【感想・ネタバレ】天皇への道のレビュー

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ 2019年02月06日

退位を機に読む。1991年に読売新聞に連載された[年皇太子の昭和」の加筆修正された文庫版。
決して英傑の質では無かった凡庸な少年が、義務と責任から逃れず、為すべきことを着実にこなし、平和と理性と停滞の時代と言うべき平成の世に日本史におけるひとつの理想とも云うべき天皇として在位することになった、明仁皇...続きを読む太子と
しての激動なるざる前半生。
美智子妃とのご成婚という難事を成し遂げたところで本書は終わる。
ひとりの人間にこれほどの重荷を背負わせる天皇制は、やはり次の御代で終わらせるべきだろう。

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Posted by ブクログ 2017年08月23日

1989年(昭和64年)1月7日午前6時33分、昭和天皇崩御。その約
3時間後、「剣璽等継承の儀」が行われ、第125代天皇として今上
陛下が即位された。

本書は今上陛下の誕生から正田美智子さん(皇后陛下)とのご結婚
までを追った1991年発行の単行本の文庫化である。文庫化にあたり、
「文...続きを読む庫版のためのあとがき」と、今上陛下の高校までの同級生である
明石元紹氏の「解説と私見」が加えられている。

昭和天皇と香淳皇后の間には4人続けて皇女が誕生した。日嗣の
御子の誕生を、周囲も国民も待ち望んだ。1933年12月23日、待ちに
待たれた皇子が誕生した。

称号は継宮(つぐのみや)、名前は明仁。昭和天皇はおじいさまである
明治天皇が崩御するまでは皇孫であったが、今上陛下は生まれながら
の皇太子である。

わずか3歳で両親陛下のお手元から離され、御用掛や侍従などの大人
ばかりに囲まれた生活が始まる。昭和天皇はご自身の下で生活する
こと、それが無理なのであればせめて姉宮たちと一緒にと望まれて
いたようだが、天皇家という特殊な立場がそれを許さなかったのだね。
ようやくお子様方を手元で育てることが出来たのは、今上陛下になって
からだもの。

だからと言って、家族愛に恵まれなかったかと言えばそうではない。
昭和天皇も香淳皇后も、折に触れ我が子への愛情を示されている。
特に表立って発言することがほとんどなかった香淳皇后が、日光に
疎開されていた今上陛下に送られた手紙から母としての深い愛情
が伝わって来る。

戦中から戦後へ。今上陛下もまた、激動の時代を生きて来た。そこに
は敗戦を受けて変わらざるを得なかった皇室の在り様や、新しい憲法
に記された「象徴天皇」とあるべき姿への模索もあったのだろうと思う。

以前も今上陛下のことを記した作品を読んだ時にも感じたのだが、
生来の気質もあるのだろうが成長の過程で大きな影響を与えたのは
英語教師だったバイニング夫人と東宮参与だった小泉信三氏なの
だな。

将来は天皇になることが生まれながら決められていたとは言え、大学
進学の際に希望した生物学を専攻できなかったり、叶えられなかった
希望も多かったことだろう。即位されてからお得意の乗馬をお辞めに
なられたのも同じか。

その中でも学生時代の「銀ブラ事件」や、イギリス・エリザベス女王の
戴冠式出席の為の海外周遊では多少の自由を味わえたのかな。
イギリスでは侍従の付き添いはあったとはいえ、ご自身でお買い物を
されたりの描写は楽しそうだもの。

「後退したること、これは私の宿命であり私の意思を越えたことであり
ます。この点で私は皆さんをうらやましく思うこともあります。それは
恐らく、皆さんの豊富な多様な人間性に対するあこがれでもありま
しょう。しかし私は私に与えられた運命を逃避することなく、運命の
奥に使命を自覚し、これを果たすことが私の現在考える最もよい
生き方ではないかと思います。(後略)」

皇太子時代、学習院の祝賀会で述べられたお言葉である。美智子
皇后という素晴らしい伴侶を得、象徴天皇としていかにあるべきか
を思考し、「国民と共に」歩まれている今上陛下。

先日、生前退位のご意向が報道された。陛下ご自身は未だこの件に
ついて明言されていないが、象徴天皇としての在り様を体現されて
来たのだから、そろそろ少しゆっくりされてもいいのかな。

次代は不安だけれど。

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Posted by ブクログ 2017年02月20日

昨年に退位をめぐる「おことば」を発表して以後、その一挙手一投足がますます注目の的となっている今上天皇陛下について、その生い立ちから天皇になるまでを追ったノンフィクション。わたしは人間としての今上天皇にすごく興味があったので、たとえば幼少期に受けた教育内容などを詳しく知ることができてよかった。立場上ハ...続きを読むッキリとは明言されていないが、今上陛下はあきらかに平和主義者で、憲法改正にも否定的で、安部晋三内閣総理大臣が志向しているものとは真逆の方向性をもっていると思うが、その礎はこのころにあったのだなと思う。垣間に登場するエピソードも、やはり人柄が偲ばれるものばかりである。いっぽうでやはり時代のスタンダードは軍国主義なわけで、当時は幼い皇太子であった今上陛下にもそういった発言がでてきて、ドキリとさせられる。いつも監視されていて窮屈な生活からたまには抜け出してみたいと思い、護衛を欺いて学友と「銀ブラ」に繰り出すくだりなどは、映像が浮かんできそうなほどおもしろい。やはり、天皇であってもひとりの人間なのだ。全体を通して良作であると感じるいっぽうで、どこか掘り下げかたが足りないというか、もうすこしという部分も随所にあって、惹句にあるような「名著」であるかどうかには疑問の餘地もある。もっとも、天皇という職業を考えた場合、一から十まで知ることはたとえ最側近であったとしてもおそらく不可能であるので、ほかの誰が書いたとしてもこれ以上の情報量が望めるかどうかもまた疑わしい。

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