【感想・ネタバレ】財政破産からAI産業革命へ 日本経済、これから10年のビッグ・シフトのレビュー

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Posted by ブクログ 2017年09月24日

日本の財政危機であると警告した本を何冊も読んできた私は、この数年、それを否定する本が出てきて、それを私なりに納得していました。この数年で日本国債を購入してきた金融機関(シンジケート団)に変わって、日本銀行が大量に購入するようになったのは、ずっと気にはかかっていましたが。

その一方で、日本の人口減少...続きを読むは益々拍車がかかり、さらに少子高齢化が進む一方、団塊の世代が定年および定年延長期間を終えて、年金を受給する側にまわり、長年蓄えてきた貯金を取り崩すようになりました。

また私の勤務する業界も含めて全ての業界に影響を及ぼす、AI・3Dプリンター・自動運転・ロボット技術等、人間の介在を不要とする技術も加速度的に発達してきているようです。

この本は、巷に出回っている「国家破産本」ではなく、それ以降に日本はどのような社会になっていくのかを見通した本であるのが特徴的です。その変化が起きるのが、最大のお祭りになるであろう、2020年の東京五輪の後、5年以内に、私の社会人生活の終盤戦で、とてつもない変化が起きるようです。

その変化は起きる可能性はかなり高そうですが、その新しい時代に対して、どう向き合っていくべきか真剣に考えさせられた、記憶に残る本となりました。

以下は気になったポイントです。

・70%の確率で国家破産になる、残りの30%の確率は国家破産しない代わりに、金利を低く保つ金融抑圧(英国病p34)の成功(10年債の金利を0%に誘導)である。物価が2%程度上昇する中で低金利が続けば、国家破産しないが、円は長期下落となる(p31)。するとコストプッシュ型インフレとなり、英国のように実質的な国民所得と社会保障費が下がり続ける、10年で22%、20年で48%所得が減るのと同じことになる(p33)、つまり、財産破綻後の歳出の必要な削減と同じことになる(p4、34)

・ハイパーインフレは、戦争後のように、生産力が50%以上破壊された経済の中で、マネーが100倍以上供給されないと起きない。ただし、通貨安による輸入物価のインフレは起きる(p5)

・次の技術革新は、2022年頃から産業に広範囲に導入される人工知能(AI)である。これは18世紀の蒸気機関のように大きなものとなる(p8)

・GDPは、需要面・所得面・生産面があり、三面等価の関係がある(p39)

・2013年4月からの異次元緩和は、金融機関の国債が、日銀の当座預金に振り替わっただけ、世界と企業のお金が増えて、預金(マネーサプライ)が増えているわけでない。国債を売った銀行の当座預金が増えるのが金融緩和(p43)

・消費は1年以内に使ってしまうもの、投資は建物や機械のような耐久財をいう。消費することには変わりないが、税法では耐用年数で消費すると考える(p50)

・2016年度では、年間170兆円の国債発行のうち、1)80兆円:日銀、2)国内の金融機関は満期到来分の70兆円を買い換え、3)20兆円分は、海外金融機関(現在は10%まで上昇)や年金ファンドが購入(p56、158)

・国債は金融機関が満期を待ち、ずっと持っているのではない、あまり知られていないが、1年に1.5回転するくらい売買されている(p58)

・中国は1979-2015年までの一人っ子政策を原因に、2030年から人口減になる、2060年には日本の人口より多い1.4億人が減り、60歳以上が4.2億人という超高齢国になる(p74)

・2015年の民間企業の設備投資は70兆円、企業所得は83兆円、減価償却は108兆円、設備投資が減価償却費より少ないと、老朽化する(p79)

・2009-2015年の資本増加(=0%)は、設備の総残高の増加のことで、新しい設備投資から減価償却を引いたもの(p103)

・総資産が350兆円あった、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の合計資産は、288兆円である。三菱UFJの連結資産:298兆円についで二位(p132)

・特別会計は、二重計算を除いた純額で、201兆円(2016年)で、一般会計の2倍ある。(p135)

・財政の支出は拡大しているのに、GDPが伸びなかった1990年から26年間も税収が減っていたことが、国債が増えた理由である(p148)

・1000兆円を超える国債残があるのに、利払いは9.8兆円、26年前の1990年には、現在の6分の1であったが、利払いは10.8兆円(p155)

・我が国の物価下落は、貨幣現象ではなく、1)人的生産性が1%のなか、労働の非正規化による平均賃金の低下、2)世帯所得が減少、が原因(p174)

・円安と株価上昇、円高と株価下落は見事に重なっている、1円の円安につき、株価上昇は300円(p193)

・中国は2015.16年に民間に対抗して元安を抑えるために行った、元買い・ドル売りにより、純債務国に転落していると推計できる、サウジアラビアも原油価格の低下により資本輸入国となっている(p203、204)

・日銀マネーを使っている官製相場は、最長でも今後2年しか続けられない、2018年に政治相場が終われば日経平均は数千円(5000円程度)下がるだろう(p241)

