あらすじ
なぜ歴史は動き、何が命運を分けたのか?
公家の時代から武家の時代へ、平家から源氏へ。転換期のダイナミズムを描いた『平家物語』。平家はなぜ栄華をきわめ、没落していったのか。戦乱のなか、人々は何を思い、どう行動したのか。『平家物語』を知り尽くした能楽師が、難解で長大な物語を「大きな出来事」に絞って解説、この1冊で一気に理解する。時代が動くとき、世の価値観はどのように変化したのか。その変化のありようを私たちが生かせる道とはどんなものなのか。「あわい」「驕り」「運」「命」「浄土」……変化のきっかけとなった鍵語をもとに、歴史が私たちに伝えようとしたことを探る。『太平記』という「その後」から『平家物語』をとらえ直す「補講」を収録。
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Posted by ブクログ
「100分で名著」では素晴らしい朗読も披露なさった能楽師・安田登さんの平家物語解説です。ストーリー解説はもちろんですが、子が親を思う儒教的な”孝”の考え方はこの時期以前にはなかったことや、弱肉強食の平家時代から統治のシステム化を果たした源氏(武士政権)時代への移行について、当時人気の往生マニュアル「往生要集」と登場人物たちの死の関係など、いろいろと参考になることがありました。能作品とのつながりも紹介されており面白かったです。
Posted by ブクログ
新しい何かを学ぼうとしても、いきなり専門書に手を出すのはハードルが高い。そもそも、需要と供給の原則通り、専門書は価格も高い。
そんな時、NHKの100分de名著シリーズは、非常にありがたい。当代切っての学者や評者の解説を、まあ普通の版元なら無理だよねというリーズナブルなお値段で、気軽に手に入れることができるのだ。
本書は、摩訶不思議な能楽師、安田登先生が軍記物の名著『平家物語』を解説しておられる。「祇園精舎の鐘の声」で始まる名調子を大半の人は口ずさむことができるだろうし、重盛の「孝ならんと欲すれば忠ならず」という台詞をご存知の方も多いだろう。信長が好んだことで知られる幸若舞や能の『敦盛』は「平家」が元ネタである。その他にも、あれは「平家」だったのかというお話はきっと少なくない。とはいえ、「平家」なんて、せいぜい高校の古典の時間に細切れに読んだきりである。これは学び直しがいがある。
本書は最初から安田節が全開フルスロットルで突き進む。ご自身も「あわい」の住人である安田先生は、『平家物語』は貴族から武士社会へと転換する「あわいの時代」を描いていると喝破する。そして、テクノロジーによる急速な革新が進む現代もまた「あわいの時代」であり、今こそ「平家」を読むべき物語なのだと語られる。実におもしろい。