【感想・ネタバレ】忘れないでおくことのレビュー

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Posted by ブクログ

七十三人分の随筆を読んでいると、当然のことながら既に読み親しんでいる人もいれば、名前は存じ上げているものの著作には手が伸びていなかった人もいる。この随筆集を読む切っ掛けとなったのは津村記久子や岸本佐知子が何を書いているのかが知りたいからであったりするのだけれど、読んだことのない人の中にも、今度はこの人の本も読んでみたいなと思わせてくれる人もいるし、ちょっと自分には荷が重いかもと感じてしまう人もいる。そんな出会いがこのような随筆集のいいところなのかも知れない。

第一集同様「あなたの暮らしを教えてください」という問い掛けに答えた随筆の中から「日々の気付き」に関するものを集めたという第二集。「忘れないでおくこと」とのタイトルの本の扉には『無心でからっぽな、この美しいもの』との言葉がある。その言葉の意味は読み終えても尚つかみかねるけれど「忘れないでおくこと」というタイトルにはピンとくる。

随筆は概ね年代順に並んでおり、2007年から始まって2021年のものまで。その間「忘れないでおく」と皆が思ったであろう二つのことがあったことは、静かに、だが確かに、随筆の並びの中に、そして特に2011年以降の随筆に、通底しているように読める。けれど一つ目の大きな出来事の記憶は、時が経つとともに少しずつ意識下の浅いところから深いところへ沈んでいく。その沈みゆく様が、別々の人の随筆でありながら見て取れるように思うのは不思議な気もするし、やはり人というのはミームのようなものに支配されている生き物なのだと再確認するだけのことなのかも知れないとも思う。そうして最初の大きな出来事が徐々に意識下の深いところへ沈んでいったと思ったら、その次にはより汎世界的な規模の出来事が起こり、そこからまた随筆の調子も少し変わる。巻末に置かれた中島京子の『忘れないでおくこと』で言及されているパオロ・ジョルダーノの言葉を引くまでもなく、心への大きな負荷は余りにも鮮明過ぎて忘れようがないと思えるが、岡崎京子が言ったように「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」な生き物なのだ。

「忘れないでおく」と思うことは、当たり前だけれど、過去のこと。それがついさっき起きたことだとしても、既に何十年も、ひょっとしたら自分が生まれる以前の歴史上の出来事だとしても、過去に属している。「属している」と整理した途端に気付くのだけれど、この言葉が示唆する行為は「コト」を「モノ」として見てしまう思考に繋がり易い。過去をモノ的に捉えて記憶に留めようとすれば、記憶の劣化に伴ってそれはいつか忘れ去られてしまう。けれど「忘れないでおこう」という思いはコトであり、その視線は未来に向いている。記憶を情報(モノ)として覚えておくのではなく思考(コト)として覚えておくには行為が必要だ。多分、お祭りや儀礼の決まり事や所作も、忘れないでおく「コト」の工夫なんだろうなと随筆集から思考がふらふらと漂っていく。随筆を寄せている人の多くが日々やっていることを書いているのもそんな無意識の心の働きなのかも知れない。何故そんなことをやっているのか理由も忘れてしまったようなことでも、それを繰り返す内に解ることもある。それはひょっとすると「蘇る」思いなのかも知れない。

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2023年04月16日

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「暮らし」をテーマに、豪華執筆陣で贈る珠玉の随筆集。漫画家・ほしよりこ、絵本作家・あべ弘士、放送作家・小山薫堂など、全67人の「日々の気付きにまつわる話」を収録する。『暮しの手帖』本誌・別冊掲載などを単行本化。

心地よく読めた。

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2024年04月21日

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ネタバレ

【筆者】町田康/江國香織/酒井駒子/ヤマザキマリ/保阪正康/潮田登久子/関容子/鴻巣友季子/片岡義男/小池昌代/近田春夫/斎藤明美/半藤一利/岩政伸治/角田光代/津村記久子/姜尚美/穂村弘/木内昇/三木卓/ほしよりこ/早坂暁/佐野眞一/楊逸/西加奈子/平田俊子/植松三十里/坂之上洋子/恩田陸/吉行和子/青木奈緒/赤川次郎/ 山口晃/渡辺和子/鈴木みき/三宮麻由子/末盛千枝子/椎名誠/堀江敏幸/坂井真紀/高畑充希/あべ弘士/ミロコマチコ/伊藤亜紗/阿川佐和子/益田ミリ/最果タヒ/吉田篤弘/ブレイディみかこ/今日マチ子/柴幸男/滝口悠生/春日武彦/唯野未歩子/小山薫堂/森絵都/大江千里/岸本佐知子/堀潤/岩崎航/長嶋有/堀込高樹/花田菜々子/小沼純一/村田諒太/いとうせいこう/中島京子

『暮しの手帖』の本誌と別冊に寄せられた「暮らし」がテーマの随筆作品から選んだものを全4冊にまとめたシリーズの第2集。日々の気付きにまつわる話を集めたという。

赤川次郎、渡辺和子、中島京子のものが心に響いた。

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2023年06月03日

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こちらもまた、珠玉のエッセイ集。
私も猫逃避したい(猫は飼っていないけど)角田光代エッセイより。
早坂暁が終戦の年、16歳の時に作った俳句、
「生きたくば蝉のように鳴け八月」
小説は読んだことないけど、木内昇の”ただいるだけで”
も良かったぁ。

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2023年05月30日

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知ってる方は期待を裏切らず、知らない方も新しい発見があり、とってもお得な随筆集です。

なかでも、岸本佐知子さんや長嶋 有さん、期待を裏切らず、冴えてます!

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2023年04月24日

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知ってる人の文章もあれば知らない人の文章もある。大好きなヤマザキマリさんのイタリアの食堂の店主と老人客とのやりとりについての文章はとても良くって、これだけでもこの本を読む価値がある。
他のも、何気ない文章だけど読みやすくて、読み出すとあっという間に読み終わった。
またいつか読むかもしれない。

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2024年04月27日

Posted by ブクログ

短文ながらもその人が見えてくる暮らし。
みんな上手く纏めていて読みやすい。
そしてたくさんの人の話を知ることができるのもこの本の醍醐味。
作家、写真家、詩人、音楽家、俳優、ライターなど。

なかでも印象深いのは、「サイトウには日常がないねぇ」の斎藤明美さんの話。
洗濯物が乾くかどうかなんてどうでもいい話のことだが、大女優である高峰秀子さんの日常を見て、日々のささやかな暮らしがいかに大切か、なぜ大切かを痛切に感じたということ。
これは、年齢を重ねるごとに感じることではないかなと思った。

「忘れないでおくこと」の中島京子さんは、コロナのことを書いてある。
確かにコロナ禍の数年、驚くほどに激変した町並み。マスクしていない人などいない日常。
コロナ禍を生きた自分たちは、忘れない出来事になるだろう。





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2024年01月13日

Posted by ブクログ

いろいろな人の日常の暮らしの中で記憶に残った出来事やある人から言われた心に残る忘れてはいけない言葉など。
渡辺和子さんの話が良かったです。

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2023年10月31日

Posted by ブクログ

好きな作家さんがいっぱいおられたので読みました。(1)に比べてテーマがはっきりしないのが残念でした。

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2023年04月23日

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