【感想・ネタバレ】ケアしケアされ、生きていくのレビュー

あらすじ

他人に迷惑をかけていい!!★ケアは弱者のための特別な営みではない。社会の抑圧や呪縛から抜けだして、自分のありのままを大切にするような、お互いがケアしケアされるそんな社会を目指そう!★ 〈著者からひと言〉この本は、ケアから逃げてきた私が、ケアと出会い直すことによって見えてきた世界を、みなさんにも馴染みがある3つの視点から考えてきた本です。1つめは20歳の大学生の世界です。私は大学生を20年近く定点観測してきました。その上で、今の学生が「他人に迷惑をかけてはいけない憲法」に縛られて、生きづらさを抱えているように思えます。それは一体どういうことなのか、を考えてみました。2つめは6歳の子どもの世界です。私の娘は今、6歳なのですが、「迷惑をかけまくって」楽しく生きています。安心して迷惑をかけられる環境で、のびのび生きています。でも、ちゃんとしなさい、と叱り続けると、そのうち親や教師を忖度する大学生になるのではないか、と心配しています。なぜ、のびのびした子どもが、その十数年後には「他人に迷惑をかけてはいけない」と縮こまる大学生になるのか? その背景を考えるうえで、3つめの世界、「昭和98年的世界」を生きる48歳の私の世界を考えています。昭和が終わって30年以上経っても、日本社会の基本的なOSは昭和時代のままです。理不尽な労働環境でもがまんする、抑圧的環境に「どうせ」「しゃあない」と諦める。それが、女性の管理職や政治家比率が低く、イノベーションが生まれにくい「失われた30年」の背景にあると私は考えています。そして、この世界は「ケアレス」な世界です。この閉塞感をこえるためには、日本社会がケア中心の社会に変われるか、が問われています。能力主義や男性中心主義の呪縛の外にある世界です。それは、共に思い合う関係性が重視されるし、そのためには自分自身の「唯一無二性」とも出会い直す必要があります。そんなの無理だよ!と理性の悲観主義に陥らず、ではどうやったらケア中心世界は可能なのか、について、できる一つの可能性を模索したのが、本書です。中高生にも読んでもらえるよう、わかりやすい文体を目指しました。よかったら、読んでモヤモヤしてくださると、嬉しいです。 竹端寛■【目次】 第一章 ケア? 自分には関係ないよ!/一 「迷惑をかけるな憲法」/他人に迷惑をかけてはならない/都合のいい子!?/大人から学んだ「いい子」/二 しんどいと言えない/意見を表明する権利/他人の顔色をうかがう/苦しいことと苦しみ/三 自分自身を取り戻す/ゼミで涙を流す学生/ペラペラしない他者/ about-ness からwith-nessへ/四 面倒な中に豊かさがある/ケア不在を超えるために/自分の魂に迷惑をかける?/第二章 ケアって何だろう?/一 確かに面倒なのだけれど/めっちゃ可愛く、めっちゃややこしい/存在をぶつける/意見表明の主体としての子ども/一方的にケアされる存在ではない!/二 自分へのケアと他人へのケア/子どもの「開かれ」/自分の人生へのリミッター/忖度の危機/作られた悪循環/偽解決を超えるために/三 他者へのケアの前に/支援か支配か?/関係性のダンス/同調圧力に異を唱える/誰へのケア?/四 互いが気にかけあう/自分へのケア/共に思いやること/ with-ness で生活を回す/何を見ようとしてこなかったのか/第三章 ケアが奪われている世界/一 ケアのないわたし/ケアレスとはなにか/同調圧力と「空気を読む」/自己責任とわきまえ/ケアレスな社会/二 「昭和九八年」的世界/労働ファースト/最も眠れていない国/頑張れば報われる、の呪い/前時代の大成功、ゆえに/三 標準化・規格化の「大成功」の陰で/昭和の成功を支えたもの/銀行型教育システムへの囚われ/「正解」幻想/昭和的価値観の限界/四 ケアの自己責任化を超えて/「発達」の「障害」?/置き去りにしてきたケア世界/自分が学んだことはこれなのか!/「ちゃんと」のリミッターを外す/第四章 生産性至上主義の社会からケア中心の社会へ/一 生産性とケア/誰のための、何のための効率?/男性中心主義の外にある世界/能力主義の呪縛/「生産離脱者」の排除/二 責任の共有化で楽になる/依存先を増やす/関係性に基づくケア/懲罰ではなくエンパワーする責任/切り分けるのではなく、分かち合う責任/三 共に思い合う関係性/中核的感情欲求と向き合う/生き様の理解と支援/迷惑をかけるな、より大切なもの/他者の他者性に気づくこと/四 ケア中心の社会へ/己の唯一無二性とも出会い直す/魂の脱植民地化/葛藤を共に味わい社会化する/できる一つの方法論

