【感想・ネタバレ】グ印亜細亜商會のレビュー

あらすじ

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グレゴリ青山待望の書き下ろし作品。デビュー作『旅のグ』からはや7年。『グ印観光公司』(講談社)、『旅で会いましょう。』『ふたたびの旅。』(共にメディアファクトリー)に続く著者5冊目の単行本です。

「さて、校了はすみましたでしょうか? 本当におつかれさまでした。いち時は書いても描いても終わらんのとちゃうか? と心配するほどでしたが、ようやく今日この日が来ることができて、世の中のすべてがまばゆく見えるようです。本ができあがる日が、すこぶる楽しみです。きっと100万部ぐらい売れることでしょう。」
──校了日、グレゴリから届いたファクスであります。

グレゴリが予言するように100万部売れたなら、日本のどこかの山奥に亜細亜商會御殿を建てとうございます。御殿の中には怪老窟へとつづく道があって、ジャズが流れるダンスホールがあるやもしれません。

踊る女たちの髪を見たなら、おやまあ!?
女たちがせっせと口元に運ぶアレは何でしょう?
賄いする女が唄う♪きゃーかるはぁえ~くちゅくちゅほおーたーへえ~、はどこの国の歌ですか?
部屋の隅には、外のざわめきをものともせずに本を読み耽る少女もおります。あれは誰?

「グレゴリ青山というフィルターで、この世を見とうございます」と執筆依頼したところ、何だか怪しくも愉快な、「丸ごとグレゴリ趣味本」ができました。訳のわからない解説と不信感を抱いた貴方、『グ印亜細亜商會』で謎解きをお楽しみくださいませ。

担当編集者 小川京子

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Posted by ブクログ

同じ貧乏バックパッカーでも旅する理由、テーマは違うわけで。グレゴリさんは音楽、映画、ポスターと芸術方面がテーマ。同じ東南アジアを旅するのでも視点が違うとこうも見えるものが違うんだなど。

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2025年06月29日

Posted by ブクログ

グレゴリさんの本はほぼ読んでると思うけど、これは「字が多いから」と未読だった(本好きとは思えぬ理由だわ-)。読んでみたらばこれが大正解。

著者のアジア指向は、「失われた日本」への郷愁も色濃くあるんだなあ。考えてみれば当然のことかもしれないが、「妄想パスポートで行く日本映画」の章にはそれがはっきり出ている。今の日本では、時代の流れがあまりにもはやくて、数十年前には確かにあったものの影さえなかなか見つけられない。アジアの街角にはそうした気配がまだ残っている(いた)ということなんだろう。古い邦画を見て、自分たちはこの人たちと同じ日本人なのだろうか?と嘆息するグレちゃんの気持ちを私も共有する。

この本の白眉は「電信柱の画家の街」の章だ。美術館で見た一枚の絵に一目惚れしたグレゴリさんは、その陳澄波という画家の絵をもっと見たくなって台湾に赴く。本当に思いがけない偶然により、著者は画家の息子さんの家に招かれ、彼の描いた絵に囲まれながら、その生涯と悲劇的な最期の話を聞くことになるのだ。いつものとぼけたグレちゃんではなく、この画家と同じく、絵とそこに描かれた風景を心から愛する者としての姿が強い印象を残す。のっている絵は小さなモノクロだが、是非見てみたいものだと思った。

「風景画、裸婦画、人物画、その画集の、初めて見る陳澄波の絵は不思議な激しさとあたたかさに満ちていて、ことに、台湾を描いた風景画ときたら、どうしようもなく絵の中に入ってしまいたい衝動にかられるものばかりでした。特に〈調配船廠的風景〉という絵など、中央下の船に続く坂道を誰かの名前、そう、たとえば『陳澄波さあぁーん』などと叫びながら駈け降りてみたくなってしまいます」

著者が一目惚れした絵は、陳澄波の故郷である嘉義を描いたもので、1934年の作品。「グは陳澄波が描いた頃の嘉義は、自然と文明がいちばん折り合いが良かった時代ではなかったかと思うのです」とあって、ああ、本当にそうかもしれないと思う。陳澄波が好んで描いた電信柱は木製で、電線という”文明”を支えていた。高い建物はなくて遠くの山が見え、クーラーもテレビもなく、人々は公園に涼みに出かける。もう決して戻れることのない街が、絵の中に息づいている。

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2015年06月03日

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