【感想・ネタバレ】歴史修正主義とサブカルチャー 90年代保守言説のメディア文化のレビュー

あらすじ

メディアにヘイトスピーチやフェイク・ニュースがあふれ、「右傾化」が懸念される現代日本。「歴史修正主義(歴史否定論)」の言説に対する批判は、なぜそれを支持する人たちに届かないのか。

歴史修正主義を支持する人たちの「知の枠組み」を問うために、歴史を否定する言説の「内容」ではなく、「どこで・どのように語られたのか」という「形式」に着目する。現代の「原画」としての1990年代の保守言説を、アマチュアリズムと参加型文化の視点からあぶり出す。

「論破」の源流にある歴史ディベートと自己啓発書、読者を巻き込んだ保守論壇誌、「慰安婦」問題とマンガ、〈性奴隷〉と朝日新聞社バッシング――コンテンツと消費者の循環によって形成される歴史修正主義の文化と、それを支えるサブカルチャーやメディアの関係に斬り込む社会学の成果。

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酒井隆史さん(大阪府立大学)、推薦!

なぜ、かくも荒唐無稽、かくも反事実的、かくも不誠実にみえるのに、歴史修正主義は猛威をふるうのか? いま、事実とはなんなのか? 真理とはなんなのか?

真理や事実の意味変容と右傾化がどう関係しているのか?

「バカ」といって相手をおとしめれば状況は変わるという「反知性主義」批判を超えて、本書は、現代日本の右翼イデオロギーを知性の形式として分析するよう呼びかける。キーはサブカルチャーである。わたしたちは、本書によってはじめて、この現代を席巻する異様なイデオロギーの核心をつかみかけている。この本は、ついに現代によみがえった一級の「日本イデオロギー論」である。

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Posted by ブクログ

90年代のサブカルチャーにおける言説を通して、右翼サブカルチャーのメディアがほんとにユーザーフレンドリーだったんだなーと感心した。大衆の目線で、偉ぶらず賢ぶらず、地道に支持を獲得してきたんだなーと。
翻って左翼は何をしていたかというと、インテリたちは小難しい議論を展開し、高齢化した市民運動家たちはお経のように戦争反対戦争反対と唱え、少しずつ大衆の支持を失ってきたんだなーと思う。
左翼はこの本を読むことによって過去を反省し、現在を分析し、未来に活かさなければいけないと思う。しかし私の周りの左翼インテリは相変わらず大月書店のお花畑本ばかり読み、市民運動家は戦争反対戦争反対と唱えており、絶望は深まるばかり。

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2018年03月14日

Posted by ブクログ

歴史修正主義のメカニズムについて、90年代の日本のメディア状況から論じている。
歴史修正主義の構成要素はアマチュアリズムと市場原理である。事実より説得力による論破、雑誌においての読者参加形式の普及、などの複合的要因により、歴史修正主義が広まっていったことをコンバージェンス文化=消費が各プラットフォームを横断し、消費者も参加する状況、というキーワードでまとめている。
学術的で、しっかりとした方法論をとっている社会分析だが、題材的にも文書的にも非常に読みやすい。

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2019年02月06日

Posted by ブクログ

メディアに表れる保守言説を、「何が語られたか」ではなく「どこで/どのようにして語られたか」に注目して分析した書物。90年代に焦点をあて、雑誌による読者を巻き込む仕掛け、「ディベート」や漫画の使われ方、新聞報道分析とイメージの定着(「朝日の捏造報道」など)を図る手法などを通して、コンバージェンス文化(複数メディアの収斂、人々の参加、集合的な知の形成)が立ち上がる過程を描く。

「アマチュアリズム」と「参加」が、商品化したメディアとの相互作用により、特定の知が総合的に立ち上がる様を描いた、見事な現代メディア論。

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2018年11月23日

Posted by ブクログ

内容は,よくまとまっていてわかりやすかったが,もう少し砕けた表現で書いた方が,普通の読者には伝わるかなぁ,と.
あと,結局,解決策についてはなんとなくボカして逃げた感じが残念.
明確で具体的肯定的な草の根的運動の提言があっても良かったと思う.

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2018年05月22日

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