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Posted by ブクログ

前半は他の竹端さんの本でも書いてあるような内容だったが、後半よかったなー。
迷惑かけてはいけない憲法。めっちゃ現場にいます。先生たち真面目すぎん?と思う場面めちゃくちゃあります。誰のためにというか、文句言われないためにやってる仕事多い。
迷惑かけていいから。とよく思う。謝らなくていいですよ。とよく思う。
そのために夜8時以降も残って仕事して、身体壊して、疲れて、自分の元気や余裕が子どもたちの元気と余裕につながることを共有したい。
時間がないじゃなくて、箇条書きとかの短い記録でいい。言葉でいい。楽していい。

子どもたちと「今、ここの満足」を共有できる関係でいたい。
昨日の比較で何かができるようになったから、成長したから褒めるではなくて、他の人と優れたからできたではなくて、今、できていることが嬉しいから一緒に嬉しい関係でいたい。
競争が好きな生徒は競争してサバイブの体験をさせればよい。自分が競争に勝てば誰かが負けている。勝つ原因も負ける原因もきっとある。そこに挑んで目標を達成する。危機感を煽って火がつくこともある。
安全基地でありたい。うまくいく時、いかない時もその人を認めていたい。何かができているからいいと条件付でなく、後付けの評価でなく。

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2025年11月09日

Posted by ブクログ

 子育てや介護は、する側がされる側に一方的にケアするものとして論じられやすい。でも実は、自身もまた、子どもや老いた親にケアされている側でもあるのだ。自らに子や老親が与えてくれているものに気がつくとき、ケアが双方向性を持つ行為であることがみえてくる。それを感じないまま一方的に自分が相手を支援していると思い込みつつケアをしていると、支援ではなく支配となっていく。労働を何よりも尊び生産性を至上のものとする昭和的価値観は、たしかに昭和においては焼け跡からの復興のために有効だった。ただし女性や障害者や性的マイノリティーなど多くの人々に犠牲を強い、社会から追いやるという結果も伴った。日本はとっくに衰退しているのにも関わらず昭和的価値観を引きずり続けているいまこそ、生産性至上主義の社会から、ケア的関係性を大切にする社会への転換の時期だと述べられる。医療や保育や介護にまで生産性向上を求めてくる厚生労働省の方々にも是非読んでほしい。

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2025年08月24日

Posted by ブクログ

優しくされるとうれしいし、相手を助けた側も役に立ってよかったと心があたたかくなる。ケアする側も、ケアされる側も互いに思い合う関係性っていいなと思う。迷惑をかけるな憲法の呪縛から解き放たれ、自分自身の夢を生きよう!

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2025年05月17日

Posted by ブクログ

「迷惑をかけるな憲法」
すごいキーワードだ。
正直「ケアしケアされ・・・」というタイトルから、
高校生に福祉の大切さを教える本かな?
と、期待薄で読み始めた。

ところが、、、
迷惑をかけるな憲法ときた。
現在の日本に蔓延する自己責任論のおおもと。
というか、私自身もこれに縛られて生きてきたように思う。
子供にも、「他人に迷惑をかけるな」をベースにしつけてきたような。

しかし今なら思う。
他人に迷惑をかけない、依存しない、なんてありえないのだ。
得手不得手は誰にでもあり、得意なことを得意な人にやってもらうのが
一番いいのだ。
そこに依存があっていいのだ。金銭が発生しようがしまいが。

著者は子供とのかかわりの中でいろいろ気が付いたと書いている。
子が生まれる前は夫婦それぞれの都合で生きてこられたのが、
子ができた途端、すべてが変わる。
100%親に依存する子供中心に、折り合いをつけていくことになる。

これは私も身に覚えがある。
資格試験の勉強もあり、長女のときは妻に大半を任せていたにしても、
少なくとも娘の存在で優先順位が変わったのは間違いない。

そして改めて思う迷惑をかけるな憲法。
私自身いまだに「障碍者」のために駅にエレベーターを作るなどは、
税金上?鉄道会社上?どうなのか、と思ってしまう部分がどこかにある。
結果的に若い人も老人もベビーカー連れも使っているので、
源は取れているのかもしれないが、、、(ちなみに私は使いません)
話がそれてしまったが、お金が絡むとややこしくなるが、
お互いの人間関係の中で、譲り譲られ、依存し依存され、
それが成立するのであれば、よいのだと思う。

