【感想・ネタバレ】精神科医の本音のレビュー

あらすじ

現役精神科医が語る「精神科」の裏側
通院する前に患者が知っておくべき現実を、つまびらかに明かす!

精神疾患を持つ患者数は400万人を超え、急増の一途をたどっている。
精神科・心療内科に通うことは、もはや誰にとっても珍しいことではなくなった。
しかし、「心の病」を扱う精神医療には、ブラックボックスの部分があまりにも多い……。

「なぜ精神科医は5分しか診てくれないのか?」
「なぜ病院を替えたら診断が変わるのか?」
「なぜ処方される薬が変わっていくのか?」
「なぜ通い続けても一向に良くならないのか?」

患者が医者に対して不信感を抱きやすい疑問を徹底解説。
診察中にするべき質問、「名医とヤブ医者」の見分け方から、「薬やカウンセリング」の効果、医療制度の問題まで。
登録者数20万人を超えるYouTubeチャンネル「精神科医がこころの病気を解説するCh」の運営者であり、
開業医である著者が、患者に役立つ情報を真摯に伝える。現役精神科医が語る「精神科」の裏側、
通院する前に患者が知っておくべき現実を、つまびらかに明かす!

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Posted by ブクログ

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益田裕介
早稲田メンタルクリニック院長。精神保健指定医、精神科専門医・指導医。防衛医大卒。防衛医大病院、自衛隊中央病院、自衛隊仙台病院(復職センター兼務)、埼玉県立精神神経医療センター、薫風会山田病院などを経て、早稲田メンタルクリニックを開業。一般向けに、わかりやすく、精神科診療について解説するYouTubeチャンネル「精神科医がこころの病気を解説するCh」を運営し、登録者数は20万人を超える。

精神科医の本音 (SB新書)
by 益田 裕介
診察中しか患者さんを診られないという難しさ 「双極性障害(躁うつ病)」の場合、躁状態が軽微なのでわからないということもあります。診察の際に、「いつもよりよくしゃべるな?」という程度の印象を受けたとします。「これまでは緊張していたのかな? うつがよくなり、これが本人の素の姿なのだろうか」と医師は考えてしまいがちです。  診察室での短い時間しかお会いしていないので、普段の様子はわからず、日常の中で見かけるおしゃべりな人程度であれば、それぐらいの元気さならと、見逃してしまうことがあります。ところが、その患者さんは普段はものすごく無口な人で、診察のときはその人なりの躁状態だった(世間的には普通の人レベルのおしゃべりであっても)、ということがありえるのです。

医師が行わない治療に「民間療法」と呼ばれるものがあります。この民間療法については、本当に害悪だと思っています。効果不十分であるのみならず、患者さんの科学リテラシーの向上を妨げ、正しく物事を判断させない作用があるからです。  悪質な民間療法者は、キレイごとばかりを言いながら、高額な医療費を請求します。しかも、最後まで面倒を見ることはなく、途中で患者さんを投げ出します。結果として、精神科医が診察するまでに病状はかなり悪化し、しかもお金はスッカラカンになるまで搾り取られているということが多いのです。

民間療法だけでなく、自称カウンセラーのような人も含めて、そうした人たちは自分の権威や正当性を高めるために、やたらと医師の悪口や医療的な噓を語ります。「病院に行ってはいけない、薬漬けにされる」「精神科医は過剰な診断を出して、儲けようとしている」などと、自分を信頼してもらうためにあることないこと吹き込むわけです。  そんなふうに〝洗脳〟されている患者さんを治療するのは、かなり骨の折れる作業になります。不信・誤解を解くところから始めなければならないからです。

「うつは心の風邪。だから気軽に精神科に行きましょう」という啓発キャンペーンによって、「何も問題がない人に診断を出して、患者を増やしている」という批判があります。  しかし、少なくとも私の感覚としては、そんなことはありません。何も問題がないのに、精神科に来る人はいません。みなさん、いろいろな問題を抱えている人ばかりです。  逆に「もっと早く来ればよかったのに」という患者さんばかりです。  たとえば、退職してから来院する患者さんがいます。退職前に来て、傷病手当金を受けながら休職してしっかり休めば、復職もありえます。それが、会社を辞めてしまったあとだと、そうしたアドバイスもできません。

