【感想・ネタバレ】江戸の思想闘争のレビュー

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Posted by ブクログ

本書の冒頭では、デリダの「パルマコン」をめぐる議論や、レヴィ=ストロースの贈与論などが参照されており、そうした現代思想の問題設定にもとづいて日本近世の思想家たちの議論、とりわけ彼らのあいだで戦わされた論争について考察をおこなっている本です。

伊藤仁斎や荻生徂徠、太宰春台などの儒学者のほか、賀茂真淵、本居宣長、平田篤胤などの国学者がとりあげられ、さらに最終章では、「鬼神論」の現代的な展開のありようを柳田國男と和辻哲郎の議論のなかに見ようとする試みがなされています。

本書の「あとがき」で著者は、日本近世思想にかんする著者の知識は子安宣邦から学んだものだと述べていますが、日本思想史研究にフランス現代思想の問題意識を持ち込んだ子安の研究スタイルが踏襲されており、おもしろく読むことができました。ただ、こうしたスタイルが採用されている以上しかたのないことなのかもしれませんが、それぞれの思想家たちの議論そのものに深くコミットせず、著者自身があらかじめ設定しておいた議論の枠組みに考察の対象となる思想家たちが押し込められているような窮屈さを感じてしまいます。

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2020年06月17日

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