あらすじ
【佐藤史生コレクション1】坂田靖子氏・竹宮惠子氏 推薦!
あらすじ「あき家になっている祖母の家で雨宿りをしていた奇妙な青年“雨男”と出会った七生子。青年から、幼い日の七生子を知っているという思いがけない告白を受け…。」
多感な少女の揺れ動く心を描き、読者の共感を得た人気連作“七生子シリーズ”のほか、代表作『ワン・ゼロ』の原型となった「夢喰い」、そして貴重な単行本初収録となる「マは魔法のマ」「一角獣にほほえみを」の2作品を収めた豪華作品集。
巻末には、24年組の拠点で“女性版トキワ荘”ともいわれる「大泉サロン」の主宰者で、長年親交の深かった増山法恵氏による解説を特別収録。
著者について「2010年4月に急逝した漫画家・佐藤史生。 「別冊少女コミック」からデビューした後、SF、ファンタジーの要素を巧みに取り入れた作品を多数発表するも、2000年に刊行した『魔術師さがし』(小学館)以降は新作が発表されていませんでした。 佐藤氏は、1970年代に現れ日本の少女漫画界をリードした少女漫画家たち、いわゆる “24年組”に対して、年齢や作風から“ポスト24年組”の一人として数えられている作家の一人ですが、少女漫画の枠に当てはまらない独自の世界を築き上げたことで、漫画ファンの記憶に長くとどまり続けています。」
収録作品 :雨男/死せる王女のための孔雀舞(パヴァーヌ)/さらばマドンナの微笑/我はその名も知らざりき/夢喰い/あとがき/マは魔法のマ/一角獣にほほえみを/解説(増山法恵)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
穂村弘さんが、年に一度は彼女の全作品を読むことを、彼のエッセイで知り、興味を持って買いました。
まず、猫丸さんに勧められた、「夢喰い」を読んだ。
外国の神様のことはよく分からなかったけれど、家族の絆の素晴らしさと、血縁の凄まじさに、物理的な作用は全く影響しないことを、教えてくれたような気がしました。幻想的でいて、現実的な感覚も持てるような、不思議な名作。
次に、「七生子」シリーズ。
私としては、こちらの方が好きかも。
まず、主人公の高校生「加賀見七生子」の初登場時の、メランコリックな影を感じさせつつ、強気っぽくも凛とした、その佇まいに惹かれるものを感じ、印象的でした。
それから、物語の設定には、その時代特有の厳格さと不自由さがあり、描きようによっては、メロドラマになりかねないが、そんな時代においても、それに必死で足搔こうとする姿に、愛の偉大さと人間のやるせなさを感じさせるとともに、七生子と、その父と母を取り巻く、家族の絆を問いかけており、そのひとつひとつの真実が明らかになるにつれて、七生子が改めて思う、父とは母とはなんだろう? と、そんな家族愛を考えさせてくれる内容には、人間の、理性と本能の間に立つ苦しみもあることから、表題作の、両親の内なる想いに気付いたときには、思わず、感動の涙が零れました(亡き王女とマドンナも同様に切なかった)。
物語の中にある、
『飛べない奇型の翼があんなに美しいのは 神様の好意だと思う? それとも悪意だと思う…?』
と疑問を唱えた人物の心境は、私の望むものは、それでは無かったと言っているようにも思われるし、生きるにあたって、望むものはひとつしか叶わないのかといった、慟哭にも思われました。
親は子を選べないし、子は親を選べないと言うけれど、生まれてきた後ならば・・ということも考えさせられた、七生子シリーズにあたって最後の話は、七生子自身の、愛の行方とは裏腹に展開される救いの物語で、まさかこんな結末だとは思わなかったが、長く生きてきて救われた者と、これから長い人生が待つ、七生子の少女の素顔を垣間見せるような、繊細な痛みとの、見事な対比が素晴らしく、ストーリーテリングと、その表現力に優れた方だなと感じました。
シリアスな中にも、ユーモアに溢れた描写もある、人間を描いた物語に、凜々しくも影のある美しい絵と、私がこれまでイメージしていた少女漫画とは、なんだか違うようだし、オーバーかもしれませんが、凄い人に出会えたなという思いでいっぱいです。
それから本書には、商業誌未発表作品の、「マは魔法のマ」と、「一角獣にほほえみを」が初収録されていまして、前者は、コメディタッチの舞台劇を観ているかのような、キラキラした絵柄とエンディングがまた素敵な作品で、後者は、人間とは異なる生命体の、宇宙の一部分でいたいと思わせる、その想いに胸を打たれる、切ない作品でした。
こうなると、もう佐藤史生コレクション、全部買いたくなるなあ。どうしよう。
Posted by ブクログ
七生子シリーズ。
と、「夢喰い」がはいってます。
七生子シリーズが読みたかったので手に入れたんだけど、「夢喰い」もあって、もうめちゃくちゃ得した気分になったよ。
「ワンゼロ」へと続く、というかその前哨戦みたいな作品だけど、実は「ワンゼロ」より好きだったりするのだ。っても「ワンゼロ」の最後の、全てが終わってどっかにいってしまった都祈雄の何もかもを超越したような笑顔の絵は、今も網膜にやきついてる。
とはいえ、読み返してなんでこれがここまで琴線に触れるのか、やっぱりよくわからん。
が、やっぱりなんか胸にしみるというか、震えるんだよね。
不思議。
そして七生子シリーズ。
これのおかげで、ラヴェルにはまったのは遠い思い出ww
繊細な、本当にガラス細工、いやそれよりもっと細やかな心情を描きつつ、七生子の生命力が作を追うごとに輝いていく。
ああ、命はこのように育まれて、育んでいくものなのだなと思うのである。
…もっと、もっと描いていたかっただろうな。
萩尾望都の「アメリカンパイ」のように、私は決して佐藤史生という存在を作品を、彼女の思いを、忘れない。
きっと、生きるっていうことはそういうことなのだろう。
Posted by ブクログ
佐藤 史生といえば、「夢見る惑星」と「ワンゼロ」です。
特に、「ワンゼロ」は、独特の世界を持っていて、おもしろかった。
本当に、あの頃の少女マンガは、凄かった。SFだった。
「夢見る惑星」のおもしろさがわかったのは、文庫で読み直したとき。多分、はじめて読んだときは、イリスが、幻視の力を持っていなくて、実は人を謀っていたということが、まったく理解できていなかったのだと思います。
でも、それ以来、あんまり読んでいなくて、アリス・ブックあたりで、「夢見る惑星」の続編を読んで、それ以来ずっと。
実は、お亡くなりになっていたということも、この選集がでるようになってから知りました。
だから、この本の中の話は、多分、「ワンゼロ」番外編の「夢喰い」以外は、初読みです。
七生子シリーズは、ちょっと堅い感じのする少女マンガなのですが、傑作でした。
そして、独自なものをもっていながら、それでもやっぱり大泉サロンの雰囲気が漂っているのが、今読むとわかる気がする。