 アメリカでは100人に5人程度の割合で、虐待を受けているというデータがあります。日本ではそこまでの数字は上がっていませんが、実数を把握できていないだけで、虐待の被害を受けている人は相当数いると思いますし、年々増えてもいます。虐待による「複雑性PTSD」と言うと、かなり特殊なケースだと思われるかもしれませんが、私の臨床経験上だけでも、何人も思い浮かべられます。  若い患者さんの中には、社会経験の不足が原因で、明らかに上司からのパワハラなのに気づけなかったり、詐欺まがいの行為をされているのに無警戒だったりすることもあります。  総じて、「自分の見ている世界が常識だ」と頑なに思っていて、その考えから抜け出せない人が患者さんには多くいます。

よく「真面目な人ほど、うつになりやすい」と言われますが、これは視点の切り替えが苦手ということです。愚直すぎて疑うことができない、なんとかしなきゃと思い込みすぎてしまう……そうした思考傾向を「べき思考」と呼んでいます。  たとえば、「何があっても与えられた仕事はまっとうするべき」という考えは、責任感があるという意味では悪いわけではありませんが、疲れきって滞ってしまっているなら、「べき」というところで思考を止めても問題は解決しません。「一部を外注できないか」「誰か同僚に頼れないか」など、客観的・多角的に物事を考え、対策を打つ必要があります。

つまり、いわゆる社会的な弱者の方が、精神疾患になりやすいと言えます。精神科医療には、そうした側面があります。  社会的な面で、最も治療困難な状況に置かれている例を挙げるとするなら、「カルト宗教信者の二世」かもしれません。  世間とは隔絶された場所で、教義をもとにした教育を受けて育ちます。教義の世界の中で暮らしている間はよいのですが、それとは別の世界に出るときが大変です。今まで信じてきた教義に背くということは、親の存在を否定することにもなりますし、今までのコミュニティと縁を切ることにもなります。

アイデンティティの拠りどころがなくなり、「自分はいったい何者か?」がわからなくなる危険性があります。  また、一般社会に飛び出したとしても、「それまで身につけた常識」が世間と大きく異なるため、コミュニケーションがズレてしまいます。バッティングフォームが大きく崩れている選手を、大人になってから矯正するのは大変ですよね。それと同じです。

これまでの話とは逆に、「こういう人がよくなりやすい」という特徴も紹介します。  親など周囲の人との関係が良好な人です。親子関係がよいと、非常にスムーズに治療が進むことが多いのです。反対に、孤立している人だと治療が難渋しがちです。

働きながら通院する患者さんは多くいます。仕事の関係上、「残業せずに仕事を早めに切り上げ、受診する」「体調を理由にたびたび休みを取り、病院に行く」というのが難しく、そのせいで満足な診療が受けられないまま病状を悪化させたり、再発させたりする患者さんも多くいました。  2015年 12 月に、大手広告代理店の女性新入社員が、長時間労働を苦に自殺した事件がありました。この事件を記憶している方は多いでしょうが、その当時の世間の風潮を思い返すと、「そんな残業時間はありえない」「なんてひどい企業なんだ」という声ばかりではなく、「それくらいの働き方をしている人は、他にも大勢いるだろう」「その程度で自殺してしまうのか」という空気もありました。

「残業したあとに職場の人と飲みに行って、そのあとに職場に戻って、もうひと仕事してから帰る」といった働き方はごく普通で、その当時に適応障害となった患者さんには、残業時間が100時間を軽く超えている人も珍しくありませんでした。 「残業時間はどれくらいですか?」 「100時間くらいだと思います」 「100時間超えは過労死のラインですよ! あなたが落ち込んでいるのは、あなたのせいではなくて、明らかに働きすぎのせいですよ」

私がYouTubeを始めたきっかけも、若い患者さんの声がきっかけでした。当時、私はほとんどSNSに触れることさえなかったのですが、何人かの患者さんから「先生はTwitterはやってないんですか」「説明を動画に撮って、YouTubeで配信してくれたら、何度も見返せて助かりますよ」と勧められ、背中を押されるように始めました。早稲田という場所だったからこそ、そのようなリクエストが出たのだと思います。 (新宿区は精神科の激戦区でもあり、広告などを利用せねばならず、その費用を抑えたいという意味もありました。なので二重の意味で、早稲田という土地柄が作用したわけです)

