【感想・ネタバレ】発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体 【自分を責めてしまいがちな方へ】のレビュー

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Posted by ブクログ

【before】この本を読む前の私は、これらのことを知りませんでした。
・発達障害とはつまり「発達障害=発達デコボコ+適応障害」環境や社会への適応の妨げが発症を促進、トラウマも同様に自己喪失や社会からの離断が適応を阻害する。
・この状態が続くと成長後の心身の健康も阻害される。依存症その他の有病率が上がり、社会にうまく適応できず、孤独や生きづらさを強いられる。
・トラウマを負うと、体験を想起した際に脳の言語野が機能低下することが判明しており、当時の状況や体験についてイメージが湧いてもうまく言語化できない。
・トラウマでは、処理されない記憶が意識下に残って扁桃体が過活動を起こす。内面では「常に危機が自分の隣にある状態」なので、身体は常に反応を続ける。
・定型発達の人は「世界が安全で信頼できる」と思えるが、自分だけ警戒し「不意に成果が踏みにじられる、予期せぬ力で捻じ曲げられる」と構えてしまう。
・自信の無さは存在=being レベルで、行動=doing の成果では埋め合わせられない。仕事や学業で成功、ポジティブな考え方をしても、自信の無さは変わらない。
・発達障害=時間軸では発達が遅れるということ。同年代とは一方的に差が開く。
・生体の仕組みは、基本的には短期のストレス対処を想定している。
・低緊張度の持続的ストレスが、生体システムの前提、ゲームのルールを変える。
・不規則にストレスを受け予測できない場合の方が、コルチゾール値が上がる。
・発散(棒を与えてかじる)ことができたラットのストレスは軽く済んだ。
・フラストレーションを発散できなかった影響は、長時間続く。
・海馬や扁桃体が記憶に「危機の重み」をつけるため「この世は安全ではない」という認識が強化される。
・他者との関係と自己の確立は密接につながり常に相関しているのに、他者を信頼し安心して関わることができない。欠けがあるため、正常化は容易ではない。
・対人関係がうまく作れないことは、社会的な自己実現の妨げともなる。
・真に安心安全な環境とは社会にこそ存在している。
・認知行動療法の種類→認知の修正・感情コントロール・対人関係スキルを学ぶ。
・トラウマとは、他者(加害者)の不全感を負わされることである。
・「自己の再建」と「他者とのつながりの回復」とは相関している。
・自己とは「自分以外の人々との関係において形成され、維持されている自己」

【無限の世界観】
健康な世界は有限の循環で成り立つ。1日活動すれば疲れ、食事・入浴・睡眠をして回復しまた活動する。物事には飽きるが、別に新たな興味も湧く。記憶も時間とともに薄れる。他者の役割と自分の責任との区別を認識し「過剰に他者に関わる必要はない」と考えることができる。

一方トラウマの世界はその反対。「世界は更新の無い無限」との認識が特徴。例えば無限に義理堅く、責任感や罪悪感を持つ。バランスが曖昧、貸し借りを冷たく感じ、無限の施しが良いような価値観。無限の愛、永遠の友情、絶対といったものに安心感と憧れがあったりする。

【健康な世界のルールがよく分からない】
過剰な努力や飽きないやる気の継続は良い、と考えている。脳や身体が過覚醒・過活動を起こし、休息と活動のリズムが自然に取れない。世界を無限と捉えるせいで悲観的な考え、感情や症状も永続するように感じる。生きづらさや悩みが解決不能な壁のように思う。記憶も処理されず、ずっと同じ鮮度で繰り返される。人間関係の更新も無く、嫌な状態が永続するように感じる。トラウマ・不全感を原因として起きる依存症・睡眠障害も、まさに飽きることのない無限の世界。

【ポリヴェーガル理論が示す不適応のメカニズム】
・(本来)人間は高度な神経系から順にストレスに対応していく。ストレスを受けると、まずは対話や交渉など社会交流で対処する(腹側迷走神経複合体=VVC )
・VVC が十分に発達するには、安定した VVC を持つ大人による養育が必要。
・VVC が成熟できないまま育つと、ストレス状況で「社会交流」という望ましい反応で対処できず、戦うか逃げるか(交感神経、四足哺乳類)凍りついて固まる(背側迷走神経複合体、爬虫類)の反応しか取ることができなくなる。

