【感想・ネタバレ】言語と行動の心理学 行動分析学をまなぶのレビュー

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Posted by ブクログ

RFTやACTの基盤となる言語行動に関し、簡潔にわかりやすく説明されている良書。
RFTにおいては、言語行動には、出来事と考えを一貫して関係づける特徴があるということが超重要である。まず前提として、刺激等価性により、人間は出来事間に物理的な類似性がなくても互いを関係づける能力(言語能力)を持っている。このような特徴を有する能力によって、人間同士がコミュニケーションをとるとき、話し手と聞き手の言語の間には一貫性があることが求められる(一方が「ペン持ってきて」と言ったら、もう一方がペンを持ってくるというような)。したがって、話し手の指示に対し聞き手が正しく反応することで、同一の言語コミュニティ内では言語行動の一貫性が強化される。
このような、言語行動における話し手と聞き手間の一貫性は、自分自身の中にも般化され、強化される。つまり、話し手であり聞き手である自分の言語行動(=「考える」という行動)と一貫した行動をとることが強化されるということである。なぜなら、社会的には考えていることと行動が一貫していることが望まれ、強化されるからである。
しかし、この言語行動の一貫性は、いつどんな状況においてもうまく機能するわけではない。常に言葉を「字義通り」に受け取っていてもうまくいかない場面があるにもかかわらず、言語行動のこのような特徴により、うまくいかない行動が維持されてしまう(随伴性知覚が鈍麻している)。これは社会心理学の確証バイアスにも通じるところがあるのかもしれないが、出来事と非機能的な考えが関係づけられると、考えと一致しない出来事が起きた時に、出来事と一貫性が保たれるように新たな言語反応が作られ、「ああやっぱりそうなんだ」という納得感を得てしまうことで、非機能的な考えが維持されてしまう(認知的フュージョン)。
この、新たな言語反応によりバーチャルな世界が作られ、その中で「概念化された自己」が形成されていく。この状態だと、価値に沿った行動をしようとする過程で生じる不安などの不快な私的事象が生じたときに体験の回避をするようになってしまう。この状態を抜け出すために、単に出来事そのものを観察して記述することを目的とするマインドフルネスを導入する。これにより脱フュージョンして、状況や視点の違いにより自分の体験も常に変わることに気づき、「プロセスとしての自己」の状態になる。これを続けていくと、思考や感情は絶えず変わるが、その中でも「自己」は変わらないことがわかってくる(例えば、「私は日本人である」など。価値にも通じる)。これが、「文脈としての自己」である。この状態が確立操作であり、弁別刺激に対し柔軟な言語行動をとることができ、変えるべきことと変えられないものを弁別し、変えるべきことを変えて価値にコミットし、変えられないことはアクセプトしていき心理的柔軟性が高まることで、ウェルビーイング向上につながっていく。これが、ACTの基本的枠組みである。

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2020年08月30日

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