あらすじ
男女同権はすくなくとも社会通念上は、あたりまえの前提となって久しい。
だが、日本の各地には、女性の立ち入りを禁止する聖域や、特定の神事には女性を参加させないという慣行が現在も存在している。
そして、大相撲の土俵についての「禁制」は、たびたび物議をかもしてきた。
「女人禁制」とはいかなる背景から生まれ、変化する政治や社会の中で受け継がれてきたか。
なぜ、時に激しい批判にさらされながらも、人々はそれを守ろうとするのか。
女性たちは禁制をどのように受容し、あるいは抵抗し、つくり変えてきたのか。
「差別」として批判をする人々と、「伝統」として守ろうとする人々。
この対立構図は、当事者達にとって調停不可能であり、今後も継続することが予想される。
本書では、文化人類学的分析を柱にしつつ、宗教学、民俗学、歴史学、国文学、社会学など様々の分野の成果を取り込んで、
暗黙の前提を覆し、賛成か反対か、伝統か差別かという二分法を乗り越える視点を提示するものである。
第一人者が、真の解決に不可欠な知見を、この一冊でわかりやすく示す!
【本書の内容】
学術文庫版の刊行に際して
女人禁制の現在―プロローグ
女人禁制への視角
大峯山の現状
山と女性
女人結界
仏教と女性
穢れ再考
あとがき
二十年の後に―学術文庫版あとがき
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
個人的に洞川とはご縁があり、何度が訪れたことがあったので女人結界に興味があり、本書を購入しました。
大峯山で女人結界撤廃の運動や女人結界を伝統として守ろうとする動きがあることを、寡聞にして知らなかったので勉強になりました。
文献等からの引用を多用することで客観的に女人禁制に関する経過や歴史的背景が説明されていて読みやすかったです。
女人禁制を伝統として守っていると主張していても、さらに歴史を遡っていけば男女平等だったり女性が優位だったりするものもあり、興味深かったです。
また、伝統を守る主張の根拠として「女人禁制の伝統があるから」では女性蔑視として批判を受けてしまうために「文化財保護のため」などの現代的なルールを持ち出すというのは、本音を隠して現代社会に受け入れられやすい建前を根拠にしているようで面白いと思いました。守るべき伝統と言えばそれ以上批判しづらいですよね。
私は生物学的に女性なので、仏教における女性蔑視や血の穢れの考え方は以前から少し嫌悪感がありました。本書を読んでもやっぱり納得できない部分はありますが、そのような考え方を持つ側にも伝統を守るなどの主張や色々な確執があることを知ることができて勉強になりました。