【感想・ネタバレ】ロシア 語られない戦争 チェチェンゲリラ従軍記のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

「甦る怪物」として豊富な天然資源を背景に未曾有の経済発展の陰で、「闇の戦争」が行われているロシア。本書はフリージャーナリストである筆者が一身を賭して綴った貴重な記録であるいえます。今だからこそ是非。

僕がこの問題に興味を持ったのは映画「コーカサスの虜」を見てからで、これが現在でも続くチェチェン紛争というものを知るきっかけになりました。筆者はフリージャーナリストとして世界各国の紛争地帯を渡り歩き、ここでは1年半ものあいだ行動を共にしたチェチェン独立派ゲリラ部隊への従軍取材や、取材中のイングーシ共和国でのロシア秘密警察(通称「FSB」)による拘束などの経験を通して、われわれが知ることのないロシアの持つ「暗部」を白日の下にさらしていきます。

おそらく、彼がもしロシアを拠点としたジャーナリストであるならば、確実に「不審死」を遂げていたであろうな、ということが全編にわたって描かれており、文字通り体を張って従軍した経験からつづられるチェチェン紛争の内幕は壮絶の一言で、知らないところでここまでのまさに「血で血を洗う」ような恐ろしいことが行われていることには戦慄を隠せませんでした。

さらに筆者は特務機関であり秘密警察のFSBに長期間拘束されるという経験を持っているわけですが、おそらく彼自身も彼らの監視下に置かれているだろうな、という予想はつきますし、取調べの最中に日本語を話す連中がいたことに筆者は驚いておりますが、佐藤優氏の著作によると、彼らの中には現在の日本語のみならず、沖縄の方言である「ウチナー口」を完璧に操り、日本の古典文学を原文で読み込んでいる方がいるそうなので、さもありなんという思いがありました。

本書もロシア語に翻訳され、その内容は本国に「資料」として保管されているであろうということは容易に察しがつくのです。本書の巻末には、「不審な死」を遂げたアレクサンドル・リトビネンコ氏と友人であった著者が2004年に2回に渡って行った彼へのインタビューの全文を掲載しています。その内容がまさに「おそロシア」を地でいくもので、FSBの恐るべき諜報活動の実態にはじまって ロシアの今の繁栄がどのような犠牲の上に成り立っているのか、さらにはプーチンから大統領職をバトンタッチされた当時のメドベージェフはどのような宿題を渡されたのか。などが語られ、本当に貴重な話で、まさに「いのちの言葉」と呼ぶのにふさわしいものでした。

2012年時点で再度、プーチンへの大統領返り咲きが果たされたからこそ、本書の「価値」というものがあるのではないのでしょうか?

0
2013年07月05日

Posted by ブクログ

著者が常岡さんというきっかけで読んだに過ぎず、ロシア情勢、ましてやチェチェンについて予備知識ゼロ。だけどもチェチェンで何が起こっているのかというのと、イスラムというのがどういうことの一端を著ることができた。あとはロシアの諜報。中国、北朝鮮、ロシアという隣国でこんなことが起こっているというのが改めて驚き。

0
2012年02月06日

Posted by ブクログ

隣国であるにも関わらずロシアの事を知らなすぎたと痛感。かなりチェチェン側の肩を持った内容だが、ロシア政府側のリークが垂れ流されている現状を考えると資料的な価値は非常に高いように思えた。チェチェン戦争の悲惨さよりもロシア政府のマスコミでは描かれることのない陰湿さが個人的に印象に残った。

0
2011年02月11日

Posted by ブクログ

【キーワード】ロシア、チェチェン、戦争、ジャーナリスト

新書でこのような従軍記が読めるのはすごいことだと思います。著者が実際にチェチェン独立派にジャーナリストとして従軍してた時の記録ですが、資料や人づてに聞いた話ではなく、銃を向けられ、ロケットに狙われ、死にそうになった経験を持つ著者の言葉にはとても迫力があります。

この本を読むまでは、チェチェンの武装勢力のことは全然知らなかったしとても残忍な人たちだと思ってました。ですが、この本に書いてある人たちはイメージとはまるで違うものでした。むしろ対立勢力であるロシアの方がよっぽど酷いことをしていると感じました。