それを、やたら権利だけを主張して、他人の心を踏みにじるような依存をしてはいかん、
ということだと思う。お互いの人間関係なのだ。
無償の愛、と言われる自分の子への対応だって、世話しながら親にさせてもらっている、
人間として得るものがたくさんあるのだ。
そう思えない人、ただ自分の時間が奪われた、お金が無くなる、と思ってしまった親が
ネグレクトになったり子を捨てたりするのだろう。

ケア という言葉はなんだかよそいきのことばのようで。

迷惑をかけるな憲法 しみた。

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2024年03月18日

Posted by ブクログ

子育てというケアを見直すきっかけになる良書。
ケア関係は決して一方的でなく、互いが互いを必要とする相互依存的な関係であると。
たしかに子どもを育てていて、「あ、自分を見つめ直すきっかけになってるな」と思うこともあるけど、それをうまく言語化してくれている。

子ども達には「もっと自由に生きてほしい、自分の考えを大切にしてほしい」と思っているのに、リミッターをかけていたのは親である自分じゃないのか。
「ちゃんとしなくちゃ」と、"迷惑をかけるな憲法"に侵された子ども達なんて見たくない。

まずは話を聞くことからはじめてみよう。

【Action plan】
お風呂と寝る前に布団に入っている時間は徹底的に話を聞く

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2024年02月19日

Posted by ブクログ

「迷惑をかけるな」という自己犠牲的な制約や、「頑張れば報われる」という単純化された神話は、他者の他者性や己の唯一無二性を見えなくし、抑圧的で息苦しい社会を作り上げてしまう。

他者と己の双方を見つめ、その違いを知る努力をしながら、時にケアし、時にケアされながら、進むべき道をともに考えていくこと。

そのプロセスの重要性を、著者と学生との関わりや、著者の子育ての体験などをもとに、熱く、丁寧に説いています。

効率性や生産性を何より重視する現代の「ビジネス的マインド」にどっぷり浸かってしまった人にこそ読んで欲しい1冊。

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2023年12月16日

Posted by ブクログ

ケアということが自分を含むとは思わず読み始めた。
当たり前のことをを整理して必要にまとめてあることの有り難さを感じた。
なかなか自分を愛することができないし、何かに追われる毎日であるが、ふと自分とその周囲に手を差し伸べられるそんな気持ちを持ちたい。

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2023年11月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

他人に迷惑をかけていい!!
ケアは弱者のための特別な営みではない。社会の抑圧や呪縛から抜けだして、自分のありのままを大切にするような、お互いがケアしケアされるそんな社会を目指そう!(紹介文)
ーーーーーーーー
それぞれの正義が強くぶつかり合う現在で、
弱さを見せたり許したり助け合ったりでいい、という優しい考え。
理想だし、そうなりたいけど、
私はその境地に至れない。
ただそういう考え方があるということを知れただけでも、価値のある一冊。
特に親子の関係の記述も多く、参考になった。
夫は自分の考えと似ているという。そういう人だと知れたのもまた発見。

・現代の若者は「他人に迷惑をかけてはならない憲法」に支配されている。同調圧力や自己責任論、努力すれば報われる、わきまえる、空気を読むなど。
・言うことを聞かない子供は親の合わせ鏡。子どもはもともと開かれている。
・子どもとの問題を偽解決するのではなくコミュニケーションパターンを変える。親が自己中心的になり、子どもの主体性や思いを気にかける余裕がなくなっている。
・自分に対してケアレス。「他者評価」「他者比較」が染みこんでいる。
・正しい答えがあるという幻想。
・責任の共有化で楽になる。
・他者の他者性に気付き、己の唯一無二性に気付く
・ケア中心の社会なんてできないと100の理由を述べるのではなく、できる1の可能性を模索する

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2025年05月17日

Posted by ブクログ

ケア本
朝日新聞podcastの親モヤ出演で竹端さんを知り、興味を持った。竹端さんの特徴は、教育への解像度(関心)の高さ。娘との関係の中や、教育現場での実践・経験の中から、導き出されるケア論は一味違う。引用されているものもいい意味で硬派なものが多く、理論的に裏付けされていく。
ただ一方で、(娘との)経験が最上位に置かれ過ぎている感は否めないかなと。もう少し跳躍的な思考が見てみたいと思った。

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2025年04月20日

Posted by ブクログ

福祉の意味での「ケア」をイメージして手に取ったけど、少し思っていたものとは違った。
でも、結果読んでみてとても良かった。
「人に迷惑をかけてはいけない」「努力して結果を出さなくちゃいけない」「自立しなさい」など親に言われてきたことに知らず知らずのうちに縛られて、わが子にも「ちゃんとする」ことを望んでいたと気付かされた。
日本人にありがちなこの考え、私もだわ…と反省。
子育て本としてアピールした方がいいのでは?と思う位、今の自分には得るものがあった。
「いい子育て」に縛られて、しんどくなっている方におすすめ。

