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Posted by ブクログ
87分署シリーズのようなものをイタリアを舞台に描きたい作者と、87分署シリーズのような安定したシリーズを懐かしむ読者との融合、といった気配漂う読書時間が嬉しい、本シリーズ新作である。もっと速いペースで次々と読ませて頂けると有難いのだけれど4年目にして三作目というのは少し間が空き過ぎの印象。せっかく印象に残る個性的刑事たちの集まりなのに、今回のように二年も待たされるとさすがにせっかくの個性も忘れてしまうというもの。
さて本書では二件の事件が同時に起こり、それぞれの事件に二組の刑事コンビたちが振られるという、刑事ものの王道みたいなスタートなのだが、87分署を思わせるように刑事たちの個性を重視するシリーズなので、事件そのものよりも、群像小説特有の社会派人間ドラマといったところが真の読みどころなのかなと思わせる。個性とはそのためにあるもので、それぞれが活き活きと現実に近い人生の時を過ごさねばならないし、それを本シリーズはしっかり実現させているのだ。そう、元祖87分署シリーズのように。そして読者に彼らは巻を重ねる毎に愛されてゆかねばならないだろう。そしてそれは本書でも上手に良い方向を辿っているように思われる。
87分署でもニューヨークではなく架空の大都会アイソラを舞台にしているように、イタリアで蘇ったこの警察シリーズも架空の町の架空の分署を舞台としている。87分署との違いは、P分署が、他の警察署で問題になった刑事ばかりが集められたような掃きだめのような場所であるところにある。そして隣接する警察署はこのP分署が自壊してなくなることを端から予想していることだ。
毎作のようにこの分署が潰されないように、そんな原因を本署に与えないために、問題児とされた個性的な刑事たちが力を合わせて頑張るのである。言わばダメ男ダメ女たちのそれぞれの生き残りを賭けた立ち直りと復活を賭けたドラマとしての側面が大きいところが、正統派であった元ネタの87分署とは異なる部分である。その分だけそれぞれのキャラクターは、より問題や悩みを抱えており、その内なる部分の描写に費やされる作者の志向はかつての87分署とは似て非なるものと言っておきたい。
さて、本書ではアパートで発見された兄・妹二人の惨殺死体が主たる事件である。一方で父親からの性的暴行が疑われる少女の作文について学校より真偽を確認してほしいというサブ的事件の捜査も進行する。それぞれの捜査に振り分けられた刑事たち。彼らをサポートする署の捜査官たち。虎視眈々と彼らの失策を観察しようとする市警本部や、一作目から副次的に進んでゆく犯罪に手を染める謎の黒い神父。長いシリーズならではの大小の波を継続させながらシリーズは、徐々に加速を加えつつある。
本当を言えば、毎月一冊くらいずつ読みたいシリーズである。そこまで縮めろとは言わないけれど、是非、ガンガン出してくださいますよう頑張ってください、創元さん! ちなみに87分署シリーズには『熱波』があるので、『寒波』の邦題は大変良かったと思います。
Posted by ブクログ
2023.05.17
警察小説としてもちろん良い。そして、日本人との違いを感じるのは、家族、愛情、家庭といったイタリア人が大事に思っていることについての理解が深まるのが良い。登場人物の家庭観、愛について、家族についての考え方や行動が面白い。
Posted by ブクログ
今回も事件はふたつ。
同居する兄妹が殺された事件と、父親による中学生の娘への性的虐待。
大きいほうの事件(殺人事件)はロヤコーノとディ・ナルドが担当することに不満を募らすロマーノとアラゴーナ。
しぶしぶ虐待の事実を探りに中学校へ向かう。
ああ、また子どもが被害者なのか…と思ったけれど、それに負けないくらい後味の悪い事件だった。
しかも事件として公にしなかったので、「活躍したい」欲は満たされなかったと思うけど、アラゴーナについては、ますます隠れていた才能が顔を出してきて、面白い。
作品としてはちょっとワンパターンになってきたな。
ふたつの事件が並行して起こり、二班に分かれて捜査。
犯人または犯人と思しき人物のモノローグが差し挟まれる。
そしてP分署の署長を含めた7人の捜査班のプライベートな問題についての記述。
群像劇だから、それぞれのエピソードは必要だと思うけど、毎回毎回均等に描写しなくてもいいと思う。
結構な分量になるのよ、事件外の話が。
5日で犯人を逮捕って結構な早業だと思うけど、モノローグやら個人的エピソードが入ってくるせいで、どうも冗漫に感じてしまう。
で、結局ロヤコーノの恋は進展しないし、ディ・ナルドと父親の関係も一向に変わらない。
一番問題なのはロマーノで、なぜ妻が家を出ていったのかを理解していない。
理解できないから反省もしない。
世間の無理解で自分が辛かったんだから、暴力ぐらい受け入れろって言ってるようなものなのに、それに気づいていない。
もしほかの人がそんな事を言おうものなら、激怒するくらいの正義漢なのに。
それぞれの問題を、少しずつ解決するように話を進めてほしいと思いつつ、副署長の体調(治療拒否している進行性の癌)については、どうしたらいいのか私にもわからない。
病気だと職場に知れたら退職させられるって、イタリアってそうなの?
あと、前作を読んだときにも思ったのだけど、イタリア寒すぎ。
ナポリで凍死者のイメージないわ。
昼過ぎにようやく零℃を超えるって、寒すぎやろ、11月に。
ネットで調べたけど、さすがに平均気温はそんなに低くはないらしい。
多分記録的な寒波がやってきた年、ってことなのだろうけど。
Posted by ブクログ
今回、同時並行するのは
兄妹が惨殺された殺人事件と
児童虐待疑惑の解明事件のふたつ。
めっちゃ頑張って事件に対応してるのに
いつまでたってもお偉方は
P分署を取り潰そうとネチネチ言ってくる。
確かにそれぞれ問題児ではあるけど
警官としての矜持だけは持ち合わせてる!
3冊目ともなると
そんな彼らの人生が幸せな方へ
向かって欲しいと思うようになるわ。
読者だけが知っている
隣のサイコパスも心配ですが( ̄▽ ̄)
もちろん謎解きの方の要素もしっかり。
刑務所帰りの父親とか、DV疑惑の妹の彼氏とか
何人かいる容疑者の
どの動機も決定打に欠ける中…
とはいえやっぱり引き金になった
出来事はあったわけで。
もう少し意思の疎通があれば済んだのに。
また1年に1冊でもいいので続きが読みたい。