精神疾患は、文化的、社会的背景が大きく影響しますので、クリニックを構える土地柄によって、診る患者さんの症状にも傾向が出てきます。  たとえば同じ新宿区でも、キャバクラ嬢やホストの人が多い歌舞伎町と、学生やビジネスパーソンが多い早稲田とでは、傾向がまったく異なります。富裕層が多く住む港区と、貧困家庭が多い区では、虐待などの問題の頻度が大きく異なるでしょう。

私のクリニックには、仕事のストレスで適応障害になるビジネスパーソンや、発達障害を疑って来院する方が多いです。  発達障害の患者さんによくあるのは、大学入学、あるいは就職という環境の変化を機に、発達障害に気づいたというケースです。  また、結婚相手や交際相手に発達障害があり、コミュニケーションをとるのが難しいことから、発達障害のある本人ではなく、その相手がうつになる、いわゆる「カサンドラ症候群」になって、来院するというケースも増えています。

恋愛関係でも、交際経験がない人は、男女ともに増えています。合コンなども減り、アプリで恋人を見つけることが一般的になっていますが、積極的でないと、一見するとモテそうな女性でも「彼氏はいたことがありません」と言う人も珍しくありません。  また、若者で顕著なのは、お酒を飲む人が減ったことです。「お酒はドラッグの1つ」というような認識が強くなっているようです。昭和のサラリーマンがやっていたようなことをする若者は、本当に減りました。

勤務医時代と開業してからを比較すると、同じ仕事をしていても、開業してからの方が社会のことがよくわかるようになりました。アンテナが鋭くなった気がします。経営者となったことで、経済の流れや産業構造も理解できるようになりましたし、マネジメントをすることで、部下を持つ管理職の気持ちも実感できるようになりました。  それらは日々の診療にも活きています。たとえば、ベンチャー企業に勤め、職場の人間関係に悩んでいる患者さんがいた際に、かつてなら「パワハラ」のような問題だけを疑いましたが、今では「会社ができて2~3年だと、忙しすぎて余裕がない職場なんじゃないか?」「上下関係の問題というよりも、この患者さんにはベンチャー企業が合っていなかったのではないか?」といった視点も持つことができるようになりました。

医師は国家資格を得たあとに、自ら専門を選ぶことになります。かつては、「外科や内科はお前には無理だから、精神科医にでもなれば」と先輩から言われたり、他の科でうまくいかなかった医師が「精神科だったら、なんとかやれるだろう」と考えて就くということもあったようです。外科医などは当直業務が多いのですが、精神科では当直が少ないので、「夜、起こされたくないから」という理由で選ぶ人もいたくらいです。

 ただそれはかつての話で、今では精神科を選ぶ人は、もっと自発的で、社会全般に広く興味・関心のある人が多い気がします。自分自身や家族や知り合いに精神疾患があって、それが理由で精神科を選ぶ人もいます。  女性の精神科医も増えています。女性の場合はライフプランとして妊娠や出産も考えるので、激務すぎる科は続けにくいという実情があります。たとえば、外科医になると、手術のあとに病棟管理もしなければいけないし、一人前になるまでの研修期間もいろいろとハードです。精神科の場合は外来診療だけでよかったり、入院患者でも急変することは少なかったりするなど、あまり緊急対応は求められませんし、執刀の数をこなして成長していくというより、産休育休中であっても本を読んで勉強して成長できる部分も多いため、選ばれやすいのだと思います。

「人の性格や気質は変わらない」とよく言われますが、臨床の実感として、人は変わります。患者さんがよくなっていく過程に携われるのは、やりがいがあります。精神科の患者さんは、ある種の弱さや、未熟さを抱えていることもあるのですが、症状がよくなってくるにつれて、元の人格をはるかに超えて成長していきます。これは、どんな患者さんもそうです。病気がよくなることの中には、人格的な成熟があると思います。 「ありがとうございます」「すみませんでした」といった言葉を、最初はなかなか言えなかったり、言っていても自信がない感じだったりする方が、よくなるころには爽やかに言うようになります。

歴史的には、精神疾患の患者は、ずっと差別されてきました。精神科病院では、犯罪者が収容所に拘束されるような扱いを受けていました。フランスの精神科医であるフィリップ・ピネル(1745~1826) が、精神科病院で拘束されていた患者を鎖から解放したことが、精神科医療の近代化の起源とされています。  日本では「宇都宮病院事件」という、看護職員らの暴行によって入院患者2名が死亡するという痛ましい事件が起き、世間に衝撃を与えたことがあります。これは1983年のことで、今からわずか 40 年ほど前の出来事です。