純粋な信仰心からイスラム教に改宗し(チェチェンの人はほとんどイスラム教)、共に死線をくぐりぬけ対話した言葉にはとても説得力がありました。

0
2010年08月30日

Posted by ブクログ

チェチェンの武装組織に同行し、彼らの視点でロシアと被支配民であるチェチェン、イングーシ、その他の民族の悲哀に満ちた現状を書いたもの。グルジアの苦悩も感じられた。
ヘリからミサイルを放たれ、拘束され、しかし、日本人であるが故、尋問されたものの数々の幸運が重なり危害を加えられず生還したこと、その真実の体験をまとめて出版するという危険な行為に著者のジャーナリスト魂、信念を感じる。
北オセチア、ベスランでの学校占拠事件に対するくだりは、世論誘導のためにあえて非合法行為を自作自演している国家があるのではないか、とその罪を告発している。
重い内容だが、その戦禍から離れた日本にいるからこそ、この現実を受け入れ、彼らに思いを馳せる時間を持ちたいと思った。

0
2012年01月21日

Posted by ブクログ

ロシアとチェチェンの戦争を、筆者自らチェチェン側から書くしかなかった事情も明らかにして、かなり公平でしかもそこにいたことでしか書けない臨場感のあるルポ。筆者の考え方もよく理解でき、最後のリトビネンコとのインタビューも興味深かった。

0
2011年05月05日

Posted by ブクログ

先日アフガニスタンでゲリラに拘束されて話題になった常岡浩介氏によるチェチェンゲリラ従軍記。ゴルバチョフ〜エリツィンと、少しずつ民主化に成功したかに見えたロシアも、プーチンの出現によって再びソ連時代を思わせる統制された独裁政治の様相を呈してきた。

チェチェンに対して行われた容赦ない弾圧と情報統制、ジャーナリストへの脅迫や暗殺も辞さない旧KGBの流れを汲む諜報機関FSBの存在。冷戦時代の悪夢が再び蘇ってきた。

国連安保理事国5カ国のうちの中国とロシアがこの状態なのだと思うと背筋が凍る。

表には流れない真実がたくさんあるのに、日本の大手マスコミは芸能ニュースばかりを追いかけて、今も口をつぐんでいる....。

0
2010年12月30日

Posted by ブクログ

[ 内容 ]
プーチンという強力な独裁者により、未曾有の経済発展を遂げたロシア。
だがその影で何が行なわれていたのか……。
世界紛争地帯の取材を続ける著者が、1年半ものあいだ行動を共にしたチェチェン独立派ゲリラ部隊での体験を綴る、渾身のルポ。
野営の日々、地雷原突破、ロシア軍戦闘ヘリからのミサイル攻撃。
加えて、元諜報機関員リトビネンコ暗殺事件に象徴されるロシア秘密警察の活動の実態--著者自身がロシア秘密警察に16日間拘束された--や、欧州へ流出しているチェチェン難民の逃避行に同行した体験を記す。
豊富な天然資源とプーチンという強力な指導者により未曾有の経済発展を遂げたロシア。だがその影で、けっして表に出ることのない「語られない戦争」が、いまでも行われている。
紛争地帯の取材を続ける著者が、1年半ものあいだ行動を共にしたチェチェン独立派ゲリラ部隊での体験をもとに、ロシアの闇を暴く。

[ 目次 ]
第1章 従軍(奇妙な作戦 アブハジアというところ ほか)
第2章 脱出(「対テロ戦争」の裏側で 庇護者を失うチェチェン難民 ほか)
第3章 諜報(ロシアとチェチェンの情報戦争 モスクワからきた車 ほか)
第4章 拘束(FSBへの取材 再会 ほか)
第5章 ひと、点描(チェチェンで戦った日本人「聖戦士」 ハワジ・ミナミ 殉教を切望する聖戦士 アルハズール ほか)

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

0
2010年07月04日

Posted by ブクログ

この人今現在誘拐されてるけど大丈夫かなー
よく危険な地域に行く人が悪いって言われるけど。
私も今までそう思ってたけどこの本読んで変わりました―。
この人がそこにいかなきゃチェチェンの状況なんてわかんなかったわけだし。
知る必要もないんだけど、ね。

0
2010年06月05日

Posted by ブクログ

最初に、この本は作者が書いているように、文章が上手なわけでもなく、チェチェン側の視点に偏っているなどの欠点はあります。
しかし、ゲリラに従軍し、ロシアのFSB(秘密警察)との相対した著者の体験は迫力充分で、引き込まれるものがあります。

