【感想・ネタバレ】だから僕は君をさらうのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

純愛ミステリーというものをあまり読まないのだけれど、とてもよかった。

主人公の過去、そこからくる彼の生き方、本当にこのままでいいのかと自問自答。

まっすぐに見つめる、天真爛漫に見える彼女、彼女の背景もまた苦しいもの。「居場所はあっても、生きていく場所がない、独りにしないで…」

牛脂と卵とネギのチャーハン。
シンプルな料理が彼ら二人を繋ぐものだった。

昔、怖くて守れなかった初恋相手への贖罪。
大切な人を守るために考えた優しさからくる行動、嘘。警察にも裁判でも自分が作ったストーリー以外は知らないといい続ける。彼女を守るための強さ。

どんな相手にも調子を合わせ、本音を隠して不協和音にならないように生きてきた守生。(少しずつ変化する。自分の声に逆らう。)

裁判、逮捕後など皆、それぞれの方法、やり方で守生を守ってくれた。

たまたま知り合ったケンさんと友だちの将弘の存在がいい。
葵と守生が、あることをきっかけにやりとりする場面、本音を語るところもいい。



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2023年09月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

Twitterのプロモーションで気になったので。

こんな優しい犯罪があるのだろうか。
一人の少女の「これから」のために今後の自分を犠牲にできるだろうか。
それを彼はやってのけた。

彼には負い目があった。
自分の父親が犯罪者だったこと。
知らなかったとはいえ交流を持った少女が、かつて父親が誘拐した少女の娘だったこと。
そして、父親の事件で彼は……
だからこそ、今度こそ、彼は自分の身を投げ打ってでも、これから少女に降りかかるであろう厄災から守ろうとした。
それが自分のエゴだろうと。

少女はまだ中学生。
だから、色々な面が幼い。
今の自分の行動がどんな結果をもたらすか見えていない。
それは致し方のないこと。
まだまだ失敗してから学ぶ時期だ。

ただ状況が悪すぎた。

彼女はただ逃げたかった。
自由になりたかった。
十代の世界はまだ小さくて、見えない世界も多いけれど、その小さな世界の中で生きないといけない。
だから息も詰まる。
学校は監獄で、両親は彼女に優しくなかった。
ただ彼の所にいるときだけ、彼女はのびのびとできた。

ただそれを世間は許してはくれなかった。

「だから僕は君をさらう」本当に秀逸なタイトルだと思う。
彼の今の精一杯がこれだった。
必要なことだった。
それが世間一般には犯罪と言われることでも。

ただ彼の世界そのものは、決して悪くはなかった。
普通ではないけれど、彼を理解してくれる友人も知り合いもいた。
彼が何故罪を犯したのか、読み解こうとしてくれた人がいた。
理解してくれた人がいた。
それだけでも救いだ。

結局は誰もが一人では生きていけない。
そして、いざという時その絆が活きるのだろう。
その大切さにも気付かされた。

そして、いくら離れても切れない縁もある。
彼が犯罪者になろうと、彼女との縁が切れなかったのは、それが必然の縁だったからだろう。
相棒のサックスとも。
名曲に載せてのラストシーン、余韻もまた素晴らしい作品だった。

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2020年11月21日

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