あらすじ
訪日外国人99%減――。観光業はコロナ禍で最大の被害を受けた産業と言っても過言ではないだろう。休廃業に迫られた企業や、仕事を続けられなくなった個人が続出した。インバウンド受け入れの本格的な再開が見込まれる中、「爆買い」などで沸いた頃とは一変した状況でどう稼ぐのか。人気エリアの偏在や観光公害など、コロナ以前からの問題は解決されるのか。DXやSDGsといったビジネスの潮流が与える影響とは。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
水際対策緩和で個人の外国人観光客が来るようになり、全国旅行支援で、旅行に出かける日本人も出てきた。
コロナ前と同じ意識では、観光で食べていけない。
そんな中で朝日新聞の記者が各地の観光地を巡って課題を浮き彫りにしたのが今回の本だ。
コロナ禍でダメージを受けた業界として飲食店がよく話題になった。
たしかにそうだが、他の業界も影響を受けた。「全国通訳案内士」もそうだ。
コロナ禍で外国人観光客が来れなくなってから、生活が苦しくなり、アルバイトで食いつないでいる事例を取り上げている。
日本通訳案内士団体連合によると、コロナ禍で影響を受けた若手を中心に2〜3割の通訳案内士が廃業や転業せざるを得なくなったとみられる。
全国通訳案内士の資格を持つ人は、2020年4月の登録者数で約2万7000人いる。
コロナ前の観光のあり方で、東京や京都などの特定に場所に観光客が集まり地方へ向かわない、京都市内では地元の人が混雑で様々な問題引き起こすオーバーツーリズムなどが指摘された。
そんな状況を踏まえ、著者は「観光立国2.0」を唱えている。
具体的には、地域観光のテコ入れ、観光公害への対策、そしてデジタル化やSDGs(持続可能な開発目標)への貢献など、「新たな潮流」への対応を掲げている。
「いいものを安く」が長年、日本人にとっていいものだと思われている。
しかし、安さを追求してきた結果、無理が生じている。観光ではないが、回転寿司業界は安さを売りにして来たしわ寄せが見られる。牛同業界では「ワンオペ」が問題になった。
モノやサービスを適切な価格で提供しないと旅行客には良くても提供する側の体力が低下して倒産して、それが観光業にとどまらない日本の国力低下につながる可能性がある。
円安によって自国の為替レートが有利になりホクホク顔で買い物をしたりサービスを利用している外国人観光客が話題になっている。
買い物だけでなく、そこでなければ体験できない事をいかにアピールできるか。アップデートした観光立国への道はこれから始まる。