずだし、逃げ出す人間までいる。これが巨大組織ってものなんだろうか。現在の政治状況もまるで同じだ。教育改革の頓挫も「誰のせいでもない」ときたもんだ。
軍事的には、近代戦というものが理解できていなかったわけで、これは第一次大戦に参加しなかったのが原因なんだろうね。近代戦は装備の質と物量がモノを言う。信念では大砲は防げないんだ。

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2019年12月19日

Posted by ブクログ

父はノモンハンの生き残りだった。一気に読んだ。特に始めの現地取材やロシアのアーカイブの部分は興味深く読んだ。未だに言い訳がましい主張や本が出る。父も含め兵士は一銭五厘で集められた。替えはいくらでもいると頻繁に鉄拳制裁を受けるなど酷い軍隊生活を語っていた。辻政信など家族に取材したのはいいが、敗戦後逃げまわり、国会議員にまでなったのはどうにも納得できない。

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2019年11月26日

Posted by ブクログ

太平洋戦争開戦の直前、満州とソ連との国境で発生したのがノモンハン事件です。”事件”という名称になっていますが、わずか4か月で日本側約2万人、ソ連側約2万5千人の戦死者を出すほどの”戦争”だったのです。
太平洋戦争では日本軍が情報軽視、補給軽視、精神主義などの悪弊によって特攻や玉砕などの悲惨な戦いを繰り広げましたが、ノモンハン事件にもそのすべての要素がすでに見受けられています。
ソ連軍の物量に関する情報を軽視して安易に攻勢に出ようとする関東軍、それを明確に止めようとしなかった参謀本部、兵力の逐次投入(兵力を小出しに投入すること)などの行動原理で大きな被害を被る結果となりました。さらにこの”戦闘”を主導した軍幹部は軽い処罰で再び軍の要職に復帰しているにもかかわらず、現場指揮官の多くにその責任が転嫁去れると言う歪んだ人事も横行していました。
しかもノモンハン事件終息後の軍内部の研究会では、兵力の近代化の遅れや情報軽視などの要因を指摘する幹部が存在したにも関わらず、必勝を期する信念の不足が敗因であると結論付けられました。もしもこの時にきちんとした敗因分析が行われていれば、太平洋戦争の展開も違ったものになっていたかもしれません。
本書はノモンハン事件をテーマにしたNHKスペシャルの取材班が番組取材の過程についてまとめたものです。上述したようなノモンハン事件に関する詳細なデータや、関係者へのインタビューなどを交えて非常に読みやすく、昭和の転機となった歴史上の出来事について押さえるべき点を理解することができます。

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2019年11月03日

Posted by ブクログ

「数千の英霊を犠牲にした場所を放棄することはできない」
本来、これまでの犠牲と今後の作戦とは関係無い話である。にも関わらず、撤退とはつまりこれまでの犠牲を無駄にするということか、とまるで「撤退=犠牲は無駄」と言わんばかりに否定し得ないものと関連付けさせて訴える。これに類することは現代でもみられる習性と感じる。

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2019年10月08日

Posted by ブクログ

ノモンハン 責任なき戦い
著:田中 雄一
講談社現代新書 2538

NHKの番宣なのか、「ノモンハン責任なき戦い」NHKスペシャルと連動したもので、著者の田中雄一氏は、NHKのディレクターだ

①歩兵中心の軽装備の日本軍を、最新鋭の近代兵器のもつソ連軍に投入した
②そして敗戦処理について、現場の部隊長らが、自決と言う形で責任をとらされた
③その原因は、関東軍参謀の辻政信とその上司である服部卓四郎である

が本書の主旨である

気になったのは以下です。

・結局、ノモンハンを止めたのは、昭和天皇の激怒だった。というか、日本軍を収拾できるのは、515、226以来昭和天皇しか止められない
・がしかし、聖断あってもなお、辻は日本兵の遺体収容のために、戦争を継続しようとしていた

・もともと、ノモンハンの遠因になったのは、ソ満国境、蒙満国境が不透明で、国境線を策定していなかったため、相互がそれを拡大解釈、実効支配をしようとしたために、武力衝突が頻発した
・さらに、関東軍の人事異動で、一番状況に詳しい辻を残してしまったことが、紛争から戦争に発展するきっかけとなった。

・辻は、自分がつくった「満ソ国境処理要綱」を実行して出世したかった。参謀として、歯止めが利かない状況下では、やむを得なかった。

・石原莞爾が関東軍とソ連軍の装備の余りにも違いに対して、兵装を近代化しようとしていたのだが、中国での紛争拡大に対して、原資を確保することができず
壊滅した23師団のように、日露戦争当時に兵装しかもっていない部隊を国境ラインに配備せざるをえず、かつ、運用してしまった

・当時の関東軍は、スターリンを見誤っていた。スターリンは病的なほど臆病な男であり、書面に書いたことでも、実力にて確保できなければ信じることはしなかった。ようは、モンゴルを関東軍に蹂躙させたままで欧州戦線に兵力を転戦することなど考えられなかった

・日本軍の被害を多くしたのは、生きて虜囚の辱めを受けず、である
日露戦争のときは、恥でもなんでもなかった捕虜については、昭和の時代には、民間にまで、捕虜になることは、死ぬより恥ずかしいこととなっていた。

ノモンハンの敗戦は極秘とされ、関連者の処分のために、粛軍人事がおこなわれた
壊滅した23師団の部隊長である、井置栄一中佐に、自決を強要する
井置が自決を行ったため、その死は戦死ではなく、単なる個人の都合による死、このために、恩給が出ることはなく、戦後、残された家族は、赤貧にあえぐこととなる

一方で、辻、服部は、1年余、再び参謀として、マレー戦などを指導していくこととなる。その先にあったのは、ガダルカナルや、インパールと言った兵站を無視した作戦である

ソ連が残していた資料を基にしているとはあったが、内容はインタビューが中心であり、ノモンハンが3次にわたる戦争であったにもかかわらずその言及はなかった。

出来得る限り一次資料にあたるとの言もあったが、そのリソースは、主旨をかたるために、偏ったものになってはいなかっただろうか。

現に、ノモンハンは、複数の部隊からなる統合作戦であり、航空機をふくめた一体運用がなされているが、そのことにも言及されていない。

目次
序章 陸の孤島
第1章 関東軍VS.スターリン
第2章 参謀・辻政信
第3章 悲劇の戦場
第4章 責任なき戦い
第5章 失敗の本質
第6章 遺された者たち
あとがき いま戦争を語るということ
主要な参考文献

ISBN:9784065168578
出版社:講談社
判型:新書
ページ数:248ページ
定価:900円(本体)
2019年08月20日第1刷発行
2019年09月17日第4刷発行

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2024年09月05日

Posted by ブクログ

ノモンハン事件っていまいち掴みづらい。

もはや、事件レベルではない。

さらにいうと、紛争こえてるし。

ルポを、見てさらにそれを認識した。

張鼓峰事件とのつながりとかがもっと有れば、わかりやすいのか?

んー、勉強不足である。

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2022年01月31日

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