あらすじ
4万人の日本人を救った、史上最大級の人命救助作戦
戦うための船から、救うための船へ。
昭和20年8月15日、玉音放送。
しかし、世界最古の正規空母「鳳翔」と、若き海軍兵たちの「戦い」は、まだ、終わらない――
終戦直後、知られざる復員船の激闘を描いた、涙なしでは読めない、感動の戦争ノンフィクション!
凄絶な呉の大空襲を生き残り、戦後すぐに復員船へと転じた、空母「鳳翔」。
日本海軍が誇る伝説の艦がたどった数奇な運命と、その一部始終を見届けた若き海軍通信兵が語る、「果てしない航海」の記録――
「これだけは伝えたい」
元海軍通信兵・山本重光、96歳。
戦後を強く生き抜いた海軍最後の「語り部」は、私たちに何を残していったのか――
*****
-戸津井康之
とつい・やすゆき
1965年10月4日、大阪府堺市出身。元産経新聞文化部編集委員。
大学卒業後、日本1BMを経て、1991年、産経新聞入社。
大阪本社社会部記者、大阪・東京本社文化部記者、大阪文化部デスク、文化部編集委員を経て2018年に退職し、現在はフリーランスのライターに。
産経新聞記者時代は紙面とネット連動の連載コラム「戸津井康之の銀幕裏の声」
「戸津井康之のメディア今昔」などヒットコンテンツを手掛ける。
2021年8月、長編ノンフィクション『双翼の日の丸エンジニア』(学研プラス)を刊行。
《目次》
はじめに
プロローグ 海霧 「幻」の復員船
第一章 凪 日本海軍の最期
第二章 回頭 空母から復員船へ
第三章 抜錨 錨を上げろ
第四章 蜃気楼 天国と地獄
第五章 全速前進 南へ、西へ⋯⋯
第六章 投錨 「老船」最後の戦い
第七章 転錨 空母から海防艦へ
第八章 宜候 舳先の向かう先
エピローグ 霧笛 「里の秋」
おわりに
主な参考文献
著者略歷
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Posted by ブクログ
世界初の空母「鳳翔」は、呉港空襲を生き残り、
戦後、復員船として新たに生まれ変わる。
本書は、海軍通信兵・山本重光の復員船・乗務員としての日々を取材し、
また、同じ任務についていたそれぞれの証言も拾いながら、
復員船に焦点を当てる。
終戦後、海外に残された、日本人は、軍人民間人を合わせ、
660万人が取り残されたという。
当時の日本の人口が7200万人だったことを考えれば
1割にあたる。
山本は「鳳翔」で赤道を8往復し、いわゆる南洋の人びとを救い、
旧満州へも向かう。
「鳳翔」が引退・解体されると、小型の海防船に移り、
復員船の仕事を続けた。
当時ハタチそこそこの若者は、自ら、この道を選んでいる。
というのは、敗戦時、上官から「長男は帰れ。次男以下は船に残って欲しい」と
言う言葉に応じ、後には上官から「おまえは大学へ行け、あとは俺たち年配者が
引き受ける」とまで言われたのに残り続けたのだ。
それは復員船に乗り込んでくる人たち、ガリガリに痩せた復員兵、
笑顔の全くない引き揚げ者・・・
を連日、見続けたからだろう。
このあたり、当事者でなければ、わかりえることではない。
今まで、引き上げの苦労は、さまざまな本やメディアで見聞きしてきた。
でも、そのための手段については意識していない。
「引き揚げ船」に乗り込んだ・・・で、おしまい。
その船が、どんなものであり、どんな人びとが動かしていたのかなど
考えたことも無かった。
その乗務員とて人生ががあり家族がいるのに。
しかも俸給は雀の涙。
かつて北米航路の豪華客船だった氷川丸が、
病院船となり、後に復員船として船の命を終えたことは
おぼろに聞いたことがある。
今、山下公園で、ふたたび、豪華客船時代の姿に修復を施され、
美しい姿を見せる、あの船だ。
まだまだ知らないことばかり。
体験者が存命のうちに・・・と時間との勝負だ。