【気づき】この本を読んで、これらについて気づきを得ました。
・人間は社会的な動物であり、自己も社会的な関係からもたらされるが、トラウマはその関係を切断してしまう。
・幼い子供にとって、家族や学校は世界そのもの。
・頭で考えてなんとか対人関係を良くしようとする。しかし逆に緊張を強める結果となり悪循環が生じる。定型発達の人は(無意識の)自動運転で人と付き合えるのに、トラウマや発達障害を負った人はマニュアル運転を強いられるようなもの。
・理想主義的なのは、現実の生きづらさをバイパスしたい願望の現れ。
・「言葉に対して誠実でありたい」「形式よりも心が大事」という価値観。社交辞令を「誠実ではない」と感じ形式を軽視しがちなため、礼儀作法やマナー等の社会的プロトコル(儀礼)に適応できない。暗黙のルールがうまく掴めない。
・社会的なニュアンス把握には安心・安全感や心身の余裕が必要な上、暗黙のルール体得には、近親者との良好な関係構築が必要だが、不足&上手くいかない。
・過去の出来事を捉え直し、意味や役立つ部分を抽出することができない。
・経験が積み上がる感覚、自分史が自分主体で積み重なり成熟する感じがない。
・非常事態モードから平常時モードへの切り替えは自然には起こらないので、ずっと適応がうまくいかない。平常時モードを学習しきれない。
・物事は二者択一のような並列関係ではなく、積み重なり共存する階層構造。
・記憶とは、単に出来事や情報の集まりではない。世界観そのものである。
・外在化=悩みが解決する際に問題が自分から離れ、客体化・相対化する現象。
・傷つけられたことがあったなら、自分に起こった出来事を認めてそれに名前をつける。他者との共有によって「自分は人類の一員である」という感覚を取り戻せる。

【TODO】今後、これらを実行していこうと思います。
・トラウマとはストレス障害+ハラスメント、という補助線を引いて理解する。
・その場でさっとストレスを処理して平常な状態に戻る。あれこれと想像を働かせたりしない(シマウマのストレス処理のあり方は理想的)
・予測可能性・コントロール可能性・感情の表出・ソーシャルサポートはストレスの変数として重要なことを覚えておく。
・トラウマが、自己の喪失と対人関係の障害を引き起こすことを認識する。

1.環境を調整する。
2.身体(自律神経など)を回復する。
3.自己(主体・セルフ)を再建する。
4.記憶(経験)を処理する。
5.他者、社会とのつながりを回復する。

・まず現在の外的環境の調整から始める。なぜ、過去の記憶処理や内的環境の改善ではなく「外的な環境調整」から始めるのか。それは、トラウマはしばしば現在の外的環境においても継続、もしくは再生産されているから。
・「直接的に関与可能な現在の環境」を変えることが、コントロール可能性・自己効力感を取り戻すことにつながる。
・環境調整というと表面的には外的な条件を変えることだが、その本質は「自分を大切にすること」
・朝にトリプトファンを含むタンパク質をしっかり摂り、日中に日光を浴びることで夜に睡眠物質であるメラトニンを増大させる。
・昼寝をする場合は20分以内とし、基本的に15時以降はしない。
・夜は電気を暗くして、少しずつ寝る体制を作る。
・脳を鍛えるには、運動しかない(ニューロンの新生は3~4倍)
・睡眠(7時間)や栄養を整えて、週に3回45分以上運動をする。
・発達性トラウマは、自己の形成途上で生じるため「自己の喪失」が必ずといってよいほど伴う。そのため「自己の再建」を踏まえた形でのトラウマケアを行う。
・習い事や料理の手順のように、基礎の上に応用を積み上げる。
・まずはしっかりと自己中心的になる。「自分を大切にする」を前提に、自分の都合で「自分の欲は何?何がしたくて何が欲しい?」とシンプルに考える。
・十分にグラウンディング(地に足がついて、心身が安定)の状態になる。
・トラウマの世界は「時間も資源も無限」という感覚だが、少しずつ無限から有限、循環・更新する時間への移行を試みる。
・ルーティンを作り、毎日それを行う。
・1日が習慣を通して循環していく感覚を取り戻す。
・習慣形成自体を目的として取り組む。次いで、長期の時間軸を取り戻す。
・習慣形成を続けると、時間の主権が自分に戻ってくることを実感できる。習慣形成とは、行動を通したある種のマインドフルネスである。
・自分にストレスを与えた他者の価値観の影響が残り「恥ずかしい、惨め、失敗」の感覚を拭えずに苦しんでいるので、自分の価値観で過去の出来事を捉え直す。
・自分史をまとめる。
・物理的な事実・現実を積み上げていく。
・冤罪を晴らすかのようにとことん自分を擁護する(本来、してもらいたかったはずのとても愛着的なアプローチである)
・他者とのつながりの回復は従来、最後の段階で取り組むように考えられていたが、条件が整えば最初から取り組むことができるし、むしろその方が良い。
・人間関係は、機能として捉える(妻・母・同僚)。
・人との関係には、仕事や雑事などの媒介が必要であることを理解する。
・「プロのコメディアンのような巧みなコミュニケーションが当たり前」の印象は幻想で、媒介(仕事や雑事)がなければ上手く付き合えなくて当たり前、と知る。
・結局どんなに仲が良くても、1人の人からは多くを得ることはできない。完全な理解もない。「それは誰にとってもそうなのだ」と知ることも関係の回復に役立つ。
・緩やかな関係をたくさん持つ中で、声の多様性を回復させる。特に家族や親(や加害者)の言葉は多声性の中で相対化していく必要がある。
・誰かと一緒に運動する(仲間と運動したラットはニューロンの新生も活発)
・人とも関わりは、無意識レベルでは安心と回復の源であることを理解する。
・自分の家族に対して安全基地であることを心がける。その際はやりすぎず、完璧を目指さない、成果を期待しない。
・何かをすることは少し脇に置いて、ただ居ることを心がける。
・問題は早期に開示させ、早期に介入する(病は市に出せ)
・当事者研究を試みる。悩み・困りごとについて当事者自身として「研究」という視点を持ち、その構造やパターンを分析・書き出してみる手法を取る。
・「自己の不全感をかりそめに満たすために他者を支配しようとすること」が、ハラスメントの構造であることを理解する。