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2024年08月05日

購入済み

興味深く読めました

著者の動画の復習に、短時間で読めました。時間短縮によかったです。

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2022年08月14日

Posted by ブクログ

いつもYouTubeでお世話になっている益田先生の著書。
タイトルに相応しい“本音”で書かれた内容が盛り沢山。
それでいて常に患者さんの為に骨身を削って何かプラスになるようにしたいという益田先生の気持ちが伝わってきた。

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2022年08月14日

Posted by ブクログ

精神科の再診がなぜ短いのかが制度的にわかった。医者側の立場を知ることで薬物治療に対する偏見も変わった。

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2025年12月07日

Posted by ブクログ

精神科医のYouTuberがその治療について医者の立場から綴った一冊。

カウンセラーとしてもとても勉強になった。

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2025年10月17日

Posted by ブクログ

精神科の現状はよく分かった。
精神科医は雑談ばかりで診療をしてるのかわからないが、一応ガイドラインに則り対応しているようだ。

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2025年09月07日

Posted by ブクログ

益田先生はYouTubeを通して知り、本を読みました。動画でもよく話されていましたが、コロナ禍以降から、メタバースやAIの到来で診療の仕方も変わってくるかも知れない。オンライン治療で病院との距離感が縮まればいいと言うのは患者である私も説に願っています。また、医師ならではの医局のことや専門医のことを知れたのが良かったです。

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2025年03月08日

Posted by ブクログ

先生のYouTubeがわかりやすく、
精神疾患について興味があったので手に取りました。
会社や周囲で耳にする適応障害という病名ですが、
自分のイメージだけでその人や病気を判断しないで
精神疾患を正しく知って、正しく接していくことが大事なのではないかと思いました。

他にも日本の医療制度の仕組みや課題も書かれていて、興味深かったです。

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2024年06月06日

Posted by ブクログ

精神科医YouTuber益田氏の新刊。
益田ドクターはクリニックの院長をしながらYouTubeで精神医療や時には哲学についてなど幅広く動画をあげておられます。
防衛医大出身で、その時のエピソードなども興味深く、マスラーになりつつあります笑
本書は動画で話しておられる内容をコンパクトにまとめたもの。
何故五分診療なのか、など現在の保険制度とあわせてわかりやすく述べられています。
精神医療について知りたい方だけでなく、これから通院しようと考えている方にもおすすめ。

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2023年10月08日

Posted by ブクログ

現在精神科の受診中で本を読む余力があり、さらに治療に不満を感じ受け身の治療から抜け出したいと感じている方に個人的にオススメです。

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2023年08月08日

Posted by ブクログ

的確なテーマが網羅され、的確な解説がなされている。

あえてだろうが、エピソードは少なく、精神科受診の肝が自然に体得できる。

youtubeから本書を手に取るに至ったが、著作も読みやすくすばらしかった。

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2023年03月05日

Posted by ブクログ

現役の精神科医でYouTubeでも発信をされている益田裕介先生による著書。
YouTubeでもとてもわかりやすく噛み砕いて説明をされているが、本を読んでもやはりわかりやすく読みやすい印象だった。
精神科についてまず知っておいた方が良いことがまとまっているので、これから精神科受診を考えている人にもオススメ。

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2024年01月30日

Posted by ブクログ

精神科医療の裏側が赤裸々に語られておりYouTube活動があるから著者はここまで大胆な事を書けるのではないかと感じ面白かった。
精神科の診療時間の短さには不満を感じていたが膨大な患者数を考えれば仕方ないのだろう。
医療に頼り過ぎず自分で予防できる努力をすることが大切。
自助努力の必要性を感じた。

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2023年04月23日

Posted by ブクログ

仕事でメンタル不調になり、精神科に行こうと思ったときに読んだ。精神科のことについて知ることができた。先生のYouTubeも拝見し、こころの病について学ぶことができた。「心」という一見あいまいなものに対して、「科学的な知見」に基づいて治療をするというのは難しいのだろう感じた。

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2023年01月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

だから診療時間が短いのか~と納得。
クスリを多く処方しすぎると儲けが減る仕組みになっている。よくできているなぁと。
医者との距離感について、これでいいのかと迷うことがあったが、これんでいいんだと勉強になった。

いろいろな人がいるなぁとも。

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2022年11月02日

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