あらすじ
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危機の時代にあって批判的姿勢を貫き、1940年、自殺と思われる死にいたる。歴史にあらがい、歴史を逆なでした20世紀屈指の批評家、その生と死、その完結せざる生と死を、<ここ-いま>に呼び起こす。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ベンヤミンは亡くなった時、48歳だったのね。なんか老けた写真が多いのでもっと年を取った人なのかと思ってた。この本は、ベンヤミンの思想というよりは、その人間関係やいろんなエピソードを中心にその生涯を追ったもので、彼の人となりが見えて興味深い。面倒なやつだったのね。どんな考え方の人でどんな経験をしてきたかを知ると、ちょっと難解気な彼の言葉も、共感をもって理解できる気がしてくる。面白かった。けど、解説が難解でちょっとげっそり。編集者としてはバランスを取ったつもりなのだろうか…
Posted by ブクログ
ヴァルター・ベンヤミンの生涯において、クレーが描いた<新しい天使>は、自身を見つめ直すための存在だった。三人の女性に彼は恋をし、うち一人とは結婚をするが、やがて離婚する。女性に恋をしながら、彼は、その女性を通して彼自身の女性性を見つめていた。彼の人生は常に二重性を帯びている。天使とサタンの。男性と女性の。自身の過去とこれからの人間関係をある日一瞬のうちに見てしまった彼は、人間関係をさまようように、パリの街を徘徊し続ける。抑圧された過去を解放し、それにより現在を未来に開かれた形で再生させるのが彼の願いだったが、ドイツはファシズムに覆われ、彼の試みは挫折する。亡命途中に道を閉ざされた彼は自ら命を絶つ。補章には、彼がファシズムに対しどのように抵抗し、自死を選んだか、当時の同行者の手紙が引用されながら、詳細に書かれる。本書の最後のほうで、著者は、ベンヤミンがかつて埋葬されたといわれている墓地を訪れる。著者が感じた海風を私も感じながら、このような人が自死を選ばざるをえなかった過去を思いつつ、今現在を生きている。
Posted by ブクログ
感無量。
翻訳者である野村修先生による、愛情と熱意のこもったベンヤミン思想の遍歴を中心に探訪していく良著。
現実を絶え間なく見つめるベンヤミンの思考の記述は、確かにフーコーやドゥルーズのフランス思想家に受け継がれていく。
ポルボウでの絶望を乗り越えて欲しかった…。そしてその後の時代を、彼自身の類まれなる明晰な批判性でもって鋭く論じる、そんな過去があったらと無駄な想像をしてみる。
Posted by ブクログ
パウル・クレーに「新しい天使」という絵がある。
長い間ヴァルター・ベンヤミンの手元にその絵はあって、彼のインスピレーションを生んだ。
ベンヤミンはナチス・ドイツに追われて自殺した思想家。
彼を知ったのは、スーザン・ソンタグの本から。「土星の徴のもとに」。土星はメランコリーの象徴。おそらくこの文章からの引用
「すなわち、ぼくが土星-もっともゆっくりと回転する、廻り道と遅延の惑星-のもとで生まれたという事情を利用しつつ」
何だか訳もわからず、晶文社のベンヤミン全集を買い揃えたのが20年位前のことだろうか。その後飛び飛びながら読み続けているけれど、良くわからないのは現在も変わらない。でも、この廻り道と遅延の惑星に魅かれているのだろう。
本書は、その署名のとおりの内容。「新しい天使」の解釈から書き起こされ、以下各章の冒頭に年表を配し、年々時代に追い詰められ、死を選んでしまうまでが描かれている。
今年は残り半年も無いけれど、もう一度ベンヤミンを読み返してみようかという気になった。