【気持ちを代弁・言語化してくれた、と思った表現】
・自分はおかしいという劣等感、それがバレて嫌われる不安に常に付きまとわれる。
・自己の無価値感や、対人関係や社会参加の困難さを感じていたこと。
・自分だけ社会の暗黙のルールを知らないままゲームに参加しているような感覚。世の中は安心できる場所ではなかった。
・世の中の実際をうまく捉えられず、現実世界で成果を出すことを困難に感じた。
・言外の意図を捉えることが苦手で、言葉をそのまま受け取ってしまう。
・理想主義的な心性も影響し、バカ正直に対応してしまう。
・自分は他者を傷つけてしまうという加害強迫を持っていた。
・子供にもいつも厳しい態度で接している。

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2024年01月30日

Posted by ブクログ

トラウマというと、「大きな事故や生死の境をさまようような体験をしたことが原因」のようなイメージが多いですが、それほど深刻なものでなくてもトラウマになりうるし、そういった場合はこういうものが原因として考えられますよ……ということを提示してくれている本です。

「生物は短時間のストレスには耐えうるように出来ていても、長時間の小さなストレスには適応できない」ということを初めて知りました。自分たちの社会がストレス社会と呼ばれていることを、改めて考え直さなくてはいけないですね。

他にも、矛盾するメッセージを浴び続けて育つことによって、認知が歪んでしまうこと(「あなたのためよ」と言われながら育つと、相手がしてくれることが正しく自分の嫌な気持ちは間違いなのだと信じてしまうなど)や、感情を封じられてしまうこと(怒っていると、「ほらすぐ怒る。お父さんにそっくりね」といわれるなど)については、結構多くの家庭にあるあるなのではないかと感じました。

トラウマってもっと身近にあるもので、グラデーションなんだよ、ということを教えてくれる一冊です。

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2024年03月08日

Posted by ブクログ

愛着障害やHSPかもって思って、類の本を読んでもなんだかしっくりこなかった。子どもの頃は確かに息苦しい家庭環境だったけど、虐待とまでいかないし、、世間的に見たら良い家族だし、、

と思って手に取った本。
自身の生きにくさを代弁してくれるかのような内容だった。

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2024年02月24日

Posted by ブクログ

幼少期に抱えた小さなトラウマにより、発達障害的兆候や抑うつなどいわゆる生きづらさを呈しているという提言。具体例も多く、自分もそれが原因かというところもある。緊張し過ぎなど、みんなより〇〇とネガティブに感じるところにはこれがあるかもしれない。個人的には栄養と精神のところで、栄養が偏ると鬱になる。バランスを取ると改善するのところが興味ある。

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2023年11月27日

Posted by ブクログ

自分には合わなかった。HSPと同じく自分をカテゴライズしてなんとなく安心する道具として解説してるようにしか思えなかった。もう少し学術的かフラットな視点からこの概念を観察する必要があると感じた。

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2024年03月08日

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