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2025年02月17日

Posted by ブクログ

大人、子どものいずれにも、対話を通じて他者と自分の違いを理解し、どちらかが犠牲になることなく互いに納得できる落とし所を見つけることの重要性を理解することができた。

ただ、これはエネルギーを要することであり自分を大事にできていない人は他者も大事にできない。毎日残業で疲れ果てるような生活を送っていては、家族をケアすることはできないとわかった。

では家族をおろそかにすることなく、仕事でも成果を出すために必要な視点・考え方とはなんだろうと次の問いが立ちました。
本書の内容も十分に噛み砕けていない気がするので、また期間をおいて再読したい。

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2024年02月23日

Posted by ブクログ

こつこつと音読で読み終わりました。今の日本の閉塞感というのは、「迷惑をかけるな憲法」と表現されるケアレスな社会を築き上げてきたことに要因があるのだな、と、感じ入りました。それが社会の前進に寄与していた時代はとうに去ったのに、「憲法」だけが虚ろに効力を発揮し続けている。自分や他者をケアすること、そしてそうすることによって自らもケアされるということ、今の自分に欠けている新しい視点が加わった、と思います。

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2024年01月08日

Posted by ブクログ

ケアについて考えるに基本的なことから、社会構造的なことまで言及し、バランスよくわかりやすく書かれた書であった。また自身が子育ての過程で気付いたことを肉付けしているので、当事者性があり説得力もあった。「日本社会の抑圧や呪縛の世代間連鎖の社会構造をそのものとして学び(なおし)、そこから逃れるあり方こそがケア的関係性なのだ」「自分が悪いと思っている問題は、社会構造的な抑圧や呪縛の個人化・内面化でもあるのだ」という言葉に端的に著されている。

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2023年11月22日

Posted by ブクログ

みんな評価低いですね。。
なんでだろ。
僕はわかりやすかったなぁって思うし、実践していこうと思った本でした。

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2023年11月21日

Posted by ブクログ

共に思いやること(Caring with)について、学生さんのことや子育てのことなど、著者の経験を手がかりにしながら学んでいける本でした。

スキーマ療法の「中核的感情欲求」との関連や、「生活史」の理解、オープンダイアローグの考え方等、わかりやすく整理されていて、読みやすかったです。

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2023年10月13日

Posted by ブクログ

この本で言うケアとは、助け合って生きていくこと、相手への思いやりと解釈した。

相手への思いやりを持とうと思ったら、まず自分が相手を助ける余裕がないとできない。

働いて、ご飯食べて、ゆっくりお風呂に入って、毎日8時間ぐっすり寝る。満たされる。

本当にシンプルで、当たり前のことができない社会。

できない理由を100個言うのではなく、どうすればできるかを考える、という何度か出てくる著者の言葉が身につまされた。

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2025年11月25日

Posted by ブクログ

やはりケアの概念はコーチングにも参考になる分野
本書は子供向けのケアの話にフォーカスし、日本社会に根付く「迷惑をかけるな憲法」への警鐘を鳴らしている
子供の話をしっかりと聞こうという要素が強いが、これって多忙な親にとっていつでもできることではないと思う
AIを介入させ老若男女がオートクラインできる世の中をつくれば、相当親にとっても子供にとってもいいのではないか(空いた余白の時間で誠心誠意向き合える)

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2024年06月19日

Posted by ブクログ

ケアというものについて客観的な実情を明らかにしてくれることを期待して読んだが、あくまで筆者の主張に留まるような内容でした。今後、家庭内でのケアの実態を明らかにし、社会に広めていく方が出てきてほしいと感じました。

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2024年02月02日

Posted by ブクログ

ペットを飼ったことがないワタシ。
喋れない赤ちゃん時代の子育てを苦しく感じる人が多いよう思うが、ワタシは0-1才までなら100人位面倒見れる見たいかもと思った。
生きているお人形(=ペット)時代のケアが好きというか得意だった事をこの本を読んで再び思い出した。ペットを飼う人の気持ちが初めて分かった。

自分もケアしながらケアされていたのだなぁ。

自分のケアを1番してくれたと言うか今の自分になった1番の原因であり結果はヤハリ実母だなぁ。

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2024年01月13日

Posted by ブクログ

about-nessからwith-nessへ。
物事に着目して、客観的な判断をくだすのではなく、まずは共感した上で、自分ならどんなことを考えるのかという視点に立つ。

この点が知れただけで、読む価値合ったかな。

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2023年11月05日

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