【感想・ネタバレ】破綻の戦略:私のアフガニスタン現代史のレビュー

あらすじ

元大使が明かす、知られざるアフガン裏面史

本書は、大学卒業後、ダリー語修得のためカーブル大学に留学して以降、一貫してアフガニスタンに関わり続けてきた元大使によるメモワール的なドキュメントである。現地にどっぷり浸かり、体験し、長年にわたって蓄積した知見をもとに書き下ろした。
物語は、カーブル大学在学中の1978年に起きた軍事クーデターから始まる。直後のソ連軍による侵攻から、ムジャーヒディーン同士の内戦、ターリバーンとアル・カーイダの出現、9.11同時多発テロ事件を経てターリバーン政権崩壊へと続く一連の流れのなかで中心的に語られるのは、「アフガン人の生き方を守るため」の戦いに殉じた3人の人物―ターリバーンの創設者ムッラー・ウマル、北部同盟の司令官アフマッドシャー・マスード、義賊とも英雄とも評されるマジッド・カルカニー―だ。本人の肉声を聞き、関係者と議論を重ねた著者の視点や評価は、主要メディアから伝わる情報とはときに大きく異なる。
ジャーナリストによるルポや研究者による分析とは一線を画す、異色のノンフィクション。
宮家邦彦氏(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)推薦

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Posted by ブクログ

【幸運にも私は紛争が始まった一九七八年の軍事クーデターを間近に見、二〇〇一年のカルザイ政権樹立にも関わることができた。そのため、ここに描いた平和を勝ち取るために奮闘した人びとを知ることとなった。アフガン紛争はすでに四十数年の長きにわたっている。残された者たちによる平和への戦いは今も続いている。未だその戦略は成功していない】(文中より引用)

カブールに留学して以降、一貫してアフガニスタンに携わり続けた著者が、自身の経験と合わせてアフガニスタンの現代史を振り返った作品。著者は、現地のダリー語を身につけ、アフガニスタン大使としても尽力した髙橋博史。

職業柄、割と(元)外交官が著した作品というのはよく読む方だと思うのですが、その中でも随一と言って良いほどに内容の濃い一冊でした。アフガニスタンの社会システムが戦争や内戦を経てどのように引き裂かれてしまったか、そしてその影響がどういった形で現れてくるかを考える上で、非常に有益な読書体験をさせてもらいました。

これは名著☆5つ

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2022年01月06日

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