【感想・ネタバレ】ウクライナ侵攻までの3000日のレビュー

あらすじ

2022年2月24日に始まったウクライナ侵攻から、1年。
終わりが見えない戦争の真の原因とは?
ロシアの本心と、ウクライナの内情。
あの時、世界は戦いの兆候を見逃していたーー

ウクライナ東・南部は、ロシア系の住民が今も多く住む。2014年、ロシアはウクライナ南部のクリミア半島を武力で併合。しかし、それに対して欧米各国は強い態度で臨まなかった。ウクライナの内部から沸き起こる、ロシアへの強い郷愁。プーチン大統領が持つ、ロシアとウクライナはひとつという「物語」。そして、ゼレンスキー大統領登場までの国内の混乱。2022年の戦争へと至る道すじを説き起こす。

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Posted by ブクログ

発刊されてから既に3年弱経つので古本になるのかもしれないが、こうして見るとウクライナとロシア、お互い人と生活基盤・インフラなどを消耗させながらそのまま膠着状態が続いているような気がする。
ウクライナ戦争についてはそれなりに知っているような気がしていたが、認識を新たにするところが多く、いろいろ考えさせられる内容だった。

著者の大前さんは、毎日新聞の特派員として10年以上もモスクワに駐在した正にロシア通の方のようだ。その間2000年代後半から度々ウクライナを訪れ、2014年3月のクリミア併合から2022年2月の全面侵攻までを、特に2019年に行った精力的な取材を通じて線でつなぐ。
学者と違い奥深さは少ないとしても、ジャーナリストとしての現地の声の集約などには説得力がある。

認識を新たにしたこと
ウクライナの歴史、地域によって異なる文化・言語、1200万人もいるロシア人、欧州とロシアの地政学、東方正教会に属するロシア正教とウクライナ正教等の二面性が複雑に絡み合い、簡単な方程式では解けない問題である。
最終的には住民の安全と幸福を実現させる国家たるべきなのだが、新たに独立した国家にありがちな腐敗政治(オルガルヒ)や、経済的にもしっかりロシアに補完されていたことから、南部・東部を中心にロシアに帰属を願う人たちがいることも事実なのだ。住民を無差別に殺戮・蹂躙したロシアに正義はないはずなのに。

考えさせられたこと
ロシアは超軍事大国でプーチンは狡猾だ。決して気を許せる相手ではない。
プーチンに対し脇が甘かったのがかつての安倍首相だ。「ウラジミール、あなたと私は同じ未来を見ている」と、個人的な信頼関係を一方的に信じ北方領土帰属問題について、外務省に相談することなくハードルを下げてしまったが、全くの進展が見られなかった。しかもロシアがウクライナ東部でも影響を強めていた時期にだ。
今後のロシアとのつきあい方、更にもう一つのお隣にある中国との関係においても、決して間違ったメッセージを与えてはいけないだろう。

内容
・ロシアとウクライナの関係史:ウクライナ・ロシアは、そもそも同じ民族であったという歴史的背景。また近世ではソ連崩壊以降の政治・経済・社会の変化、両国間の緊張が高まった過程を歴史的視点から整理。
・ウクライナ危機の経過:2013〜2014年のユーロマイダン(親欧州派デモ)からクリミア併合、東部ドンバスでの紛争発生、そして2022年の全面侵攻に至るまでの主要な出来事を時系列的に記載。
・各国の外交・軍事対応:ロシア、ウクライナ、米欧諸国の政策決定、NATOの役割、制裁や軍事支援の影響について分析。ウクライナ独立にあたって国内にあった核兵器の廃棄と引き換えにウクライナの保全を約束した「ブタペスト覚書」(米英露)のロシアによる反故とトランプによるバックアップ廃止。
・内部事情と政治動向:ウクライナ国内の政治勢力、汚職問題、経済状況、市民の意識変化、ロシア国内のナショナリズムと権力構造について。
・戦場の現実と人道面:避難民、民間人被害、都市の破壊、日常生活への影響など、現地取材に根ざした人間的な視点。
・長期化の背景と見通し:停戦が困難な構造的要因(領土問題、民族感情、国際関係の硬直化)を考慮に入れた、短期的な解決の難しさ。

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2025年12月08日

Posted by ブクログ

もっと早く読んでおけばよかった…と思った本。
ロシアウクライナ戦争に関するニュースの見方がガラリと変わっていたと思う。
ウクライナが(少なくとも全面侵攻前まで)一枚岩ではなく、地域によってロシアに対する市民感情が全く異なっていたことは衝撃だった。
特にドネツクやルガンスクなど東方地域では、ロシア(親露武装勢力)との紛争が続いていたにもかかわらず、生活費を支給されているという理由でロシア支持の国民が多かった、という話は印象に残った。
ただ、結局彼らも開戦後にロシア非支持に鞍替えしていることを考えると、ウクライナ東部のように生活が不安定な地域では、国民は通常生活を維持することに必死で、開戦した時にようやく「政治的イデオロギー」的なものが芽生えるのかなと思った。

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2024年01月17日

Posted by ブクログ

凄くすごくよかった。
政治的な面はもちろん、
現地の人の声やモスクワ特派員が現地で覚えた違和感が、丁寧に描かれている。
2022年2月24日が、歴史に深く刻まれない普通の1日にすることはできたのでは。とはいえ、ロシアのウクライナ侵攻は、避けられなかったのでは。権力がますます嫌いになった。

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2023年03月10日

Posted by ブクログ

2023.04.05
ウクライナは内部にももともと問題を抱えており、ロシアとの不即不離の関係にありながら、問題は山積みであった。これがウクライナ侵攻につながるさまざまな要因だったことがよくわかる。

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2023年04月06日

Posted by ブクログ

2022年2月にロシアによる突然のウクライナへの侵攻ではじまり、現在も終わりの見えないロシア・ウクライナ戦争。しかし、戦争はすでに3000日前から始まっていた。それは2014年、ロシアがクリミア半島を強制併合したとき。クリミア半島を足がかりにロシアはウクライナ領土をじわじわと占拠していたのだ。事実上、両国は戦争状態に突入していた。

著者は2019年からクリミア地方を中心とした現地取材を重ね、隣国ロシアからのプレッシャーを受け続けるウクライナ国民の苦悩と分断をレポートする。

ソ連崩壊によりあれよあれよと独立してしまったウクライナは国家も国民も成熟することなく、プーチンのロシアやEU、アメリカなどに翻弄される。その結果、政治は常に不安定。政治経験がなく、自らのライブ公演を選挙活動にしてしまったコメディアン、ゼレンスキーを大統領に選んでしまうことも未成熟な国家ならでは。

長期戦になれば、ウクライナは内部崩壊するはずという信念でプーチンは戦争を続けているのかもしれない。

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2024年01月07日

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