・日銀が国債を買っている理由は、40兆円規模の新規国債のため、世帯の純預金(預金-負債)が低下し、企業預金の増加しかなくなったため。このため、危機の到来は、2018-19年か、最長では2020-21年まで引き延ばされた(p253、255)

・金利が下がり価格が上がったのは、金融機関が入札した国債を、利下げをするため、日銀が高く買ってきたから。額面100万円、発行時金利1%の10年債を、102万円で買うと、金利は0.2%下がって0.8%となる(p272)

・国債を安全資産とするBIS規定は、2010年からの南欧債の下落問題を主因に、19年に解除される(バーゼルⅣ)。すると、国債保有額に応じた自己資本の積み増しが必要となる、利益または増資で、自己資本を増やせない金融機関は、保有国債を売らねばならなくなる(p274)

・財政破産で3年の緊縮財政に耐えるか、金融抑圧により英国のように50年間も続く慢性病にかかるかの選択である(p307)

・日本は米国の10年先に高齢化、中国は日本の20年遅れ、米国リーマン危機の10年あと、2018年に中国の不動産バブルが弾けると予想される。ドイツは15年遅れ(p341)

・2020年には、一般路を走るとされるAI自動車が発売される。世界のメーカがほぼ同時に発売し、人と商品の輸送を変えて、経済も変える。経済取引は、財の生産(加工)と、財の移動(運搬)なので(p345)

・AIトラクターは、予期されない障害を避けた、運転・農薬散布・種まき・収穫・脱穀を行う。人間の3倍・24時間働く、週休2日でもないので、実際は5倍だろう。なので農家の5軒で共有し、コストは5分の1(p345)

・19世紀の蒸気機関が、21世紀のAIである、その一つのケースが、ケースIH社のAIトラクター、これが3年先の2020年には、今よりはるかに進歩する(p347)

・我が国の不足する現場労働を補うのは、AI自動車とともに、高度化するAIの農業機器とトラクター(p349)

・21世紀の半ばには、多くの組織は解体され、個人事業との連結になる。内部コミュニケーション、教育、訓練、統制というコストが必要な組織は非効率となる(p358)

・最初はぶつかるが、自己学習をして、ある瞬間(学習の臨界点)から、相手の進行を予測して方向を変えるようになる、1)認識した車の方向を、確率で予測するプログラム、2)予想した方向とは交差しないよう、方向を自己修正するプログラムが組み込まれているから(p361)

・自動走行の車は、人工知能が制御するロボットである。脳にあたるのが人工知能、モーターとハンドルの走行機械がロボットである(p362)

・2016年8月から販売となった、日産セレナは、高速道路の1車線に限ってドライバーが設定する、時速30-100で自動走行ができる。車線変更は2018年からの予定、2020年からは、交差点の一時停、事故防止の急停止を含む、一般道の自動運転ができるといわれる(p363)

・自動走行の4段階、1)部分自動化(実用化済、緊急自動ブレーキ・クルーズコントロール・車線維持支援)、2)複合機能(1車線でも自動運転、自動駐車:実用化の途中)、3)高度な自動化(市街地での一般道手放し運転、2020年予定)、4)完全自動化(運転手のいない自動運転、2020年より)(p365)

・人工知能の4レベル、1)単純な制御プログラム(自動センサー、反応神経レベル)、2)古典的な人工知能(掃除ロボット、2015年までの将棋プログラム、医療自動診断プログラム)、3)機械学習を取り入れた人工知能(ユーザー検索から、買いそうな商品を自動表示、予測する機能)、4)深層学習を取り入れた人工知能(モノを区分する特徴量を自己学習によって自分で発見、判断)(p368)

・2010年代の画像認識から始まった深層学習(ディープラーニング)によって、コンピュータは自分で経験を蓄積して自己成長するAIになった(p371)

・人間のあらゆる判断は、実は予測である。この食べ物がおいしいかどうか、過去の美味しいものの経験に照らし、ほぼ70%以上合致すれば、おいしいと判断している(p383)

・ウーバーにおいて、料金の80%をもらうドライバーと登録車をWIFIで監視している、降りたらドライバーと車を5段階で評価する(p388)

・一人分の労働をする機械には、給料を払う必要はない、年間の経費=AI機械の購入費÷耐用年数、がかかるのみ(p392)

・2022年頃から(財政破綻の後か、金融抑圧の中)、第五の革新の波がセットとなって成長する時代を迎えるだろう。技術として、1)ユキビタスコンピューディングになるPC,携帯、WIFIのインターネット、2)ナノテクノロジー、3)人体の部位取り替えに至る生命工学、4)AI搭載したロボティクス、5)機関技術の深層学習型AI(p405)

・我が国からのマネーの海外への純流出が、1年に5-15兆円ある、その結果が対外純資産の増加(327兆円:2016)である(p408)

2017年9月24日作成

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