ペレストロイカ以降、ロシアは混乱の時期にあったでしょう。
それを、対外的には資源外交を、体内的には秘密警察を使い、纏め上げている感のある、プーチン。
確かに、著者が言うように、混沌を沈めるために必要な手段だったのかもしれません。
しかし、この本を読む限り、秘密警察の非合法活動を排除するためには、また一大改革が必要とされるでしょう。
国をまとめる手段としての「秘密警察」が、国そのものの中枢となっているとは皮肉なものです。

正直、ロシア国内におけるチェチェン独立派によるテロとされた人質事件などは、日本で流されているニュースだけ見ても「かなり胡散臭い」感じはしていましたし、FSBがKGBの流れを汲むことから非合法をやっているだろうなぐらいは思っていましたが、今回この本を読んで、これほど露骨な活動をしているのかと驚きました。

「チェチェン」、どこか中央アジアぐらいの、ロシアの衛星国家ぐらいの認識しかありませんでした。
しかし、そこでは、文明国で行われていることとは思えないような悲劇が繰り返されているようです。
人口の4分の1の、25万人が紛争で減少した国。
それは、今ここにある世界の一場面なのです。
私たちは、ウォール街だけでなく、少数民族の声にも耳を傾ける必要性を感じます。

ちなみに、秘密警察の暗殺疑惑で有名になった、「アレクサンドル・リトビネンコ」のインタビューも巻末に載っており、これも興味を引きます。
著者は、自分と同県の出身である事に驚きましたが、命の無事を祈りながら、今後の活躍を応援していきたいと思います。

0
2009年11月01日

Posted by ブクログ

著者自ら認める通り、ポリトコフスカヤ+リトヴィネンコ/2な感じの書名だけれど、書かれている内容は両者よりも生々しい、何せチェチェンゲリラ側へ同行取材した記録なのだから。ロシアの南カフカス政策や歴史的背景が語られないので、わかりにくい部分もあるけれど、世界的に情報の少ないチェチェン情勢がゲリラという過酷な状況から記されているだけでも非常に貴重。いかにチェチェン紛争が「泥沼化」しているかがよくわかる。現代ロシア情勢に興味があるなら是非。

0
2009年10月04日

Posted by ブクログ

ロシア側の情報しか入りにくいチェチェンとロシアの戦闘.著者はチェチェンのゲリラ部隊のカフカスの森からアブハジアへの進攻作戦に従軍しルポする.グルアジアの援助を受けてるとはいえ山岳地帯を地雷やロシア側の攻撃をさけながらの飢餓行軍はよくぞ生きて帰ったと言う感じ.実際、著者のチェチェンでの知り合いは短期間のうちに死亡や行方不明が多数いるとのこと.また著者はロンドンで放射性物質で毒殺されて有名になったリトビネンコとも面識があり最後に彼とのインタビューが掲載されている.ロシアはエリチィンからプーチンにかわって再びソ連時代のKGB(今はFSB)の支配する暗黒政治に戻ろうとしている.

0
2011年04月28日

Posted by ブクログ

徹底的に立ち位置は偏ってますが、歴史的弱者?の立場からの状況を伝えるには、これくらい思い切った行動力と強靭な意志が必要なのでしょう。偏ってるとはいえ、あながち的を外してなさそうな事実、迫真のレポルタージュだなぁ。

0
2010年05月27日

Posted by ブクログ

あまりにも詳しくなさ過ぎて、あんまり楽しめなかったかも。とりあえず、リトビネンコ氏の本とアンナさんの本を読んでみようと思いました。しかし、ネットで地図を見ながら会社で読んだりしてたんだけど、中途半端な位置に地図載ってんじゃん。やはり、地図は冒頭掲載がよろしい!!と思いました。

0
2011年09月03日

Posted by ブクログ

 知り合いのジャーナリストが書いたチェチェン戦争に関する従軍取材等のルポルタージュです。チェチェン戦争について私自身も知らない事がこの新書で知る事が出来ましたが、それが本当なのか、そして本当だとしても一体どれほどの規模や実態があるのか、色々と感情移入している著者個人の思いもあるのではかりきれないですね。個人的には、彼と彼の実家、ジャーナリストになるまでの苦悩等々も吐露した方が、彼自身の人間性と彼の取材がコミットして一般読者にはより魅力的になると思うし、彼自身の事を理解しやすくなると思う。無論、そういったものは出版社的には求められないし、彼も吐露したくないのかもしれないけど、そういう背景なしにイデオロギー的な戦争を語る時、「彼には一体どういう背景があるのか」という疑問は読者の間に残り続けると思う。

0
2009年10月07日

「社会・政治」ランキング